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週刊文春ミステリーベスト10の1983年から2000年の海外部門作品一覧です。

週刊文春ミステリーベスト10の海外部門作品(1983年~2000年)

「週刊文春ミステリーベスト10」は週刊文春で毎年末に発表されるミステリー小説の年間ランキングです。1977年末に開始され、日本推理作家協会員や書評家、記者、書店員などのアンケート投票によりランキングが決まります。
当初(1977年~1982年)は海外と国内の区別はありませんでしたが、現在は海外部門と国内部門に分かれています。
以下は1983年~2000年の海外部門ランキング一覧です。

国内部門2001年~ へ
国内・海外1977年~1982年へ
海外部門2001年~ へ
海外部門1983年~2000年へ

年度 / 順位 / 作品名 / 著者 / 内容
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2000年

1位 ハンニバル :トマス・ハリス
あの血みどろの逃亡劇から7年―。FBI特別捜査官となったクラリスは、麻薬組織との銃撃戦をめぐって司法省やマスコミから糾弾され、窮地に立たされる。そこに届いた藤色の封筒。しなやかな手書きの文字は、追伸にこう記していた。「いまも羊たちの悲鳴が聞こえるかどうか、それを教えたまえ」…。だが、欧州で安穏な生活を送るこの差出人には、仮借なき復讐の策謀が迫っていた。

2位 夜の記憶 :トマス・H・クック
ミステリー作家ポールは悲劇の人だった。少年の頃、事故で両親をなくし、その直後、目の前で姉を惨殺されたのだ。長じて彼は「恐怖」の描写を生業としたが、ある日、50年前の少女殺害事件の謎ときを依頼される。それを機に“身の毛もよだつ”シーンが、ポールを執拗に苛みはじめた―人間のもっとも暗い部分が美しく描かれる。

3位 サム・ホーソーンの事件簿 :エドワード・D・ホック
橋の途中で消え失せた馬車、“小人”と書き残して密室で殺されていた車掌、行き止まりの廊下から消え去った強盗、誰も近づけない空中で絞め殺されたスタントマン等々、次々と発生する怪事件!全編不可能犯罪をあつかった、サム・ホーソーンものの初期作品十二編に加え、特別付録として、著者の代表作の一つであり、これまた不可解な墜死事件の謎を解く「長い墜落」を収録した。

4位 ポップ1280 :ジム・トンプスン
ポッツヴィル、人口1280。この田舎町の保安官ニックには、心配事が多すぎる。考えに考えた結果、自分にはどうすればいいか皆目見当がつかない、という結論を得た。口うるさい妻、うすばかのその弟、秘密の愛人、昔の婚約者、保安官選挙…だが、目下の問題は、町の売春宿の悪党どもだ。思いきった手を打って、今の地位を安泰なものにしなければならない―饒舌な語りと黒い哄笑、突如爆発する暴力!人間の底知れぬ闇をえぐり、読者を彼岸へとみちびく、究極のノワール。

5位 悪魔の涙 :ジェフリー・ディーヴァー
世紀末の大晦日午前9時、ワシントンの地下鉄駅で乱射事件が発生。間もなく市長宛に2000万ドルを要求する脅迫状が届く。正午までに“市の身代金”を払わなければ、午後4時、午後8時、そして午前0時に無差別殺人を繰返すとある。手掛りは手書きの脅迫状だけ…FBIは筆跡鑑定の第一人者パーカー・キンケイドに出動を要請した。

5位 囮弁護士 :スコット・トゥロー
ある日、連邦検事の訪問をうけた弁護士ロビー・フェヴァーは、脱税と判事への贈賄を指摘され、罪の軽減を条件に取引を持ちかけられる。家族を抱えるロビーに選択の余地はない。かくして法曹界の大規模贈収賄事件を摘発するべく、連邦検察局とFBIの囮作戦が始まった!「推定無罪」を凌ぐと絶賛されたリーガル・スリラーの傑作。

5位 Mr.クイン :シェイマス・スミス
麻薬王のブレーンとして完璧な犯罪計画を立てる―おれにとって犯罪はビジネスだ。計画を売るだけ、実行はしない。今度の仕事は大物だった。裕福な不動産業者の一家を事故に見せかけて殺し、全財産を乗っとるのだ。すべては順調だった。新聞記者に尻尾をつかまれそうになるまでは…究極のアンチ・ヒーロー、クイン登場。刺激に満ちた、新世代の犯罪小説。

8位 コフィン・ダンサー :ジェフリー・ディーヴァー
武器密売裁判の重要証人が航空機事故で死亡。NY市警は殺し屋"ダンサー"の仕業と断定し、犯人追跡の協力をあのライムに依頼する。

9位 子供の眼 :リチャード・N・パタースン
民主党より上院選への出馬を要請された辣腕弁護士、クリストファ・パジェット。恋人のテリは、夫リッチーとの離婚を決意。が、リッチーが流した陰湿なゴシップが二人の未来に影を落とす。そこへ、リッチーの突然の死。それを密かに願っていた人間は少なくはない。しかし警察が逮捕したのは、なんとクリストファだった。本当に彼はクロなのか?それは読者にも分からない…。

