吉川英治文学賞受賞作
吉川英治文学賞は財団法人吉川英治国民文化振興会が主催する文学賞です。
吉川英治文学新人賞と紛らわしいですが、新人賞は中堅作家が中心で、こちらはベテラン作家が選考されることが多いようです。
当初はベテラン作家に対する功を労うような側面が強かったみたいですが、近年は発表された作品を対象としています。
以下は受賞作の一覧です。
第58回(2024年)
黒川博行 : 悪逆
周到な準備と計画によって強盗殺人を遂行していく男――。大阪府警捜査一課の舘野と箕面北署のベテラン刑事・玉川が、広告代理店の元経営者殺害事件を追うなか、さらに被害者と面識のある男が殺される。二人はそれぞれ士業詐欺とマルチ商法によって莫大な金を荒稼ぎした悪党で、情報屋の標的になっていた。警察は犯行手口の違いから同一犯による可能性はないと判断するが、いずれも初動捜査で手詰まりとなる。犯人像を?むことができないまま、さらには戦時中に麻薬密売組織に関わり、政治家とも昵懇だった新興宗教の宗務総長が殺害される。警察の動きを攪乱しながら凶行を続ける男の目的はどこにあるのか? 舘野と玉川は、凶悪な知能犯による完全犯罪を突き崩すことができるのか?
(「内容紹介」より)
第57回(2023年)
桐野夏生 : 燕は戻ってこない
北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。
(「内容紹介」より)
第56回(2022年)
中島京子 : やさしい猫
シングルマザーの保育士ミユキさんが心ひかれたのは、八歳年下の自動車整備士クマさん。出会って、好きになって、この人とずっと一緒にいたいと願う。当たり前の幸せが奪われたのは、彼がスリランカ出身の外国人だったから。大きな事件に見舞われた小さな家族を、暖かく見守るように描く長編小説。
(「内容紹介」より)
第56回(2022年)
京極夏彦 : 遠巷説百物語
盛岡藩筆頭家老にして遠野南部家当主の密命を受けた宇夫方祥五郎は、巷に流れる噂話を調べていた。郷が活気づく一方で、市場に流れる銭が不足し困窮する藩の財政に、祥五郎は言い知れぬ不安を感じる。ある日、世事に通じる乙蔵から奇異な話を聞かされた。 菓子司山田屋から出て行った座敷童衆、夕暮れ時に現れる目鼻のない花嫁姿の女、そして他所から流れて迷家に棲みついた仲蔵という男。祥五郎のもとに舞い込む街談巷説、その真偽は――。
(「内容紹介」より)
第55回(2021年)
村山由佳 : 風よ あらしよ
明治28年、福岡県今宿に生まれた伊藤野枝は、貧しく不自由な生活から抜け出そうともがいていた。「絶対、このままで終わらん。絶対に……!」野心を胸に、叔父を頼って上京した野枝は、上野高等女学校に編入。教師の辻潤との出会いをきっかけに、運命が大きく動き出し──。野枝自身、そして野枝を巡る人々──平塚らいてう、大杉栄らの視点で織りなす、圧巻の評伝小説。
(「内容紹介」より)
第54回(2020年)
該当作なし
第53回(2019年)
篠田節子 : 鏡の背面
薬物や性暴力によって心的外傷を負った女性たちのシェルター「新アグネス寮」で発生した火災。「先生」こと小野尚子は取り残された薬物中毒の女性と赤ん坊を助けるために死亡。スタッフがあまりにふさわしい最期を悼むなか、警察から衝撃の事実が告げられる。「小野尚子」として死んだ遺体は、まったくの別人だった。スタッフ中富優紀は、ライター山崎知佳とともに、すべての始まり、「1994年」に何が起こったのかを調べ始め、かつて「女」を追っていた記者にたどり着く。老舗出版社の社長令嬢、さる皇族の后候補となったこともある優しく、高潔な「聖母」の正体とは……。一方、指導者を失ったシェルター内では、じわじわと不協和音が……。疑念渦巻く女の園、傑作長編サスペンス。
(「内容紹介」より)
第52回(2018年)
帚木蓬生 : 守教
隠れキリシタンたちの魂の叫びが、甦る! 慟哭の歴史巨編! 戦国期の伝来から、弾圧を経て、江戸時代の終わりまで。九州のその村に、隠れつづけたキリシタンたち。殉教する者、転ぶ者、密告する者。史実をもとに、命を賭けて信じ続けた村人たちの姿を、過酷な状況を、残酷な処刑を、心の迷いを、温かい視線で描ききった落涙必至の歴史小説。あなたの知らなかった真実が、ここにはある!
