リンダ・ハワード「ふたりだけの荒野」☆☆☆
南北戦争が終わって少し経った頃のアメリカ西部。元南軍兵士マッケイは殺人事件の犯人としてお尋ね者になり、彼を追う賞金稼ぎを倒しながら4年間何とか生き延びてきた。
そんな彼を追うのは腕ききの賞金稼ぎトラハーン。トラハーンと対決したマッケイはトラハーンの足に傷を負わせたものの自身も撃たれ深い傷を負う。
何とかたどり着いた炭鉱の町で女医アニーの家に忍び込んだマッケイは、追っ手の目が届かない所で傷の手当てをしようと、アニーを誘拐して山中にある無人の小屋に向かう。
誰も来ない廃屋となった狭い山小屋で暮らすうちに惹かれ始める二人だったが・・・。
女医さんが主人公の西部劇というのも珍しいですが、当時は実際に存在自体が珍しかったようですね。
アニーは周囲の無理解を乗り越えて医師にはなったものの、女医に対する偏見もあって、患者を求めて開拓地にまで流れるしかなかった。
そんな彼女をムリヤリ連れ去ったマッケイは、当初は治療が済んだら彼女を解放するつもりでいたのに、そんな訳にはいかない状況に陥ってしまう。
また初めはマッケイに怯えたアニーですが、一緒に暮らすうちに冤罪で賞金首となったマッケイに同情し、さり気なくアニーを気遣うマッケイに強く惹かれていきます。
ストックホルム症候群とはちょっと違う感じなんでしょうね。
初めのうちのマッケイは主人公らしからぬ態度でとんでもない奴だと思いましたが、読んでいくうちにナイスガイに見えていきます。
一方、一人で気を張って頑張って生きてきたアニーは、今まで女身ひとつで寂しい日々をおくってきた事を自覚してマッケイとの愛を育むようになっていきます。
まぁリンダ・ハワードらしく上手く纏めていて、全体的には面白い作品だと思います。
ただアニーの治癒能力が特殊だったりする辺りは、この物語には少々突飛な感じで違和感を感じました。
この小説はリンダ・ハワードのウェスタン三部作の完結編になりますが、1作目の「レディ・ヴィクトリア」や2作目の「天使のせせらぎ」とはつながりのない物語です。