9位 わが心臓の痛み :マイクル・コナリー
連続殺人犯を追い、数々の難事件を解決してきたFBI捜査官テリー・マッケイレブ。長年にわたる激務とストレスがもとで、心筋症の悪化に倒れた彼は、早期引退を余儀なくされた。その後、心臓移植の手術を受けて退院した彼のもとに、美しき女性グラシエラが現われる。彼女は、マッケイレブの胸にある心臓がコンビニ強盗に遭って絶命した妹のものだと語った。悪に対する怒りに駆り立てられたマッケイレブは再び捜査に乗り出す。因縁の糸に繰られ、事件はやがてほつれ目を見せはじめるが…。


1999年

1位 ボーン・コレクター :ジェフリー・ディーヴァー
ケネディ国際空港からタクシーに乗った出張帰りの男女が忽然と消えた。やがて生き埋めにされた男が発見されたが、地面に突き出た薬指の肉はすっかり削ぎ落とされ、女物の指輪が光っていた…女はどこに!?NY市警は科学捜査専門家リンカーン・ライムに協力を要請する。彼は四肢麻痺でベッドから一歩も動けないのだが…。

2位 極大射程 :スティーヴン・ハンター
ボブはヴェトナム戦争で87人の命を奪った伝説の名スナイパー。今はライフルだけを友に隠遁生活を送る彼のもとに、ある依頼が舞い込んだ。精密加工を施した新開発の308口径弾を試射してもらいたいというのだ。弾薬への興味からボブはそれを引受け、1400ヤードという長距離狙撃を成功させた。だが、すべては謎の組織が周到に企て、ボブにある汚名を着せるための陰謀だった…。

3位 死の記憶 :トマス・H・クック
時雨の降る午後、9歳のスティーヴは家族を失った。父が母と兄姉を射殺し、そのまま失踪したのだ。あれから35年、事件を顧みることはなかった。しかし、ひとりの女の出現から、薄膜を剥ぐように記憶が次々と甦ってくる。隠されていた記憶が物語る、幸せな家族が崩壊した真相の恐ろしさ。クックしか書きえない、追憶が招く悲劇。

4位 パナマの仕立屋 :ジョン・ル・カレ
仕立屋の嘘はふくらみ、妻は怒り、大使館は揺れる。パナマ運河返還をめぐる策略!冷戦後のエスピオナージを描いたル・カレの新境地。スパイ小説のニュー・ウエーブ。映画化決定。

5位 夏草の記憶 :トマス・H・クック
名医として町の尊敬を集めるベンだが、今まで暗い記憶を胸に秘めてきた。それは30年前に起こったある痛ましい事件に関することだ。犠牲者となった美しい少女ケリーをもっとも身近に見てきたベンが、ほろ苦い初恋の回想と共にたどりついた事件の真相は、誰もが予想しえないものだった!ミステリの枠を超えて迫る犯罪小説の傑作。

6位 三人の名探偵のための事件 :レオ・ブルース
なごやかなウィークエンド・パーティの夜、突如として起こった密室殺人事件。名探偵たちはそれぞれ推理をつくして謎に挑戦する…。

7位 ボビーZの気怠く優雅な人生 :ドン・ウィンズロウ
海兵隊あがりの冴えない泥棒ティム・カーニーは、服役中の刑務所で正当防衛のためにヘルズエンジェルズの男を殺し、塀の中にいながら命を狙われる身となった。生きのびる道はただひとつ。ティムの容姿が、南カリフォルニアの伝説的サーファーで麻薬組織の帝王、ボビーZにそっくりであることに目をつけた麻薬取締局の要求を飲み、Zの替え玉となることだった―。愛すべき悪党どもに、ミステリアスな女。波の音と風の匂い。気怠くも心地よいグルーヴ。ウィンズロウが新境地を切り拓いた最高傑作。

8位 惜別の賦 :ロバート・ゴダード
姪の結婚披露宴に、少年時代の親友が闖入してきた。落魄した友は、三十四年前の秋、殺人罪で絞首刑になった父親の無実を訴え、翌朝首を吊って自殺をする。罪悪感に突き動かされたわたしは、疎遠にしていた人々を訪ねる過去への旅に出たが…。錯綜する物語は、失われたものへの愛惜と激しい悔恨を湛え、万華鏡さながらに変転してゆく。余韻深い結末が待ち受ける、円熟の逸品。

9位 クリスマスに少女は還る :キャロル・オコンネル
クリスマスを控えた町から、二人の少女が姿を消した。誘拐か?刑事ルージュの悪夢が蘇る。十五年前に双子の妹が殺されたときと同じだ。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れた―「わたしはあなたの過去を知っている」。一方、監禁された少女たちは力を合わせ脱出のチャンスをうかがっていた…。巧緻を極めたプロット。衝撃と感動の結末。新鋭が放つ超絶の問題作。

10位 血の流れるままに :イアン・ランキン
エジンバラ市長の娘が誘拐される事件が発生。リーバス警部は容疑者の少年二人を見つけるが、追い詰められた彼らは身を投げ自殺してしまう。時同じくして、銃を持った元受刑者が議会議員を急襲するが、元受刑者は議員を殺さず、自らを撃ち抜き死んでしまう。一見なんの関係もない三人の自殺を調べるリーバスに、なぜか各方面から捜査中止の圧力が…世界のミステリ界をリードする著者が描く、一匹狼リーバスの単独捜査。