(「内容紹介」より)
第51回(2017年)
藤田宜永 : 大雪物語
ある冬、N県K町が観測史上初の99センチという豪雪に見舞われる。町民をはじめ観光客、仕事のため車でK町に訪れた人々は、駅や車中など長時間足止めを余儀なくされた。町、県、国レベルの除雪作業も追いつかず、町の深刻な状況から災害救助法が適用され、自衛隊の派遣も要請される。そんな非日常のさなか、紡がれる6つのストーリー。避難所を設ける花屋、車に閉じ込められた人たちの救済支援にあたる自衛隊員、独居老人を救った青年の過去など「冷たいからこそ、人はより一層心を温かくさせる」
(「内容紹介」より)
第50回(2016年)
赤川次郎 : 東京零年
介護施設に入所中の父を支え懸命に働く亜紀と、権力者の父の元で安穏と暮らす健司。二人の偶然の出会いと、亜紀の父浩介が偶然テレビに映った「死んだはずの男」湯浅を見たことから、運命は動き始める。十数年前の湯浅の死に父の重治が関わっていたと知った健司は、亜紀と事件の真相を追うが、二人の前に公権力の壁が立ち塞がり……。巨匠が描く渾身の社会派サスペンス。吉川英治文学賞受賞作。
(「内容紹介」より)
第49回(2015年)
逢坂剛 : 平蔵狩り
父である「本所のへいぞう」を探すために、京から下ってきた女絵師。果たして、この女は平蔵の娘なのか。まったく新しい鬼平の貌。
(「内容紹介」より)
第48回(2014年)
東野圭吾 : 祈りの幕が下りる時- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。
(「内容紹介」より)
第48回(2014年)
大沢在昌 : 海と月の迷路
若き警察官の”正義”が、「軍艦島」内に波紋を広げる。わずかな土地に五千人以上が暮らす、通称「軍艦島」と呼ばれる炭鉱の島で、昭和三十四年少女の遺体が見つかった。島に赴任したばかりの警察官・荒巻は少女の事故死を疑い、独自に捜査を開始。島の掟を前に、捜査は難航するが、予期せぬ人物の協力によって、有力な証拠にたどりつくーー。
(「内容紹介」より)
第47回(2013年)
小池真理子 : 沈黙のひと
幼い頃に家を出て、新しい家族を持った父は晩年パーキンソン病を患い、最期は口を利くこともできずに亡くなった。遺された手紙や短歌から見えてくる、後妻家族との相剋、秘めたる恋、娘である「私」への想い。父の赤裸々な「生」を振り返ることで、生きる意味、死ぬ意味、そして、家族という形のありようが見え、物語世界に光が差し込んでくる――。
(「内容紹介」より)
第46回(2012年)
夢枕獏 : 大江戸釣客伝
時は元禄。旗本、津軽采女は小普請組という閑職がゆえ、釣り三昧の日々を送っている。やがて、義父・吉良上野介の計らいで「生類憐れみの令」を発布した、将軍綱吉に仕えることになるが・・・。同じ頃、絵師朝湖と俳人基角は江戸湾で土左衛門を釣り上げた。果たしてその正体は? 釣りの泥沼から覗く元禄時代。
(「内容紹介」より)
第45回(2011年)
森村誠一 : 悪道
時は元禄。将軍綱吉が柳沢邸に御成り中、天下の大乱を招きかねない変事が勃発。吉保は秘密を知るもののみなごろしを暗殺集団猿蓑衆に命ずる。伊賀忍者の末裔の流英次郎は天才女医のおそでを護り、おくのほそ道を血に染め、逃亡の旅へ。強大な敵の喉元に迫るは不屈の一寸の虫たち。一方、江戸城奥深くでは、生きる屍のような「影」が「このまま飼い殺しにされてたまるか」と、その時を待っていた……。人の業を問う、傑作時代小説。
(「内容紹介」より)
第44回(2010年)
重松清 : 十字架
いじめを苦に自殺したあいつの遺書には、僕の名前が書かれていた。あいつは僕のことを「親友」と呼んでくれた。でも僕は、クラスのいじめをただ黙って見ていただけだったのだ。あいつはどんな思いで命を絶ったのだろう。そして、のこされた家族は、僕のことをゆるしてくれるだろうか。のこされた人々の魂の彷徨を描く長編小説。吉川英治文学賞受賞作。
(「内容紹介」より)
