池井戸潤「下町ロケット ヤタガラス」☆☆☆

下町ロケット ヤタガラス

佃製作所が新しいビジネスとして開発に着手していた農耕機のトランスミッション用バルブは、納入予定先ギアゴースト社長・伊丹の裏切りにより日の目を見ることはなかった。

しかしいつかは自社の力になると、社長の佃航平は農機具用のトランスミッション開発を続けていた。

そんな航平の前にロケット開発で協力関係にあった日本有数の重工業メーカー帝国重工の財前が現れ、帝国重工が開発予定の準天頂衛星ヤタガラスの測位情報を利用した無人農業ロボットのエンジンとトランスミッションを佃製作所が納入してくれないかと打診してくる。

佃製作所の技術力を高く評価している財前は、無人ロボットの制御プログラムを研究する北海道農業大学教授の野木博文が佃航平の友人ということもあって、帝国重工との提携に否定的な野木を航平が説得してくれることも期待していた。

衰退する日本の農業の未来のために一緒にやろうという航平の気持ちに野木も応え、帝国重工と北海道農業大学、そして佃製作所による無人農業ロボットの開発がスタートする。

しかし財前の上司で次期社長との呼び声も高い帝国重工役員の的場俊一は、財前の企画を知るとそのプロジェクトの総責任者の地位について財前から功績を奪い、更に技術を内製化するとして佃製作所をプロジェクトから外す。

一方で佃製作所と因縁のあるギアゴースト、ダイダロスなどの企業連合もまた、無人農業ロボットの販売を計画していた。


人気ビジネス小説シリーズ「下町ロケット」の第4作目で、「下町ロケット ゴースト」の続編になります。

佃製作所が前作で袂を分かったギアゴーストやライバル企業のダイダロスが作る無人農業ロボットと、帝国重工が自社で作るロボットの開発競争や、帝国重工内の権力闘争、高齢化し疲弊する農業の現場での問題、帝国重工次期社長を目指す非情な野心家・的場と、的場に敵意を抱く男たちが放つ矢。

この物語は今までになく複雑な様相を見せて、面白い作品です。

策略や裏切りや傲慢な態度を示す敵役に対して、最終的には真面目に自分のすべきことをする佃航平たちが勝利するという物語は、相変わらず溜飲が下がります。

現実もこのようになると良いのですけど、まぁなかなか難しいところですね。


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