雫井脩介「犯人に告ぐ」☆☆☆

犯人に告ぐ

抜け目ない商売をすることで財を成した男の孫が誘拐された。

被害者と犯人との身代金交渉が終わった後で被害届を受けた神奈川県警は、受け渡し場所に指定された東京・新宿を管轄する警視庁と功を競いながら、県警本部管理官・巻島を中心とした捜査体制を急遽敷く。

しかし功を焦る県警上層部がモタモタする中、警察は犯人を取り逃がし、誘拐された少年は遺体で発見された。

警察の過失を認めるなとの厳命を受けて記者会見に挑んだ巻島は、マスコミの激しい追求にキレてしまい、事件の責任を一身に負わされて地方の警察署に左遷される。

それから6年後、川崎で発生した4件の連続幼児誘拐殺人事件の解決の目処が立たない中で、新たに神奈川県警本部長に就任した曽根は、捜査責任者をTV番組に出演させて事件の概要を視聴者に明かす事で目撃情報を集め、また犯人自身に呼びかけて局面を打開する「劇場型捜査」を思いつき、その担当者として自分自身が6年前に左遷した巻島を捜査本部に呼ぶ。


これは実に面白い警察小説でした。

ノン・キャリアの悲哀というか、捜査の責任を全て負わされて左遷させられた警察官巻島。

その彼に全ての責任を負わせた刑事部長・曽根は、キャリアとして陽の当たる場所を異動しながら神奈川県警に本部長として戻ってくる。

6年前は上司の命令に唯々諾々と従った巻島だったが、幼い少年を救えなかった事による心の傷を抱えながらも左遷された先で実績をあげて、今は反骨心のある捜査官に変身していた。

卑劣な犯人をあぶり出すためにマスコミを利用する巻島と、視聴率競争に明け暮れるTV業界、引退した元名刑事はコメンテーターとして不用意な発言を繰り返す。

そして本部長・曽根の甥に当たる巻島の直接の上司のキャリア警察官植草は、ニュースキャスターとなった学生時代の恋人の歓心を買うために、捜査情報を流し始める。

読み出したら止まらない緊迫した作品で、更にどこか罪を憎んで人を憎まずのような雰囲気が感じられるサスペンス小説です。

県警の中央にカムバックした巻島が、周囲の反感など物ともせずに自分の信じる道を突き進んでいく姿が実に格好良いですね。

スッキリした読後感で人にお薦めできる警察小説の傑作です。

 

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