第43回(2009年)
奥田英朗 : オリンピックの身代金
小生、東京オリンピックのカイサイをボウガイします――兄の死を契機に、社会の底辺というべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は? 吉川英治文学賞受賞作
(「内容紹介」より)
第42回(2008年)
浅田次郎 : 中原の虹
「汝、満洲の王者たれ」予言を受けた親も家もなき青年、張作霖(チャンヅオリン)。天命を示す“龍玉”を手に入れ、馬賊の長として頭角を現してゆく。馬と拳銃の腕前を買われて張作霖の馬賊に加わった李春雷(リイチュンレイ)は、貧しさゆえに家族を捨てた過去を持つ。栄華を誇った清王朝に落日が迫り、新たなる英雄たちの壮大な物語が始まる。
(「内容紹介」より)
第41回(2007年)
宮部みゆき : 名もなき毒- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。『誰か Somebody』から約一年後の出来事を描き、テレビドラマ化でも話題となった人気の杉村三郎シリーズ第二弾。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。
(「内容紹介」より)
第40回(2006年)
該当作なし
第39回(2005年)
北原亞以子 : 夜の明けるまで
優しくてお節介な木戸番夫婦のもとには、さまざまな事情を抱えた人々が訪れる。無鉄砲な女友達に振り回されるおもよ、嫁ぎ先でひどい仕打ちをうけた末に女手一つで子どもを育てるおいと。たくましく生きる江戸の人々を描いた短編集。
(「内容紹介」より)
第38回(2004年)
北方謙三 : 楊家将
物語の舞台は10世紀末の中国。小国乱立の時代は終わりを告げ、中原に残るは北漢と宋のみ。楊家は北漢の軍閥だったが、宋に帰順。やがて北漢は滅び、宋が中原を制する。その宋の領土を北から虎視眈々と狙うのが、遼という国。強力な騎馬軍団を擁するこの国は、宋の一部であった燕雲十六州を奪い取り、幼い帝を支える蕭太后の命により、南下の機会を窺っていた。奪われた地を取り戻すのは宋王の悲願――。外様であり、北辺の守りを任されている楊家は、遼との血戦で常に最前線に立たされる。楊家の長で「伝説の英雄」として語り継がれる楊業と七人の息子たちの熱き闘い。
(「内容紹介」より)
第37回(2003年)
原田康子 : 海霧
幕末の佐賀に生まれた幸吉は、米問屋に奉公に出るが、「新しい時代の産物」石炭に魅せられ、坑夫となってエゾ地へと渡る。広大な未開の地にあって、己の力と才覚で新しい人生を切り開いていくのだった…。幕末から明治、昭和へと、激動の時代をひたむきに生きた著者の血族を描いた物語。吉川英治文学賞受賞。
(「内容紹介」より)
第36回(2002年)
伊集院静 : ごろごろ
昭和40年代、ベトナム特需に沸く横浜港に流れついた4人の男。ガン、サクジ、トミヤス、キサン。彼らの遊びは決まって一人が抜ける三人麻雀だった――。世間の好景気を尻目に、自ら望んで時代から取り残されようとする男たちは、何を目指して生きるのか。あてどない流謫の日々、つかのまの花見の宴。その悲しみと寂寥の正体とは何なのか?男たちの流浪を描いた傑作長篇小説。
(「内容紹介」より)
第35回(2001年)
宮城谷昌光 : 子産
信義なき世をいかに生きるか――春秋時代中期、小国鄭は晋と楚の2大国間で向背をくりかえし、民は疲弊し国は誇りを失いつつあった。戦乱の鄭であざやかな武徳をしめす名将子国(しこく)と、その嫡子で孔子に敬仰された最高の知識人子産。2代にわたる勇気と徳の生涯を謳いあげる歴史叙事詩。
(「内容紹介」より)
第34回(2000年)
高橋克彦 : 火怨
辺境と蔑まれ、それゆえに朝廷の興味から遠ざけられ、平和に暮らしていた陸奥の民。8世紀、黄金を求めて支配せんとする朝廷の大軍に、蝦夷の若きリーダー・阿弖流為は遊撃戦を開始した。北の将たちの熱い思いと民の希望を担って。古代東北の英雄の生涯を空前のスケールで描く、吉川英治文学賞受賞の傑作。