1998年

1位 緋色の記憶 :トマス・H・クック
ある夏、コッド岬の小さな村のバス停に、緋色のブラウスを着たひとりの女性が降り立った―そこから悲劇は始まった。美しい新任教師が同僚を愛してしまったことからやがて起こる“チャタム校事件”。老弁護士が幼き日々への懐旧をこめて回想する恐ろしい冬の真相とは?精緻な美しさで語られる1997年度MWA最優秀長編賞受賞作。

2位 闇に浮かぶ絵 :ロバート・ゴダード
19世紀のロンドン。ひとりの男が11年の時を経て戻ってきた。男の名はジェイムズ・ダヴェノール。自殺する旨の手紙を残して消息を絶った准男爵家の跡継ぎだった。元婚約者の出現に心乱れる人妻、憎悪に燃えるその夫。頑として彼を認めようとしない母と弟。それぞれの思いがやがてダヴェノール家の忌まわしき歴史の扉を開ける。

3位 猿来たりなば :エリザベス・フェラーズ
イギリス南部ののどかな自然に囲まれた村、イースト・リート。トビーとジョージは、このロンドンから遠く離れた片田舎に誘拐事件を解決するためにはるばるやってきたのだが、とこでふたりを待ち受けていたのは前代未聞の珍事件、なんと、チンパンジーの誘拐殺害事件だった!イギリス・ミステリ界で半世紀にわたって活躍してきた重鎮エリザベス・フェラーズの傑作本格ミステリ。

4位 五輪の薔薇 :チャールズ・パリサー
すべての発端は、四枚の花弁を持つ薔薇を中央と四隅とに一輪ずつ並べた“五輪の薔薇”の意匠だった。少年ジョンは、母メアリーとの散歩の途中で目にした豪華な四輪馬車を飾る紋章に、なぜか自宅の銀器類と同じその薔薇の意匠がほどこされていることを知る。ほとんど屋敷から出ずに母と二人で暮らすジョンにとっては、そもそも、半幽閉的な自分の生活そのものが謎だった。そして、自分に父親がいないことも。ジョンの問いかけにたいし、かたくなに返答を避けてきたメアリーだったが、ある日、自分たちには邪悪な敵がいて、ジョンの身の安全のために、今こそ重大な選択を迫られているのだと告白する―。出生の秘密、莫大な遺産の行方、幾多の裏切り、そして未解決の殺人事件と、物語文学のあらゆる要素をそなえ、読者を心地好い迷宮へと誘う、波瀾万丈かつ複雑に入り組んだプロット。文豪チャールズ・ディケンズ、ウィルキー・コリンズの作品世界をも凌駕する超弩級の大作が、ついにそのヴェールを脱ぐ。

5位 フリッカー、あるいは映画の魔 :セオドア・ローザック
映画の中には魔物がいる―場末の映画館で彼の映画を観た時からジョナサンはその魔物に囚われてしまった。魔物の名はマックス・キャッスル。遺された彼の監督作品を観るにつけ説明できない何かの存在を感じるのだが…。ミステリーファンのみならず、映画ファン、文学ファンをも満足させた98年度ミステリー・ベスト1。

6位 ブラックライト :スティーヴン・ハンター
アリゾナ州の田舎で平穏に暮らす名スナイパー、海兵隊退役一等軍曹、ボブ・リー・スワガーのもとにラス・ピューティという青年が訪ねてきた。「あなたの父上の話が書きたいのです」とラス・ピューティは言った。1955年7月、アーカンソー州の警察官アール・リー・スワガーは逃走中の凶悪犯との銃撃戦で殉職した。四十年前の事件を調べはじめた二人に気づき、真実が明るみに出ることを恐れた男たちが、いま動きはじめた…。『ダーティホワイトボーイズ』で好評を博した巨匠S・ハンターの最新アクション長編。

7位 ひとりで歩く女 :ヘレン・マクロイ
西インド諸島を発つ日、わたしは、存在しない庭師から手紙の代筆を頼まれた。さらに、白昼夢が現実を侵したように、米国へ帰る船上で生起する蜃気楼めいた出来事の数々。誰かがわたしを殺そうとしています…一編の手記に始まる物語は、奇妙な謎と戦慄とを孕んで、闇路をひた走る。めまいを誘う構成に秘められた狡知、縦横無尽に張りめぐらされた伏線の妙。超絶のサスペンス。

8位 ビッグ・ピクチャー :ダグラス・ケネディ
ウォール街の大手法律事務所。30万ドルを超える年収。妻とふたりの息子。ヤッピー弁護士のベンは、それでも満たされぬ思いを抱いていた。そして妻の不貞に気づき、激情に駆られて凶行に及んだあとで、ベンはそれまでの自分をも葬ることを決意した…。エリートから逃亡者へ、ニューイングランドからモンタナへ。数奇な運命と皮肉な結末をスリリングに描き、全米を震撼させた問題作。

9位 黒と青 :イアン・ランキン
椅子にくくりつけられ頭部にポリ袋をかぶせられて建物から墜落した男の死体が発見された。男は北海油田で働く塗装工。その死には犯罪組織の関与が疑われた。男はなぜ殺されなければならなかったのか?リーバスは事件の背景を探るために、油田の最寄りの都市である北海沿岸のアバディーンへと赴いた。捜査を開始するリーバス。やがて彼は、深入りはするなといわんばかりの、歯を折られるまでに手荒い警告を受けるが…。

