北村薫「街の灯」☆☆

街の灯

昭和の初期を舞台にして、名門女学校に通う上流階級のお嬢さん花村英子と、彼女の運転手として雇われた当時としては極めて珍しい女性運転手の別宮みつ子が、英子の身近なところで発生する事件の謎を解決する連作ミステリィ「ベッキーさん」シリーズの第1作で、「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」の3編を収録しています。

聡明で好奇心が旺盛な女学生の花村英子と、彼女がベッキーさんと呼ぶ謎めいた女性別宮みつ子の会話や、昭和の裕福な上流家庭の雰囲気を感じさせる花村家の人々、華族や裕福な家庭の子女が通う女学校の友人たちなどが、戦争の足音がまだ遠い時代を背景にして描かれていて、何やら垢抜けた時代の香りを感じさせてくれます。

ミステリィとしては真剣な謎解きはあまりなく、ベッキーさんがヒントを出して、女学生の英子が謎を解いてしまう程度の内容ですが、この作品は謎解きミステリィと言うよりも、大正ロマンの流れを受けた昭和初期の、街の雰囲気がまだおっとりとしていた時代を味わう類の作品だと思います。

管理人はこういう感じの作品はけっこう好きですが、シリーズは先に進むほど開戦の影を感じさせるように変化していき、それも又うまいなぁと思います。


ベッキーさんシリーズ1作目 本書
ベッキーさんシリーズ2作目 玻璃の天
ベッキーさんシリーズ3作目 鷺と雪


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