北村薫「八月の六日間」☆☆
40歳を前にして後輩の女子社員に誘われて始めた山歩きで、落ち込んでいた心を救われた文芸誌の副編集長をしている女性が、折に触れ一人で山登りをすることで癒され成長していく姿を描いた連作短編山岳小説(?)です。
女性の一人称で語られる物語は、かなりの部分が事前の持ち物の準備から、どの山にどういうルートで登り、そこでどういう人達と出会いどう感じたか、というような内容になっています。
山登りしながら色々と回想したり、日常の出来事について考えたりもしますが、小説と言っても旅行記のような趣きの作品です。
情景描写が美しく目に浮かび、読んでいて山に登りたくなるような作品ですが、まぁ現実に管理人の体力ではハイキング程度がやっとでしょうね。
小説を読んで、何となく自分で登山したような気分になれる気持ちのよい作品だと思います。
ただ主人公の女性が今ひとつ好きになれないのは何故なんだろう。
いつも通りの北村薫作品らしい、ある意味純粋で真っ直ぐに生きている女性が主人公ですけど、ただ少し真っ直ぐすぎてアクが強い性格で、彼女の近くにいると疲れてしまいそうです。
また全体的には主人公が成長していく連作短編になっていますが、各々の作品は基本は紀行文のような感じで、好きな人はとても楽しめるのでしょうが、管理人は時折退屈に感じました。
作中で語られる文学談義も、最近はシンプルなエンターティメント小説しか読めない管理人には興味が湧きません。
つまらないかと言えばそんな事もないのですけど、夢中になって読むかと言えばそれ程でもないという作品でした。