9位 囚人同盟 :デニス・リーマン
―ワシントン州タコマ市沖合にあるマクニール島刑務所。所長一味は私腹をこやすことに狂奔し、所内の腐敗は進むばかり。そこに入所してきた新入りは、知力、体力にすぐれ、やがて舎房のリーダーとなった。あだ名は“マザー”。彼には秘めた目的が…。その達成のためプロジェクト・チームを組織した!―刑務所内を舞台に、ワルだが憎めない男たちが繰りひろげる奇想天外の計画とは…。武装銀行強盗で終身刑を受け、服役中の“現役囚人”作家がコミカルなタッチで描く一読必笑のピカレスク。


1997年

1位 幻の特装本 :ジョン・ダニング
警察を辞めて古書店を営むクリフは、元同僚の依頼に愕然とした。存在するはずのない、エドガー・アラン・ポー作『大鴉』の1969年限定版を盗んで逃亡中の女を連れ戻してくれというのだ。その本は限定版専門の出版社の特装本で、見つかれば莫大な価値がある。興味を惹かれ、事件を調べ始めたクリフの前に、やがて過去の連続殺人の影が…。

2位 フロスト日和 :R・D・ウィングフィールド
肌寒い秋の季節。デントンの町では、連続婦女暴行魔が跳梁し、公衆便所には浮浪者の死体が転がる。なに、これはまだ序の口で……。皆から無能とそしられながら、名物警部フロストの不眠不休の奮戦と、推理の乱れ撃ちは続く。中間管理職に春の日和は訪れるのだろうか? 笑いも緊張も堪能できる、まさに得難い個性の第二弾!

3位 グリーンマイル :スティーヴン・キング
時は1932年、舞台はアメリカ南部のコールド・マウンテン刑務所の死刑囚舎房。この刑務所で死刑囚が電気椅子にたどりつくまでに歩く通路は、床が緑のリノリウムであることから、通称「グリーン・マイル」と呼ばれている。ここで起こった驚くべき出来事とは?そして電気椅子の真の恐ろしさとは?毎月1冊ずつ全6巻の分冊で刊行され、全米を熱狂させた超ベストセラー待望の第1巻。

4位 蒼穹のかなたへ :ロバート・ゴダード
讒言で会社を追われ、元の部下で現国防次官ダイサートの世話でロードス島の別荘番として酒と倦怠の日々を送る中年男ハリーの前に現れたのは清楚な娘ヘザー。ギリシャの風に吹かれる夢のような毎日。だがヘザーの突然の失踪。なぜなのだ?苦しい疑問を解くべく祖国イギリスに立ち帰ったハリーを待ち受けていた大いなる陰謀。

5位 赤い右手 :ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ
結婚式を挙げに行く途中のカップルが拾ったヒッチハイカーは、赤い眼に裂けた耳、犬のように尖った歯をしていた…。やがてコネティカット州山中の脇道で繰り広げられる恐怖の連続殺人劇。狂気の殺人鬼の魔手にかかり、次々に血祭りに上げられていく人々―悪夢のような夜に果して終りは来るのか?熱に憑かれたような文体で不可能を可能にした、探偵小説におけるコペルニクス的転回ともいうべきカルト的名作、ついに登場。

6位 猟犬クラブ :ピーター・ラヴゼイ
世界最古とされる切手「ペニー・ブラック」が、郵便博物館から盗まれた。数日後、ミステリ愛好会「猟犬クラブ」の会合では、会員のマイロがジョン・ディクスン・カーの密室講義を読み上げようとしていた。ところが、開かれた『三つの棺』には、盗まれたはずの切手がはさまれていたのだった。窃盗容疑をかけられたマイロが疑いをはらし、ようやく運河に停泊させているナロウボートの自宅に戻ると、船室内には「猟犬クラブ」の会員の死体が置きざりにされていた。南京錠のかかった、まったくの密室状態での殺人事件。エイヴォン・アンド・サマセット警察の警視の座に返り咲いたピーター・ダイヤモンドは、「猟犬クラブ」の推理中毒者たちを相手に、独自の推理で密室トリックに挑んだ―。ミステリの蘊蓄をたっぷりと盛り込み、すべてのミステリ・ファンに捧げる、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞の、シリーズ第4作。

7位 ダーティホワイトボーイズ :スティーヴン・ハンター
オクラホマ州立マカレスター重犯罪刑務所に収監されていた終身囚ラマー・パイはシャワールームで黒人受刑者を殴り殺した。黒人たちの逆襲を恐れた彼は看守を脅し、子分二人をつれて脱獄に成功する。迷いなく邪魔者を殺して進む、生まれながらの悪の化身ともいうべきラマーとその一行は銃を手にいれ、車を奪い、店を襲い、警察を嘲笑するかのように、ひたすら爆走し、破壊しつづける!『真夜中のデッド・リミット』のスティーヴン・ハンターが圧倒的な筆力で描く、驚異の悪漢バイオレンス超大作。