(「内容紹介」より)
第33回(1999年)
白石一郎 : 怒濤のごとく
鄭成功は、明国海賊の鄭芝龍と日本人・田川マツとの間に1624年、平戸に生まれた。時に、日本では徳川幕府が豊臣家を亡ぼし、国内を統一し、中国では満州族の侵入のため明の屋台骨が揺らぎ始め、ポルトガルやオランダ、スペインがアジアに植民地を建設。風雲急を告げる東アジアで鄭一族は、次第に一大勢力となる。一六二四年、落日の平戸の浜で生を享けた日中混血の運命の子、鄭成功の生涯。吉川英治文学賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
第32回(1998年)
皆川博子 : 死の泉- 再読度 ☆:読後感 ☆☆☆
第二次大戦末期、ナチの施設〈レーベンスボルン〉の産院に端を発し、戦後の復讐劇へと発展する絢爛たる物語。去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。
(「内容紹介」より)
第32回(1998年)
林真理子 : みんなの秘密
普通の人などひとりもいない……。人間の秘め事を描く連作小説。男と女、心理と生理のなまめかしい絡み合い。倉田涼子、34歳。キスに対して少女よりもおぼこな人妻は、不倫という甘い蜜を手に入れた。キスだけの淡い恋に酔いしれ、その先の関係におそれおののくが……「爪を塗る女」。何かを隠して生きている妻、夫、娘、愛人たち、人間の密やかな喜びと切なさを描く連作小説集。第32回吉川英治文学賞受賞作。
(「内容紹介」より)
第31回(1997年)
野坂昭如 : 同心円
溢れる野坂文学の醍醐味。女と酒、舌先三寸、身勝手、臆病…同心円上の誰彼につながるオノレのうちを凝視する連作長篇。
(「BOOK」データベースより)
第30回(1996年)
高橋治 : 星の衣
機に浮かぶ模様が、忘れがたい男の優しさを、忘れてしまいたい男の面影を、織り出していく。沖縄の伝統織物に生涯をかける二人の女―汀子は亡き夫へ捧げる〔首里織〕を、尚子は新しい人生の証となる〔八重山上布〕を。生と愛の情念を織り上げる女のひたむきさを描く感動の長編小説。吉川英治文学賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
第29回(1995年)
阿刀田高 : 新トロイア物語
絶世の美女ヘレネと王子パリスが駆け落ちした。ヘレネを略奪した者は、求婚した者全員から報復を受ける。ユニークな「テュンダレオスの掟」が、古代ギリシアに予期せぬ大戦争を巻きおこした。名高い「トロイアの木馬」は真実だったのか。壮大な叙事詩の世界に挑んだ歴史小説。吉川英治文学賞受賞。
(「BOOK」データベースより)
第29回(1995年)
津本陽 : 夢のまた夢
天正十年、毛利攻めの直中にあった羽柴秀吉は、偶然捕らえた間者が忍ばせていた密書に衝撃を受ける。本能寺で織田信長討死。それは明智光秀が毛利家に宛てたものだった。窮地を覚った秀吉は毛利と巧みに和睦。中国大返しと呼ばれる急行軍を成し遂げ、仇敵・光秀との決戦に臨む…。野望と独善に満ちた天下人の生涯を、凛乎たる筆致で描く歴史巨編。
(「BOOK」データベースより)
第28回(1994年)
該当作なし
第27回(1993年)
田辺聖子 : ひねくれ一茶
江戸の荒奉公で苦労の末、好きな俳諧にうち込み、貧窮の行脚俳人として放浪した修業時代。辛酸の後に柏原に帰り、故郷の大地で独自の句境を確立した晩年。ひねくれと童心の屈折の中から生れた、わかりやすく自由な、美しい俳句。小林一茶の人間像を、愛着をこめて描き出した傑作長編小説。田辺文学の金字塔。
(「BOOK」データベースより)
第26回(1992年)
陳舜臣 : 諸葛孔明
