マーク・アレン・スミス「尋問請負人」☆☆☆
主人公は非合法の尋問のプロ・ガイガー。今まで尋問の対象者から秘密を聞き出せなかったことがないというプロ中のプロ。
依頼人は機密を盗まれた民間企業、裏切り者を探す犯罪組織、それに政府機関など様々だが、ガイガーはいわゆる拷問で口を割らせると言うよりも、対象者の性格や家族、背景などを事前に調べあげて、綿密に計画を練って尋問にとりかかる。
自らを律して感情を表に出さないガイガーだが、実は彼は記憶を無くしていた。
十数年前にこの街にバスでやって来た以前の記憶がない。そしてガイガーは最近夢を見る。夢を見た後で凄まじい頭痛に襲われる。
ガイガーが密かに診察を受けている精神科医は、記憶の一部が戻りつつあるのではないかと考えている。
ただ一人の協力者、元新聞記者のハリーを通して仕事を請け負うガイガーにはいくつかルールがあった。
子供は尋問しないというのもその一つ。
しかし今度の仕事の依頼人は、緊急の案件だとして、逃亡した父親の代わりに囚えた少年を尋問するよう依頼してくる。
なかなか緊迫感のあるサスペンスでした。
主人公の造形がユニークで、管理人はこういうスタイルの小説を読んだ記憶がありません。
誘拐された対象者の少年を救うためにガイガーが動きだすのは、丁度自分の閉ざされていた記憶が徐々に戻りつつあることと関係しているらしい。
そうして戻りつつあるガイガーの記憶、少年の父親が持っているものを追う謎の組織、ガイガーの相棒ハリーとその妹で精神に障害を持つリリーがからみ合って物語が進行します。
何故ガイガーがこういう風になったのか、作品を読み終えた後も管理人にはその理由が良く分かりませんけど、ひょっとしたら続編があるのかも知れませんね。
悪役が悪人になりきっていないところなどにリアリティを感じて面白いサスペンスでした。