8位 ザ・ポエット :マイクル・コナリー
デンヴァー市警察殺人課の刑事ショーン・マカヴォイが変死した。自殺とされた兄の死に疑問を抱いた双子の弟で新聞記者であるジャックは、最近全米各所で同様に殺人課の刑事が変死していることをつきとめる。FBIは謎の連続殺人犯を「詩人」(ザ・ポエット)と名付けた。犯人は、現場にかならず文豪エドガー・アラン・ポオの詩の一節を書き残していたからだ。FBIに同行を許されたジャックは、捜査官たちとともに正体不明の犯人を追う…。エドガー賞受賞の鬼才、マイクル・コナリーが犯罪小説の極北に挑む野心作。

8位 静寂の叫び :ジェフリー・ディーヴァー
聾学校の生徒と教員を乗せたスクールバスが、三人の脱獄囚に乗っ取られた。彼らは、廃屋同然の食肉加工場に生徒たちを監禁してたてこもる。FBI危機管理チームのポターは、万全の体制で犯人側と人質解放交渉に臨むが、無残にも生徒の一人が凶弾に倒れてしまう。一方、工場内では教育実習生のメラニーが生徒たちを救うために独力で反撃に出るが…緊迫の展開に驚愕と興奮が相次ぐ、読書界で話題独占の作家の最高傑作。

10位 眠りなき狙撃者 :ジャン=パトリック・マンシェット
マンシェットの遺作であり最高傑作!引退を決意したプロの殺し屋テリエは、なぜ再びその世界に戻ったのか。


1996年

1位 死の蔵書 :ジョン・ダニング
十セントの古本の山から、数百ドルの値打ちの本を探しだす―そんな腕利きの“古本掘出し屋”が何者かに殺された。捜査に当たった刑事のクリフは、被害者の蔵書に莫大な価値があることを知る。貧乏だったはずなのに、いったいどこから。さらに、その男が掘出し屋を廃業すると宣言していた事実も判明し…古書に関して博覧強記を誇る刑事が、稀覯本取引に絡む殺人を追う。すべての本好きに捧げるネロ・ウルフ賞受賞作。

2位  バースへの帰還 :ピーター・ラヴゼイ
呼び出しは深夜にきた。二人の刑事が、失業中の元警視ピーター・ダイヤモンドを、ロンドンのフラットのベッドから引っ張り出したのだ。連れて行かれた先は、ダイヤモンドのかつての職場、バースのエイヴォン・アンド・サマセット署だった。かつて彼を辞職に追い込んだ上司たちが、深刻な顔で迎えた。殺人犯マウントジョイが脱獄し、副署長の娘を誘拐して交渉相手にダイヤモンドを指名しているという。四年前、女性ジャーナリストが口に赤い薔薇を詰めこまれて刺殺された事件があり、彼がマウントジョイを逮捕していた。頼みこまれて、ダイヤモンドはしぶしぶ、しかし内心では大好きな捜査活動ができることにほくほくして、マウントジョイとの会見にのぞむ。そこで要求されたのは、四年前の事件の洗い直しだった。もしマウントジョイが無実だとすると、真犯人は誰だったのか。被害者のボーイフレンド、家主、取材していた不法居住者たち…。調べていくうちに、当時は埋もれていた事実が次々と明るみに出、ダイヤモンドの不屈の刑事魂が過去と現在を鮮やかに結びつけていく。巨匠会心の、英国推理作家協会シルヴァー・ダガー賞受賞作。

3位 敵手 :ディック・フランシス
落馬事故によって片腕となった元チャンピオン・ジョッキイ、シッド・ハレー。現在は競馬界専門の調査員となっていたが、放牧中の馬の脚を切断するという残忍な犯罪が連続して発生、かわいがっていたポニイを襲われた白血病の少女から、犯人を捜してほしいと依類される。だが、容疑者とした浮かび上がったのは、ハレー自身が犯人とは信じたくない人物だった。エリス・クイント―騎手時代のよきライヴァルで、私生活でもハレーの親友だった男。引退後は、テレビ・タレントとして国民的な人気を博し、誰からも愛される好男子だった。もちろんクイントは犯行を否定し、世間も彼が犯人とは信じなかった。かえって、恵まれているクイントを妬むあまり間違った告発をしたと、ハレーはマスコミからごうごうたる非難を浴びる。ところが、この執拗なマスコミの攻撃には、じつは裏があることが次第にあきらかになってくる…。『大穴』『利腕』につづき、不屈のヒーロー、シッド・ハレーが三度目の登場を飾る、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

4位 ホワイト・ジャズ :ジェイムズ・エルロイ
警察内部の暗闘に翻弄される悪徳警官クライン。狂おしく暴走する病んだ魂を悪夢のような文体で描破した異形の傑作。

5位 鉄の枷 :ミネット・ウォルターズ
資産家の老婦人、マチルダ・ギレスピーは、血で濁った浴槽に横たわって死んでいた。睡眠薬を服用した上で手首を切るというのは、よくある自殺の手段である。だが、現場の異様な光景がその解釈に疑問を投げかけていた。野菊や刺草で飾られた禍々しい中世の鉄の拘束具が、死者の頭に被せられていたのだ。これは何を意味するのだろうか?英国推理作家協会ゴールドダガー賞受賞作。

6位 千尋の闇 :ロバート・ゴダード
一九七七年の春、元歴史教師のマーチンは、悪友からの誘いに乗ってポルトガル領マデイラへ気晴らしの旅に出た。思えば、それが岐れ目だった。到着早々、友人の後援者である実業家に招かれた彼は、半世紀以上前に謎めいた失脚を遂げた、ある青年政治家にまつわる奇妙な逸話を聞かされることになったのだから…!稀代の語り部が二重底、三重底の構成で贈る、騙りに満ちた物語。

