ゲイル・キャリガー「英国パラソル奇譚シリーズ」☆☆
吸血鬼や人狼、ゴーストなどの不死の異界族が人類と共存して暮らす架空の19世紀ヴィクトリア朝の時代を舞台にしたファンタジィ・シリーズで、「アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う」「アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う」「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」「アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る」の全5作になります。
主人公のアレクシア・タラボッティは27歳になる上流階級の未婚女性で、生まれながらにして他の人とは少し違う能力を持っていた。
アレクシアの能力とは、異界族が彼女に触れた瞬間に接触した異界族の能力を奪い取り人間に戻してしまうという力で、だから吸血鬼は彼女の血を吸うことが出来ず、人狼は触れた途端に人間に戻り、人間の体をなくしたゴーストは滅びてしまう。
頭が良くて好奇心が旺盛で行動的なアレクシアだが、再婚した母親や異父妹たちはファッションや流行に興味が無いアレクシアの容姿をあげつらい、アレクシアは身分の高い男性との縁組や流行を追うことにしか興味がない家族に嫌気が差している。
そんなアレクシアの事が気になっているのは、人狼団のアルファ(長)で異界管理局を管轄している人狼のマコン卿。
マコン卿はアレクシアが巻き起こす騒動に、副官のライオール教授らとともに巻き込まれていく。
異界族に反感を抱く集団や、常に陰謀をたくらむ吸血鬼の一族、奇抜な発明やマコン卿と人狼団の秘密、アレクシアの能力の秘密などを交えて、ヒストリカル・ロマンス風異世界冒険ファンタジィの世界が繰り広げられています。
吸血鬼や人狼が跋扈するヴィクトリア朝イギリスを舞台にしているせいか、どことなく格調高いゴシック風の雰囲気があって、元気で明るい個性的な美女アレクシア女史を始めとして登場人物たちも魅力的です。
満月の夜になると自分でも制御できない凶悪な狼に変身してしまうマコン卿と、アレクシア女史とのロマンスもなかなかユニークで、二人の結婚騒動や家庭生活も楽しめるユーモラスなファンタジィです。