マイケル・シェイボン「ユダヤ警官同盟」☆

ユダヤ警官同盟

イスラエルが建国されず、迫害されたユダヤ人の多くがアラスカ奥地のアメリカの自治区のようなシトカ特別区で暮らすパラレルワールドが舞台のSFミステリィです。

シトカ特別区は当初からのアメリカとの約束で、ユダヤ人を受け入れてから60年後にはアメリカ合衆国に戻すとされ、その返還期限があと2ヵ月後に迫っている。

そんな情勢の中で、シトカ警察殺人課のランツマン警部が借りている古びたホテルの一室で、麻薬中毒の男の射殺体が発見された。

今後もシトカに住み続けられるユダヤ人の数は決まっているため、誰もがこれからの身の振り方を考えていて、警察も捜査を真剣に行う気はない。

そうした中で捜査を担当したランツマンは、殺害された男の正体を探り出した事から大きな陰謀に巻き込まれていく。


ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞というアメリカのSF関係の大きな賞を独占受賞した話題作です。

物語の設定がパラレルワールドで、超能力らしきものの影がちらついてはいますが、全体的には影のある中年のバツイチ警察官を主人公にしたハードボイルド風味の警察ミステリィです。

ユダヤ人が歓迎されない複雑な社会に生まれ育った主人公は、幼馴染であるとともに全てを分かち合って生きてきた妻と別れて、酒と孤独を友にして生きてきました。

しかしシトカでの最後の事件が起こると同時に、上昇志向の強い元妻が彼の上司として着任してきて、混乱の中で事件の捜査を進めていきます。

そうした状況の中で、ランツマンの家庭環境や親友の相棒警察官の事などが語られていく様子が、エンターティメントというよりも純文学っぽくて、いろいろな文学賞を受賞した作品らしい感じです。

前半は特にサスペンス特有の緊張感もなく淡々と物語が進む上に、何となく話が分かりづらくて少し疲れますが、後半になると展開が早くなります。

管理人は最後まで読んでもすっきりサッパリしませんでしたが、重厚な作品と言う印象は受けました。

 

このページの先頭へ