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垣根涼介「張り込み姫」の感想です。

垣根涼介「張り込み姫」☆☆

張り込み姫

リストラ請負会社日本ヒューマンリアクト社員の村上真介と、彼が担当する様々なリストラ対象者の人生模様を描いたヒューマン・コメディ「君たちに明日はない」シリーズの第3作目で、「ビューティフル・ドリーマー」「やどかりの人生」「みんなの力」「張り込み姫」の4編を収録しています。

「ビューティフル・ドリーマー」は英会話学校に勤務する28歳の女性の話。
有名大学の哲学科を卒業後、何故かスイスのホテル専門学校に留学し、帰国後一流ホテルに勤めるも僅か半年で退職。
そして今度は英会話学校へ・・・。優秀でありながら何か芯となるモノを持たない現代女性をうまく描いています。

「やどかりの人生」の主人公もチョット似た感じ。
就職人気ランキングで常に上位に入る大手広告代理店に入社したものの直ぐに退社して、空白の期間を挟んで一流企業に再就職するが、ここも直ぐに退職。
転職した先が今の勤務先の旅行代理店で、仕事は出来るのに本気を出しているように見えない。
周りの人間の士気に影響するからとリストラ対象になるが・・・。

「みんなの力」の主人公は自動車ディーラーの職人気質のメカニック。
彼でなきゃダメという顧客も多いが、仕事に対する姿勢が真摯すぎて効率が悪い。
彼の腕を持ってすれば再就職など簡単なはずが、自社が扱うクルマに深い愛着を持っている彼は・・・。

表題作の「張り込み姫」は、大手出版社に就職した超一流大学出身の文学少女が、何の因果か写真週刊誌の編集部に配属されて日々ゴシップ記事を追う羽目に・・・。
しかし売れなくなった写真週刊誌がついに廃刊されることになり、彼女は憧れの文芸編集部への異動が内定するが・・・。

不景気で失業者も多い今の時代ですけど、この作品に登場する人たちは比較的恵まれた人たちで、仕事を変わろうが自分のキャリアを追求しようが何とかなる人たちばかりです。

それ故に悲壮感は感じられないけど、手堅い物語には仕上がっていると思います。

主人公はリストラ請負業ですから、如何にして退職を渋る社員たちを退職させるか、という話になるはずですが、今回も主人公の村上真介の出番はあまり多くなく、それぞれが自分で自分の道を歩いて行く物語になっています。

このシリーズは、リストラを主題にしながら人間模様を明るく描いていて、管理人はけっこうお気に入りです。

「君たちに明日はない」シリーズ。

  1. 君たちに明日はない
  2. 借金取りの王子
  3. 「張り込み姫」(本書)
  4. 勝ち逃げの女王
  5. 迷子の王様