池井戸潤「下町ロケット ゴースト」☆☆☆
東京・大田区に本社がある中小企業「佃製作所」は、日本有数の重工業メーカー帝国重工に納入しているロケットエンジン用バルブシステムなどの高付加価値の製品開発により経営危機を乗り越え、技術力を売りにして現在では業績も安定していた。
しかし主力販売先のひとつである農機具メーカー・ヤマタニから、採用を予定していた新型エンジンについて再検討したいとの通告を受ける。
時を同じくして、日本の宇宙産業を牽引する帝国重工の業績悪化と、それに伴う経営陣の交代、ロケット・ビジネスからの撤退かあるいは縮小という状況で、ロケット用バルブシステムの納入にも暗雲が立ち込めて来た。
ヤマタニからの発注を前提とした生産ラインまで準備していた佃製作所にとって、これは経営上の大きな痛手となるが、社長の佃航平はこの件を契機に農耕機のトランスミッション用バルブの開発に乗り出す事を決断する。
ヤマタニにトランスミッションを納入している自社工場を持たないファブレス企業ギアゴーストに新しいバルブを納入すべく、ベンチャー企業であるギアゴーストと接触した佃航平だったが、ギアゴーストもまた経営の危機に直面しようとしていた。
直木賞を受賞した人気ビジネス小説「下町ロケット」シリーズの第3作目になります。
今回は経理を担当する殿村が、田舎で農業をしている父親が倒れたことで佃製作所から離れるということはありますけど、前2作ほどの経営危機に佃製作所が陥ることはなく、どちらかといえばギアゴーストの物語になっています。
特許をめぐる話は興味深い展開をみせますが、ただ物語は次作に続くような感じで、何となく中途半端な印象も受けました。
もちろん、この作品もとても面白かったですけどね。