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ローラ・リー・ガーク「愛の調べは翡翠色」の感想です。

ローラ・リー・ガーク「愛の調べは翡翠色」☆☆

愛の調べは翡翠色

19世紀初頭のロンドン、作曲家ディラン・ムーアは自分の曲が初演された古い劇場を訪れ自殺をするところだった。

3ヶ月前の落馬で頭を石に叩きつけたことが原因で、頭の中では四六時中不快な金属音のような耳鳴りがして夜も眠れず、生きがいだった作曲も出来ず、医者からは耳鳴りは一生治らないと宣告され、絶望の縁に立たされていたのだ。

ディランが拳銃の引き金を引こうとしたその時、突然彼の作った曲が鳴り響き、翡翠色の瞳の若い女性がヴァイオリンを奏でながら現れて彼から拳銃を取り上げる。

ディランは名も知らぬ女性との会話中に耳鳴りが止まり、新しい曲の旋律が以前のように聞こえてきた事に驚くが、彼女が立ち去った後には、また耳鳴りが戻ってきていた。

それから5年の月日が流れ、酒と快楽に溺れながら日々を過ごすディランの前に、あの忘れられぬ女性が仮面舞踏会のヴァイオリン奏者として現れる。

その女性グレース・シェヴァルは、駆け落ちしたフランス人画家の夫と別れてイギリスに戻ってきたものの、スキャンダルにまみれた彼女には行き場もなく、生活に困窮しながらその日暮らしの毎日をおくっていた。

そんな彼女の窮乏を知ったディランは、突然彼のもとに現れた7歳の娘の家庭教師としてグレースを雇うことを申し入れる。


音楽を失うと共に生きがいもなくして失意のどん底にあった天才作曲家ディランが、自分に天啓をもたらしてくれるグレースを女神だと話すのを、音楽と絵画の違いはあっても同じような天才芸術家だった元夫が語った意味のない甘い言葉と同じだと誤解するグレースは、まだ若かった5年前の自分の選択を後悔するあまり、ディランの好意を素直に受け入れることが出来ません。

放蕩者としても名高いディランも、気高いグレースにはどう接すれば良いのか分からず、今までの女性たちとは勝手が違ってままならない。

そうしたディランとグレースと、更にディラン自身も知らなかった彼の庶子の娘が絡んで、ディランの屋敷で擬似家族のような暮らしをしているうちに、それぞれが抱く誤解は解けていくのですが・・・。

ギルティ・シリーズというヒストリカル・ロマンス4部作の第2作目の作品で、なかなか面白かったです。


ギルティ・シリーズ。
愛のかけらは菫色
「愛の調べは翡翠色」(本書)
愛の眠りは琥珀色
愛の誘惑は太陽の色