後漢は衰微し、群雄が覇を競う乱世に、一人の青年が時を待っていた。三顧の礼にこたえ、劉備のもと、「臥竜」孔明は、南下する最強の敵、曹操に立ち向かうべく、赤壁の戦いへと赴く。透徹した史眼、雄渾の筆致がとらえた孔明の新しい魅力と壮大な「三国志」の世界。
(「BOOK」データベースより)
第25回(1991年)
平岩弓枝 : 花影の花 大石内蔵助の妻
元禄十六年二月、大石内蔵助、主税父子は忠臣義士として華やかに散る。その影で、ひっそりと咲きつづけた小さく可憐な花…。大石内蔵助の妻となり、別れて後はその遺児大三郎とともに、終生“忠臣の妻”として生きた女、りく。その哀しみ多い六十八年間の生涯が、ここに鮮やかに描き出される。「忠臣蔵」後の秘められたドラマに光をあてた感動の力作長編。吉川英治文学賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
第24回(1990年)
尾崎秀樹 : 大衆文学の歴史
100年余に及ぶ大衆文学の通史。円朝の講談・人情噺の速記本化、立川文庫の活況、「大菩薩峠」の執筆開始などの前史をふまえ、大衆文学の成立から今日の隆盛までを、あまたの作家の人と作品にふれながら描きあげた著者100冊目の記念碑的労作。戦前篇、戦後篇に分冊。
(「BOOK」データベースより)
第23回(1989年)
早乙女貢 : 会津士魂
幕末、京都を中心に尊皇攘夷の嵐が吹きあれる中、会津藩主松平容保は、京都守護職を拝命し、京都の秩序回復と禁裏の守護に当たるべく藩士を率いて上洛した。天皇に忠を、幕府に孝を尽くした会津藩主従が、なぜ朝敵の汚名を被らねばならなかったか。幕末悲劇の真相を追求する著者畢生の大河歴史小説。吉川英治文学賞受賞作品。
(「BOOK」データベースより)
第22回(1988年)
永井路子 : 「雲と風と」ならびに一連の歴史小説に対して
けわしい求法の道をたどり、苦悩する桓武帝を支えた最澄の生涯を、遠い歳月をこえて追跡する。北叡山開創一千二百余年、不滅の光芒を放つ宗祖伝教大師の人間と思想を、雲走り風騒ぐ激動の時代の中に描く歴史大作。
(「BOOK」データベースより)
第21回(1987年)
宮本輝 : 優駿
生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように…。若者の祈りに応えて、北海道の小さな牧場に、1頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇が、幕を開けた―。吉川英治文学賞受賞。
(「BOOK」データベースより)
第20回(1986年)
藤沢周平 : 白き瓶
三十七年の短い生涯を旅と作歌に捧げ、妻子をもつことなく逝った長塚節。清潔な風貌とこわれやすい身体をもつ彼は、みずから好んでうたった白埴の瓶に似ていたかもしれない。この歌人の生の輝きを、清冽な文章で辿った会心の鎮魂賦。新装版刊行にあたり、作品の細部をめぐって著者が清水房雄氏と交わした書簡の一部を掲載した。
(「BOOK」データベースより)
第20回(1986年)
井上ひさし : 腹鼓記/不忠臣蔵
元禄15(1702)年12月14日夜。赤穂浪士47名が両国の吉良邸に討入りを果たした。この事件はその後300年あまり、日本的な忠義の規範として語り継がれることとなった。しかし、旧赤穂藩士の中にはこの討入りの「義挙」に参加しなかった人々もいた。彼らはなぜ吉良邸に行かなかったのか? 厳密な歴史考証と豊かな想像力で「忠臣蔵」を問い直す歴史小説の傑作。第20回吉川英治文学賞受賞作。
(「内容紹介」より)
第19回(1985年)
結城昌治 : 終着駅
敗戦直後の焼け跡・東京で、ウニ三という正体不明の男がどぶにはまって変死。その位牌はまるで死のバトンの如く引き受けた男達につぎつぎと無造作な死を招き寄せる。絶対的価値が崩壊した後、庶民はいかに生き、いかに死んでいったか?独白体、落語体、書簡体等、章毎に文体を変え、虚無と希望の交錯する時代を活写。『軍旗はためく下に』の戦争テーマを深化した純度高い傑作。吉川英治文学賞受賞。
