白石一郎「海狼伝」☆☆☆

海狼伝

対馬の海賊松浦党の末裔となる青年・人見笛太郎は、朝鮮で活躍する海賊の頭領「将軍」の元に向かい手下に加わるが、瀬戸内海を拠点とする村上水軍に捕まり村上水軍の能島小金吾に預けられ、小金吾たちとともに明との貿易に乗り出すことになる。

骨太の戦国末期の海の男達を描いて第97回(昭和62年度上半期)直木賞を受賞した海洋冒険小説で、主人公の笛太郎の成長と活躍を生き生きと爽やかに描いた傑作です。

登場する海の男たち・海賊たちの潔い生き様には心が洗われるような気持ちになります。

海賊というと何となくロマンがあるけど、小説で海賊が主人公の本を読んだ記憶というのはあまりない。

管理人がパッと思い浮かぶのは、ティム・パワーズの「幻影の航海」くらいでしょうか。

管理人は「海狼伝」を読みながら、むかし観た三船敏郎主演の映画「大海賊」を何度か思い出しました。

オデッセイ、シンドバットの昔から、海賊・大航海・未知の世界への旅立ちというのは大いなるロマンを感じさせるものですよね。

この作品の時代は、日本人が唯一海洋民族らしさを発揮していた時代ですが、そういう時代背景の中で、海の申し子の笛太郎が世界を見つめるまなざしと品の良い恋は、続編「海王伝」を読みたいと強く思わせてくれる。

気持ちが高揚するとても楽しい作品です。

 

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