北村薫「玻璃の天」☆☆
第141回(平成21年/2009年上半期)の直木賞受賞作品です。
「街の灯」に続く、昭和初期の東京の上流階級の女学生花村英子と女性運転手別宮みつ子が謎解きする連作歴史ミステリィ「ベッキーさん」シリーズの第2作目の作品です。
第137回直木賞の候補作で、この時は受賞となりませんでしたが、続編の「鷺と雪」が第141回の直木賞を受賞しています。
「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の3編を収録。
前作「街の灯」がどことなくゆったりとした昭和初期の風俗を感じさせる作品だったのに対して、この作品では徐々に時代が風雲を告げていく雰囲気を感じさせています。
裕福で自由な家風の恵まれた家庭に育ち、聡明で明るく気性も真直ぐで凛とした英子ですが、作中には暗い時代を迎える予兆のような微妙な気配があって、作者が少しづつ変化していく社会を描く3部作を意識して書いているんだなという風に思いました。
戦前は暗い時代だったという印象がどうしても強いけど、実際には開戦が近づくまではそうでもなかったという話を聞きます。
この作品では戦争そのものはテーマにしていないけど、そういう時代の風を感じさせてくれる作品で、ミステリィの部分よりも時代小説の雰囲気が管理人は好きです。