司馬遼太郎「新史太閤記」☆☆☆

新史太閤記

日本史上最も出世したとされる異能の英雄・豊臣秀吉の、誕生から太閤になるまでの波乱の生涯を司馬節で語った司馬遼太郎版の太閤記です。

秀吉は一般的なイメージとは違い、社会の最底辺からのし上がったわけではありませんが、それでも普通であれば有り得ない大出世を遂げる人物の物語は、読む人の心を捉えてワクワクさせてくれます。

そうした元々の素材が良い上に、司馬遼太郎の構成と文章が巧みで、秀吉の経験を一緒に体験しているような気持ち、一端の歴史通になったような気分にさせてくれます。

何度読んでも面白い歴史小説だと思います。


それにしても、秀吉の物語を読みながら感じるのは、織田信長という人物の凄みですね。

秀吉もスゴイですけど、何となく良識の範囲内というか、実際にこういう英雄がいたという事に大きな違和感は感じません。

しかしながら信長の場合は、この時代にこんな風に考えて、こんな風に行動する人物がいたとは信じがたく、ここまでの合理主義者は一種の狂人のように思えてきます。狂人であってカリスマ・・・スゴイ。

秀吉や家康がもし存在していなくても、誰かそれに変わる人物が登場して、日本の歴史はそれほど大きく変わらなかったように思いますけど、信長の場合は、彼がもし存在しなかったら、戦国時代以降の歴史は随分と違っていたような気がします。

勿論、誰が欠けても実際の歴史は変わっていったことでしょうけど、しかし何故あの時代にこれ程傑出した人物が多く排出されたのでしょうね。

司馬遼太郎の作品は、作品自体も勿論面白いけど、読みながら好き勝手に歴史について想像を巡らすのが楽しいですね。

 

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