北村薫「秋の花」☆☆☆
女子大生と円紫師匠シリーズの第3作目で初めての長編になります。
女子大生の「私」の周りで流れる季節感と、ゆったりとした時間。
学生である「私」の未来はまだハッキリとは見えていないけれども、「私」の歩む道は真直ぐに開けている。
しかし「私」の出身校の後輩は、文化祭の前日に校舎の屋上から謎の転落死をとげた。
そして彼女の親友だった一人の少女がとる不可解な行動。
小学生の頃から「私」の軌跡を追い続けてきた二人の少女の過酷な運命に会い、「私」は一人の少女から奪われた未来を想い、もう一人の少女の深い悩みを気遣う。
これから花開く季節、人生の春を迎えている少女達の、明るいだけではない過酷な現実を描きつつ、円紫師匠の暖かい視線に救われる、北村薫らしい情緒豊かで非常に美しい小説です。