手塚治虫「アリと巨人」☆☆☆

アリと巨人

父親は出征して戦死、母親は空襲で亡くして戦災孤児となった少年井上マサオ(マサヤン)は、同じような境遇の親友杉本麦男(ムギヤン)と戦後の混乱の中で生きていた。

両親を亡くしたマサヤンが心の拠り所にしていたのは、町外れにある樹齢500年のクスノキで、そのクスノキを父親と思えと言った父の言葉の通りにして成長した。

マサヤンとムギヤンは親友として助け合いながら生きてきたが、しかしムギヤンが怪我をしたことから、二人の生きる道は別れ、マサヤンは東京に出て新聞社の見習いとして働き、ムギヤンは地元静岡でギャングのボスの右腕として頭角を現していく。


真っ当な道を歩む正義感の強い青年と、犯罪に手を染めた権力者としてのし上がっていく青年。戦災孤児の親友の2つに別れた道を描いた手塚マンガの傑作です。

管理人は小学生の頃に近所の図書館でこの作品を読みました。

その頃に管理人が読んでいたマンガは、もっとシンプルな冒険モノやギャグ漫画が殆どで、この作品のように余韻が残る作品を殆ど読んでいなかったこともあって、とても印象深い作品として記憶に残っています。

手塚治虫らしいヒューマニズムに溢れた少年マンガで、1961年発表のマンガにも関わらず、今読み返してもあまり古さを感じないのは、流石に手塚大先生です。

巨人に踏み潰されるアリよりも、巨人になるというムギヤンの生き方と、一度は失明するような目に会いながらも、罪を憎んで人を憎まずというようなマサヤンの姿勢に、ラストシーンの父親代わりのクスノキの活躍とマサヤンを慕うはるみさんなど、今から思えば少年マンガとは思えない設定だったような気がします。

こういう作品があってこそ、今の日本のマンガの発展があったんだろうなぁと思うけど、でも知る人ぞ知る名作なんでしょうね。


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