リンダ・ハワード「レディ・ヴィクトリア」☆☆☆
南北戦争は終わりを告げ、戦争で没落した南部の由緒正しい家系の娘ヴィクトリアは、妹と従姉妹を連れて、ニューメキシコの広大な牧場主マクレーンの元に嫁ぐこととなる。
食べるものにも困窮した家族を救うために仕方なく決めた結婚だったが、マクレーンは親子ほども歳が離れた品性の卑しい男だった。
マクレーンの部下で非情な目をしたジェイクに蔑みの目を向けられながらも、自分と家族のためにマクレーンと夜をともにするヴィクトリアだが、好色な夫マクレーンは高雅なヴィクトリアを前にすると不能になり、牧場内にいる売春婦の元に通うようになる。
金のためにマクレーンに嫁いだ気取った女とヴィクトリアを見ていたジェイクは、毅然とした態度のヴィクトリアが気にかかり、ヴィクトリアと接しているうちに彼女に強く惹かれ始める。
そして初めは冷ややかな目をしたジェイクを恐れていたヴィクトリアも、逞しく頼り甲斐のある男ジェイクに惹かれていく。
しかしジェイクには大きな目的があった。
マクレーンが所有するこの土地・家は、そもそもがジェイクの祖先が築き上げたものだった。
マクレーンはジェイクの両親を殺害した後にメキシコとアメリカの間で不安定な状態だったこの地を勝手に奪い取った憎き敵であり、ジェイクはマクレーンに復讐するとともに、自分のものを取り戻す計画を立てていた。
13歳の少年の頃に牧場の雇われ人だったマクレーンとその仲間に両親を殺され、弟と二人でからくも逃れたジェイクが、正体を隠してマクレーンに雇われ、その右腕となり、いよいよ復讐を果たそうとしていたちょうどその時に、マクレーンの元にヴィクトリアが嫁いで来ます。
まだ法の支配が曖昧な土地で、マクレーンを殺して牧場を取り戻そうとしていたジェイクの計画は、マクレーンに妻が出来たことで狂いはじめる。
誰もが恐れる自分に立ち向かう勇気のあるヴィクトリアに惹かれ、彼女も自分に気があることを知って、ジェイクはヴィクトリアを妻にすることを心に決めていますが、その事を知らないヴィクトリアにはジェイクの本当の気持ちが分かりません。
こういう男女のスレ違いが素直に描かれていました。
色々な意味で無法地帯での無法な物語という印象を受けますが、面白いロマンス小説でした。
リンダ・ハワードのウェスタン三部作の最初の作品で、少しだけ「風と共に去りぬ」のオマージュのような雰囲気を感じるのは管理人の気のせいでしょうか。
なお、ウェスタン三部作は「天使のせせらぎ」「ふたりだけの荒野」と続きますが、関連性がない作品ですので、どれから読んでも大丈夫です。