7位 ラスト・コヨーテ :マイクル・コナリー
ロサンジェルスを襲った大地震は、ボッシュの生活にも多大な影響を与えた。住んでいた家は半壊し、恋人のシルヴィア・ムーアとも自然に別れてしまう。そんななか、ある事件の重要参考人の扱いをめぐるトラブルから、上司のパウンズ警部補につかみかかってしまったボッシュは強制休職処分を受ける。復職の条件である精神分析医とのカウンセリングを続ける彼は、ずっと心の片隅に残っていた自分の母親マージョリー・ロウ殺害事件の謎に取り組むことに。

8位 われらのゲーム :ジョン・ル・カレ
元英国情報部員クランマーのもとに突然警察が訪れた。旧友でかつての部下のラリーが、元KGB工作員と組んでロシア政府から大金を詐取し、失踪したという。しかも、クランマーの愛人エマも同行しているらしい。そのため、警察をはじめ情報部はクランマーが共犯ではないかと疑っていたのだ。苦境に立たされた彼は、自ら二人を追い、真相を探りだそうとするが…現代世界をさまようスパイの魂をサスペンスフルに描く傑作。

9位 原罪 :P・D・ジェイムズ
伝統を誇る名門出版社「ペヴァレル出版」の社長ジェラードの死体が資料室で発見された。彼は何者かに閉じこめられ、ストーヴの不完全燃焼により一酸化炭素中毒を起こしたのだ。しかも、死体の首には蛇のぬいぐるみが巻きつけられ、口には蛇の頭が押しこまれていた。こんな異常な殺人を仕組んだ者は?駆けつけたダルグリッシュ警視長たちは、ジェラードが社長に就任してから社内で不祥事が相次いでいることを知るが。

10位 五匹の赤い鰊 :ドロシー・L・セイヤーズ


1995年

1位 女彫刻家 :ミネット・ウォルターズ
オリーヴ・マーティン―母妹を切り刻み、それをまた人間の形に並べて、台所に血まみれの抽象画を描いた女。無期懲役囚である彼女には当初から謎がつきまとった。凶悪な犯行にも拘らず、精神鑑定の結果は正常。しかも罪を認めて一切の弁護を拒んでいる。わだかまる違和感は、歳月をへて、疑惑の花を咲かせた…本当に彼女の仕業なのか?MWA最優秀長編賞に輝く、戦慄の物語。

2位 少年時代 :ロバート・R・マキャモン
十二歳のあの頃、世界は魔法に満ちていた―1964年、アメリカ南部の小さな町。そこで暮らす少年コーリーが、ある朝殺人事件を目撃したことから始まる冒険の数々。誰もが経験しながらも、大人になって忘れてしまった少年時代のきらめく日々を、みずみずしいノスタルジーで描く成長小説の傑作。日本冒険小説協会大賞受賞作。

3位 有罪答弁 :スコット・トゥロー
妻に逃げられ一人息子は非行に、警官あがりの中年弁護士マックは560万ドルの金と共に行方をくらました変りものの僚友バートの捜索を命じられる。自分を敵と狙う警官時代の元相棒ピッグアイの執拗な妨害をかわし、弁護士らしからぬ手口でバートの家に侵入し、冷蔵庫を開けたマックをにらみ返したのは、脚を曲げた死人だった。

4位 死者との誓い :ローレンス・ブロック
弁護士のグレン・ホルツマンがマンハッタンの路上で殺害された。その直後にホームレスの男が逮捕され、事件は公式には解決する。だが、容疑者の弟がスカダーのもとを訪れ、ほんとうに兄が殺人を犯したのか捜査を依頼してきた。ホルツマン殺害の真相を追うスカダーのまえに、被害者の意外な素顔が浮かびあがってくる…。シリーズ中、最高峰と評されるPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)最優秀長編賞受賞作。

5位 死者の長い列 :ローレンス・ブロック
「マット・スカダー」シリーズの12作目。150年もの長きにわたり、会員の世代交代を繰り返しながら、年に1度の秘密の会合を続ける男たちの集団「三十一人の会」。現在のメンバーになってから32年後、会員の半数近くが相次いでこの世を去っていることが判明。偶然とは思えない死亡率の高さに不審を抱いた会員の依頼を受け、私立探偵スカダーは調査を開始する。

6位 LAコンフィデンシャル :ジェイムズ・エルロイ
悪の坩堝のような50年代のロサンジェルス市警に生きる三人の警官―幼時のトラウマから女に対する暴力を異常に憎むホワイト、辣腕警視だった父をもち、屈折した上昇志向の権化エクスリー、麻薬課勤務をいいことに芸能界や三流ジャーナリズムに食指を伸ばすヴィンセンズ。そこへ彼らの人生を大きく左右する三つの大事件が…。

7位 告解 :ディック・フランシス
彼を殺したことを告白します…枕元にいた映画監督のトマスを神父と誤り、死の間際、老人はそう囁いた。意識が混濁した老人のうわ言だったのか?時を同じくして、26年前の競馬界で起きた変死事件を題材に新作を撮影中のトマスは、何者かからロケを中止しろと脅迫を受ける。老人の告白と脅迫には関係が?トマスは不屈の意志でロケを続けるが、遂に凶刃が彼を襲った!映画界を舞台に放つ、シリーズ屈指のサスペンス。