(「BOOK」データベースより)
第18回(1984年)
伊藤桂一 : 静かなノモンハン
昭和14年5月、満蒙国境で始まった小競り合いは、関東軍、ソ蒙軍間の4ヵ月に亘る凄絶な戦闘に発展した。襲いかかる大戦車群に、徒手空拳の軽装備で対し、水さえない砂また砂の戦場に斃れた死者8千余。生還した3人の体験談をもとに戦場の実状と兵士達の生理と心理を克明に記録、抑制された描写が無告の兵士の悲しみを今に呼び返す。芸術選奨文部大臣賞、吉川英治文学賞受賞の戦争文学の傑作。
(「内容紹介」より)
第17回(1983年)
宮尾登美子 : 序の舞
第16回(1982年)
南條範夫 : 細香日記
第15回(1981年)
船山馨 : 茜いろの坂
第14回(1980年)
渡辺淳一 : 遠き落日/長崎ロシア遊女館
猪苗代湖畔の貧農の家に生まれ、苦難の中上京、医学の階段を登りアメリカへ。異境での超人的な研究と活躍、野口英世の劇的な生涯と医学と人間性を鋭く描破した、吉川英治賞受賞。
(「内容紹介」より)
第14回(1980年)
黒岩重吾 : 天の川の太陽
大化の改新のあと政権を保持する兄天智天皇の都で、次第に疎外される皇太弟大海人皇子。悲運のなかで大海人の胸にたぎる想いは何か。額田王との灼熱の恋、鬱勃たる野心。古代日本を震撼させた未曾有の大乱の全貌を雄渾な筆致で活写する小説壬申の乱。吉川英治文学賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
第13回(1979年)
吉村昭 : ふぉん・しいほるとの娘
幕末の長崎で最新の西洋医学を教えて、神のごとく敬われたシーボルト。しかし彼は軍医として、鎖国のベールに閉ざされた日本の国情を探ることをオランダ政府から命じられていた。シーボルトは丸山遊廓の遊女・其扇を見初め、二人の間にお稲が生まれるが、その直後、日本地図の国外持ち出しなどの策謀が幕府の知るところとなり、厳しい詮議の末、シーボルトは追放されお稲は残される。吉川英治文学賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
第12回(1978年)
杉本苑子 : 滝沢馬琴
滝沢馬琴の苛酷な生を描く吉川英治文学賞受賞作。「南総里見八犬伝」「椿説弓張月」等で名声を得た馬琴は、保守的で狷介な性格のため人と衝突することも多く、苦しい家計と病弱な家族の煩労も、一身に負っていた。
(「内容紹介」より)
第11回(1977年)
池波正太郎 : 「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」などを中心とした作家活動に対して
「鬼の平蔵」と盗賊どもに恐れられた幕府の火付盗賊改メ方の長官・長谷川平蔵。怪盗、妖盗を相手取り、水ぎわ立った腕と度胸で大活躍!
(「内容紹介」より)
第10回(1976年)
五木寛之 : 青春の門 筑豊篇- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
誰もが1度は通りすぎる、そしてただ1度しか通ることの許されない青春の門。熱い血のたぎる筑豊の地に生を享けた伊吹信介。目覚めゆく少年の愛と性、そして人生の希望と旅立ち……。ひたむきな青春の遍歴を雄大な構想で描き、世代を超えて読みつがれる不滅の大河ロマン。
(「内容紹介」より)
第9回(1975年)
城山三郎 : 落日燃ゆ
東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという運命に直面させられた広田。そしてそれを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった広田の生涯を、激動の昭和史と重ねながら抑制した筆致で克明にたどる。
(「内容紹介」より)
第8回(1974年)
新田次郎 : 「武田信玄」ならびに一連の山岳小説に対して
