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スーザン・エリザベス・フィリップス 「あなたがいたから」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「あなたがいたから」☆☆☆

あなたがいたから

アメフト・チームの関係者を主人公にしたロマンス小説シリーズ「シカゴ・スターズ」シリーズの3作目で、1998年のRITA賞(Best Contemporary Single Title)を受賞した作品です。


主人公のジェーン・ダーリントンはIQ180の天才少女として生まれ、14歳で大学に入学し、20歳で博士号を取得して、34歳の現在は世界的な物理学者として名高い女性だが、今は悲嘆にくれていた。

恋人と別れ一人で過ごす寂しい誕生日。

身勝手な恋人には未練ないけど、このまま孤独な一生を過ごすのかと思うと涙が止まらない。

そんなジェーンのところに現れたのは軽薄な隣人ジョディで、好奇心にかられてジェーンの涙の訳を尋ねるジョディにジェーンは思いの丈を打ち明ける。

そもそも思春期になったばかりの頃に飛び級で大学生となった天才少女に恋人が出来るわけはなく、それどころか友人も少ない。

両親は子供に愛情を注ぐような人たちではなく、ジェーンの悩みなど聞いてくれるはずもない。

一生の伴侶が手に入らなくても、せめて子供が欲しい。それも自分のような天才に生まれて苦悩する子供ではなく、ごく普通の人生がおくれる子供が。

そんなジェーンの話を聞いていたジョディだったが、ジェーンよりもフットボールの試合が気になってTVを見始め、彼女につられて何気なくTV番組の映像を見たジェーンは愕然とする。

そこにはTVリポーターから辛辣なインタービューを受けながら、ピント外れの間の抜けた受け答えをしているNFLの超一流選手キャル・ボナーの、いかにもウドの大木のような姿が映しだされていた。

運動神経が抜群だが知能の低い彼との間の子供こそ、頭脳も運動神経も平均化され幸せな一生をおくれるに違いない。

そう思い込んだジェーンは、キャルを子種の提供者として選び、ジョディの仲介で娼婦のフリをして彼に近づくが・・・。


天才物理学者がこんな阿呆らしい発想をして、間抜けな男の子種を受けて妊娠しようと必死に行動する辺りからしておかしい。

しかもジェーンがおバカさんだと思い込んだキャルは、一流大学を優秀な成績で卒業したNFL切っての頭脳派プレイヤーで、その上昔気質の生真面目な男で、娼婦だと思って関係したジェーンの正体と妊娠を知ったキャルは、オレの子供を父無し子になど出来ないとばかりに、生まれてくる子供のためにジェーンと結婚すると言い出します。

結婚など望んでいなかった二人だけど、キャルの責任感とジェーンに騙された怒りは大きく、妊娠しているジェーンを無理やり嫁さんにして、キャルの実家があるノース・カロライナ州の片田舎に連れていってしまう。

キャルの剣幕に怯えて仕方なく彼の祖母と暮らすジェーンだったが、ボナー家の人々の家庭的な雰囲気や素朴な町の人々、そして逞しくて頭も良く優しいキャルに惹かれてしまいます。

身分違いの結婚をしたキャルの両親の気持ちのすれ違いと再生の物語を絡ませながら、奇妙な思い違いから始まったジェーンとキャルの恋が展開して行くロマンチック・コメディで、ある意味荒唐無稽なのにサクサク読めてしまうのは作者の力量が高いのだと思います。

ロマンチックな話が大好きという方にはおすすめです。

「シカゴ・スターズ」シリーズ。

  1. あなただけ見つめて
  2. ロマンティック・ヘヴン
  3. 「あなたがいたから」(本書) 
  4. あの夢の果てに
  5. 湖に映る影」
  6. まだ見ぬ恋人
  7. いつか見た夢を