江波戸哲夫「起業の砦」☆☆☆

起業の砦

業績悪化した大手不動産会社のリストラ担当役を務め終わった後で、自分だけ残るわけにはいかないと周囲の反対を押し切って退職しハローワーク通いとなった49歳の父親と、IT企業に就職はしたものの馬鹿な上司とやりがいのない仕事に耐えられず、会社を辞めて友人と二人でWEBサイト制作会社を設立した24歳の息子。

親子の会話も少なく、お互いに理解し得ない二人が、それぞれ違った苦労をかかえながら新しい道を切り開いていく姿を描いた企業小説です。

調子の良い上役におだてられてリストラを推進して、嫌な役目を果たした後で自ら退職し、もう不動産業界には戻らないと誓って職探しをするものの、現実は厳しく全く職が見つからない父親の姿には身につまされるものが有ります。

やっぱり威勢よく辞めても家族の協力や理解がないと挫けるのが現実だと思いますけど、この小説の主人公はともかくタフで行動力もある人。

その彼が柔軟な考え方と行動力で自分の道を切り開いて行く姿だけでも小説になると思いますけど、そこに優秀なプログラマーの息子や飄々とした性格で理解ある奥さんの姿を重ねた所が秀悦です。

これって上手く行き過ぎじゃないのとは思いますけど、非常にポジティブなところが管理人は好きです。

面白いビジネス小説でした。


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