江波戸哲夫「くたばれ成果主義!」☆☆
大手電機メーカー・コスモ電機に新しい成果主義メソッド「21世紀ヒューマン・ニューパラダイム」という人事評価制度が鳴り物入りで導入された。
当初は部長職以上を対象とするという話だったが、対象が課長職や一般職にまで拡がるうちに、このシステムの大きな弊害が目に見えて現れる。
「コスモ電機を良くする会」というネット掲示板でこのメソッドがボロクソに言われ、社会的にもシステムが問題視され始めた。
しかしコスモ電機は更に成果主義を推し進めようと、フレキシブル成果主義と言う名の新しい人事システムを導入しようとしていた。
社内で跋扈する社長派・会長派の派閥抗争と行き過ぎた成果主義が引き起こす様々な問題点、人事制度・評価制度とはどういうものが望ましいのか、というテーマを提起したビジネス小説でなかなか興味深い作品です。
ただ些か盛り上がりに欠けていて、最後は唐突に終わってしまったような感じが残念です。
成果をあげた人に手厚く報いると言う意味での成果主義に異論を唱えるのは難しいのですが、では成果とは何か、それを誰がどのように評価するのか、個人と言うよりもチームで働く事が多い日本人に個人を評価するシステムが合っているのか、短期業績だけの評価では長期的な実績に結びつかないのでは、などなど色々な問題が成果主義にはあります。
そもそも経営者からして厳密には成果主義で評価されていない現実があるのに、従業員だけを成果主義で評価するのは相当にムリがあるように思います。
今の日本企業で伸びていく会社は、硬直化した成果主義というよりも、もっと柔軟な人事評価制度を採用しているのではないかという気もしますが、どうなんでしょう。
昨今では一時ほど成果主義という言葉を耳にしませんが、むかしのような年功序列に戻ったとも聞かないので、人事制度としてはある程度定着しているのかもしれません。
誰でも納得できる公平な評価か・・・難しいだろうなぁ。