狂乱の日々を送り、民に恨みの声をあげさせていた父・武田信虎を追放して甲斐の国の主となった信玄は、信濃の国に怒涛の進撃をはじめた。諏訪頼重を甲斐に幽閉し小笠原長時を塩尻峠に破り、さらに村上義清を砥石城に攻略する。信玄は天下統一を夢みて、京都に上ろうと志す。終生のライバル・上杉謙信との川中島の決戦、軍司・山本勘兵衛など、諏訪生まれの巨匠が雄大な構想で描く歴史小説の第一巻、いよいよスタート。
(「内容紹介」より)
第7回(1973年)
水上勉 : 「兵卒の鬣」を中心とした作家活動に対して
兵卒の鬣,冬日の道,草民記一章,道の花,ぼろんか騒動の多吉
(「内容紹介」より)
第6回(1972年)
司馬遼太郎 : 「世に棲む日日」を中心とした作家活動に対して
時は幕末。嘉永六(1853)年、ペリーの率いる黒船が浦賀沖に姿を現して以来、攘夷か開国か、勤王か佐幕か、をめぐって、国内には、激しい政治闘争の嵐が吹き荒れる。長州萩・松本村の下級武士の子として生まれた吉田松陰は、浦賀に来航した米国軍艦で密航を企て罪人に。生死を越えた透明な境地の中で、自らの尊王攘夷思想を純化させていく。その思想は、彼が開いた私塾・松下村塾に通う一人の男へと引き継がれていく。松陰の思想を電光石火の行動へと昇華させた男の名は、高杉晋作。身分制度を超えた新しい軍隊・奇兵隊を組織。長州藩を狂気じみた、凄まじいまでの尊王攘夷運動に駆り立てていくのだった……骨肉の抗争をへて、倒幕へと暴走した長州藩の原点に立つ吉田松陰と弟子高杉晋作を中心に、変革期の青春群像を鮮やかに描き出す長篇小説全四冊。
(「内容紹介」より)
第5回(1971年)
源氏鶏太 : 「口紅と鏡」「幽霊になった男」その他、これまでの新しい大衆文学の領域を確立した業績の業績に対して
第4回(1970年)
柴田錬三郎 : 「三国志 英雄ここにあり」を中心とした旺盛な作家活動に対して
後漢・霊帝の皇基衰えて天下は乱れ、劉備玄徳は、関羽、張飛と義を結んで黄巾賊討滅に起上った。都の洛陽で大将軍何進の後を襲うは、曹操か、袁紹か?河南には大軍を擁する菫卓が、遥か洛陽の空を望んでいた。治乱興亡――国造りの戦国絵巻を雄大なスケールで描く、興趣横溢の長編小説。
(「内容紹介」より)
第3回(1969年)
川口松太郎 : しぐれ茶屋おりく
隅田川沿いの芦の湿原の中に建つ「しぐれ茶屋」。蛤の茶漬けを求めて、伊藤博文をはじめ、政治家・実業家・芸人らが通ったという。実在のモデルの女将おりくは殊の外、芸人を可愛がった。円熟した筆使いにのせ、明治末期から大正にかけての庶民の哀歓を、このひとでなければといわれるほど、見事に織りなし、市井に花咲く人情の世界を流麗に綴る、川口文学の代表作。吉川英治文学賞受賞。
(「内容紹介」より)
第2回(1968年)
山岡荘八 : 徳川家康
竹千代(家康)が生まれた年、信玄は22歳、謙信は13歳、信長は9歳であった。動乱期の英傑が天下制覇の夢を抱くさなかの誕生。それは弱小松平党にとっては希望の星であった──剛毅と智謀を兼ね備えて泰平の世を拓いた家康の生涯を描いて、現代人の心に永遠の感動を刻む世紀の大河ドラマ発端篇!
(「内容紹介」より)
第1回(1967年)
松本清張 : 「昭和史発掘」「花氷」「逃亡」ならびに幅広い作家活動に対して
独自の取材と視点とで現代史に新たな照明を当てた大シリーズの一巻目。1964年から「週刊文春」にて連載を開始。厖大な未発表資料と綿密な取材によって、昭和初期の日本現代史の埋もれた事実に光をあてた不朽の労作が新装版で登場。政界に絡む事件の捜査中に起きた「石田検事の怪死」、部落問題を真正面から取り上げた「北原二等卒の直訴」、他に田中義一が立憲政友会入りする際の「持参金」300万円の出所に関わる疑惑を取り上げた「陸軍機密費問題」や、朝鮮人無政府主義者朴烈とその愛人(内縁の妻)である日本人の思想家の金子文子が皇室暗殺を計画したという大逆事件「朴烈大逆事件」「芥川龍之介の死」など五篇を第一巻に収録。圧倒的な面白さ。
(「内容紹介」より)