バーバラ・フリーシー「その愛に守られて」☆☆
シングル・マザーに育てられた12歳の少年ダニエルは、まだ見ぬ父親ルークに会いたくなり、ルークの豪邸に行くもののルークの妻に門前払いを受ける。
その帰り道、バスを降りたダニエルは濃霧に包まれた道でひき逃げに会い、意識不明の重症で寝たきりの状態になった。
半狂乱になった母ジェニーの元を訪れて来たのは、自分に息子がいた事を知らなかったルークだったが・・・。
1997年のRITA賞受賞のラブ・ロマンスですけど、ロマンス小説と言うよりも様々な理由で悩みを抱き続けてきた家族の再生の話という印象です。
両親の期待を一身に受けて医学の道を志す青年ルークが、夏の休暇を過ごしている時に出会い、ひと夏の恋に戯れたのは18歳の少女ジェニー。
裕福な家庭のお坊ちゃまルークと貧しい家庭に育った天真爛漫なジェニーは、いつかは別れる日が来ると知りながらも愛し合っていたが、ジェニーが妊娠した事を知ったルークは、500ドルを渡して中絶するように伝えるとジェニーを捨て自分の生活に戻っていった。(何だかロマンス小説のヒーローっぽくない態度ですね。)
愛する人に捨てられ中絶も考えたジェニーだったが、悩みながらも一人で息子を産み、それから13年間シングルマザーとして苦労してダニエルを育ててきた。
優しかった母は既に亡くなり、信仰に傾倒する威圧的な父親はジェニーを許さず、几帳面で仕切り屋の姉はジェニーとそりが合わず、一時はアメフトのスター選手だった兄は大怪我で選手生命を断たれて以来酒浸りの日々をおくっている中で、ダニエルに深い愛を注ぎ、彼だけが生きがいとなったジェニー。
一方でルークは両親の期待通り研究医の道に進み、彼をサポートする理性的な妻を娶り、父親の巨大な会社を継いで順風満帆の人生をおくっていたが、子供が欲しくない妻は彼に無断で避妊手術を受け、夫婦の間には心が通わず、自分の生き方に疑問を抱き始めている。
そんな時に知った息子の存在と、息子が事故にあって意識不明の重体という事実、更にルークの前に生死の境目にいるはずのダニエルが現れ、語りかけてくる。
なかなか単純なロマンス小説に収まらない、微妙に宗教的な雰囲気を感じさせる作品でした。
いきなり焼けぼっくいに火がつくようなルークとジェニーや、おしまいの方ではみんな善人になる登場人物など、個人的には物語に入りきれない感じでしたが、13年の歳月で変わってしまった人たちの過去の過ちを正す物語なのかなと思いました。
原題が「Daniel's Gift」ですし、守護霊に導かれて目には見えないけど、両親に意思を伝えるダニエルの姿は一種のクリスマス・ファンタジィなのでしょう。