垣根涼介「迷子の王様」☆☆☆
ついに「君たちに明日はない」もこの第5巻でお終いとなります。
リストラ請負業者に務める青年の目を通して描かれたバブル崩壊後の日本の経済状況と、それに伴う社会の変化、企業の変化、働き方の変化、働く人たちの気持ちの変化、変わるもの、変わらないもの、変えてはいけないもの、などなど色々と考えさせられたシリーズでした。
どうしても、リストラ=首切りというイメージで捉えてしまうし、実際不景気の日本で行われていたのはリストラという名の人員整理で、どちらかと言えばネガティブな話なのですが、この作品の主人公村上真介は、必ずしも否定的なだけの捉え方はしていない。
転職して新しい人生を始めた方が、より一層輝く場合もあるというスタンスで、更に物語もユーモラスで悲壮感がないので、何となく前向きな気持ちになれます。
最終話ではリストラを請け負ってきた真介の会社自体が解散するという事で、一見するとチャラ男ながら実は真摯に人生を考えている真介は、かつて自分がリストラに手を貸した人たちに話を聞きに出かけたりしています。
このシリーズで管理人が特に好きだった「借金取りの王子」の主人公たちの後日譚には心惹かれました。
真介たちのこれからの活躍を期待したいものです。
また第1巻から再読したくなりました。
「君たちに明日はない」シリーズ。