8位 グリーンリバー・ライジング :ティム・ウィロックス
あらゆる悪が正気を飲み込もうとするグリーンリバー刑務所。完全に秩序を失った囚人たちの暴動は、情夫をめぐる痴情のもつれから始まった。―本当に狂っているのは誰なのか―暴動で仮釈放が霧散した囚人医師は、ぎりぎりの理性をゆるがせながらも、巨漢の精神分裂症患者の「啓示」の声に導かれ、善悪の彼岸を彷徨する…。黙示録的プリズン・サスペンス。

9位 罪の段階 :リチャード・ノース・パタースン
弁護士クリスにテレビ・インタビュアーのメアリから電話が入った。有名作家からレイプされそうになり、誤って射殺したというのだ。かつてクリスと関係を持ったメアリは、その後、息子カーロをもうけたが、別れて長い間没交渉だった。女性弁護士テリーザとともにクリスは正当防衛の線で弁護を引きうけるが、事件には多くの秘密が隠されていた。全米を沸かせた法廷ミステリーの最高傑作。

10位 ブラック・ハート :マイクル・コナリー
11人もの女性をレイプして殺した挙げ句、死に顔に化粧を施すことから“ドールメイカー(人形造り師)”事件と呼ばれた殺人事件から4年―。犯人逮捕の際、ボッシュは容疑者を発砲、殺害したが、彼の妻が夫は無実だったとボッシュを告訴した。ところが裁判開始のその日の朝、警察に真犯人を名乗る男のメモが投入される。そして新たにコンクリート詰めにされたブロンド美女の死体が発見された。その手口はドールメイカー事件と全く同じもの。やはり真犯人は別にいたのか。人気の本格ハードボイルドシリーズ第3弾。

10位 遙か南へ :ロバート・R・マキャモン
はずみで人を殺してしまったヴェトナム帰りのダンは、余命いくばくもない身ながら逃避行に出た。道連れは顔半分に痣のある美少女に、ダンを追う三本腕の賞金稼ぎとプレスリーのそっくりさん。アウトサイダーにされてしまった者たちは、癒しを求めてひたすら南へ向かう。温もりと恐怖が混ざり合う不思議なロード・ノヴェル。


1994年

1位 クリスマスのフロスト :R・D・ウィングフィールド
ロンドンから70マイル。ここ田舎町のデントンでは、もうクリスマスだというのに大小様々な難問が持ちあがる。日曜学校からの帰途、突然姿を消した八歳の少女、銀行の玄関を深夜金梃でこじ開けようとする謎の人物…。続発する難事件を前に、不屈の仕事中毒にして下品きわまる名物警部のフロストが繰り広げる一大奮闘。抜群の構成力と不敵な笑いのセンスが冴える、注目の第一弾。

2位 シンプル・プラン :スコット・スミス
ある雪の日の夕方、借金を苦にして自殺した両親の墓参りに向かうため、ハンク・ミッチェルは兄とその友人とともに町はずれの道を車で走っていた。途中ひょんなことから、彼らは小型飛行機の残骸とパイロットの死体に出くわす。そこには、440万ドルの現金が詰まった袋が隠されていた。何も危険がなく誰にも害が及ばないことを自らに納得させ、3人はその金を保管し、いずれ自分たちで分けるためのごくシンプルな計画をたてた。だがその時から、ハンクの悪夢ははじまっていたのだった。スティーブン・キング絶賛の天性のストーリー・テラー、衝撃のデビュー作。

3位 将軍の娘 :ネルソン・デミル
合衆国陸軍犯罪捜査部、相手が将軍でも逮捕できるこわもて集団。その通称CIDのブレナー准尉が任されたのは、基地司令官の一人娘でエリート美人大尉が手足を杭に縛られ、全裸で絞殺されたという、まさに猟奇事件。相棒のレイプ専門の捜査官サンヒル准尉はかつての恋人だ。N・デミル独壇場のミリタリー・サスペンスの傑作。

3位 秘密の友人 :アンドリュー・クラヴァン
精神科医コンラッドは殺人罪で起訴された少女エリザベスを看ることになった。華奢で息をのむほど美しい彼女だが、ひとたび精神のバランスを失うと、信じられない腕力で人を殺してしまうのだという。エリザベスは、殺人を犯したのは自分ではなく、自分にしか姿の見えない架空の人格「秘密の友人」の仕業なのだと訴える。妄想と現実が交錯する彼女の話に次第に引き込まれていくコンラッド。そんなある日、二人に恐ろしい事件がふりかかる。サイコ・サスペンス第一作。

5位 氷の家 :ミネット・ウォルターズ
邸の氷室は十八世紀に小丘を模して造られた。冷蔵庫の出現にともない保冷庫としての役目を終えていたそこで、不意に死骸が発見される。胴体は何ものかに食い荒らされた、無惨な死骸。はたしてこれは何者か?…ここにはすべてがある。悲嘆も歓喜も、幻滅も信義も。これはまさに人生そのもの、そしてミステリそのもの。ミステリ界に新女王の誕生を告げる、斬新なデビュー長編!CWA最優秀新人賞受賞作。

6位 依頼人 :ジョン・グリシャム
十一歳の少年マークは、自殺寸前の弁護士から、有名な上院議員の死体の隠し場所を聞かされる。その情報はFBIが追い求めていたトップシークレットだった。FBIは秘密を明かせと迫る。だが、そうすればマークも家族もマフィアに狙われることになる。決断を迫られ、悩んだマークは全所持金一ドルで、女性弁護士レジーに弁護を依頼。張りめぐらされた罠や絶体絶命のピンチを二人は逃れることができるのか。グリシャムの最高傑作が、小学館文庫のラインナップに加わり、新登場。

7位 草の根 :スチュアート・ウッズ
米国ジョージア州デラノ。この町の初代警察署長ウィル・ヘンリー・リーは、60年前に非業の死を遂げた…時は移り、彼の孫ウィル・リーが弁護士となって帰郷し、上院議員選挙に打って出る。好事魔多し、ウィルは悪夢のようなレイプ殺人事件の裁判にまきこまれてしまう。選挙をめぐる非情な人間模様を描き切った迫真の傑作長篇。

7位 目は嘘をつく :ジェイン・スタントン・ヒッチコック
わたしは騙し絵画家。人の目を欺く幻影を生みだすのが仕事だ。そのわたしのもとへ、美術品収集家として名高い大富豪の老婦人がやってきた。屋敷の舞踏室に、壁画を描いてほしいのだという。しかし、屋敷でわたしを待っていたのは、十五年前に起きて迷宮入りした殺人事件の、今も消えぬ暗い影だった…読後に強烈な印象を残す、心理サスペンスの新しい傑作。

9位 暗闇の薔薇 :クリスチアナ・ブランド
『スペイン階段』のリヴァイヴァル上映を観た帰り道、サリーは一台の車があとをつけてくるのに気がついた。いったんは無事やりすごせたかに思えたが、折りからの嵐に巨木が倒れ、行く手をふさいでしまう。あせった彼女は、倒木のむこう側でおなじ憂き目にあっていた未知の男性と車を交換、それぞれの目的地をめざすが…。英国の重鎮が華麗に描く、巧緻にして型破りの本格傑作。

9位 スワン・ソング :ロバート・R・マキャモン
ブラム・ストーカー賞最優秀長篇小説賞、日本冒険小説協会大賞受賞。第三次世界大戦勃発。核ミサイルによる炎の柱と放射能の嵐が全土を覆い尽くした。生き延びた人々を待っていたのは、放射能障害、「核の冬」の極寒、そして過去の遺物の争奪…死よりなお凄惨な狂気の世界であった。核戦争後のアメリカ大陸を舞台に繰り広げられる世界再生の鍵を握る少女スワンを巡る聖と邪の闘い。世紀末の黙示録神話を描く「超」大作巨篇。

9位 ナイト・マネジャー :ジョン・ル・カレ
スイスの名門ホテルのナイト・マネジャーであるジョナサンは、ある吹雪の夜、武器商人のローパー一行を迎え、衝撃を受けた。ローパーこそ、彼が愛した女性を死に追いやる元凶となった男だったのだ。やがて、イギリスの情報部から独立した新エージェンシーがジョナサンの存在を知り、ローパーの武器密輸の現場を押さえるべく彼をリクルートした。復讐に燃える彼はローパーに接近していく!巨匠が現代の敵を描破した野心作。


1993年

1位 立証責任 :スコット・トゥロー
三月も終わりに近いある日、出張先のシカゴから帰宅したスターン弁護士は、妻の自殺を発見する。どうして。突然のことに驚きを隠しきれないスターン。妻宛の病院からの請求書も気になる。一方、依頼人である義弟には大陪審から召喚状が届く。真実を探り当てるべく、見慣れた顔に隠された欺瞞をはがす執念の日々が始まった。

2位 森を抜ける道 :コリン・デクスター
休暇中のモース主任警部は宿泊先で『タイムズ』のある見出しに目をとめた。記事によると、警察に謎の詩が届けられ、それには一年前の女子学生失踪事件を解く鍵があるらしい。やがて事件の担当になったモースは、彼女が埋まっていると詩が暗示するワイタムの森の捜索を開始する。だが、そこでは意外な発見が待ち受けていた!一篇の詩から殺人事件の謎へ、華麗な推理が展開する英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞作。

3位 ある詩人への挽歌 :マイクル・イネス
ラナルド・ガスリーはものすごく変わっていたが、どれほど変わっていたかは、キンケイグ村の住人にもよく分かっていなかった…。狂気に近いさもしさの持ち主、エルカニー城主ガスリーが胸壁から墜死した事件の顛末を荒涼とした冬のスコットランドを背景に描くマイクル・イネスの名作。江戸川乱歩は「非常に読みごたえのある重厚な作品」として世界ミステリのベスト5に挙げた。

4位 ストーン・シティ :ミッチェル・スミス
ミッドウェスト大学の教授だったバウマンは、酔っ払い運転で少女を轢き殺したため、二千人の凶悪犯が収容された州立刑務所に服役している。刑期を無事に終えることだけを考えていた彼だが、所内で起きた連続殺人の捜査をする羽目に…。暴力沙汰とドラッグが蔓延するこの世界で、バウマンは果たして真犯人を突き止め、生き残ることができるか?迫真の超大型エンターテインメント。

4位 最後の刑事 :ピーター・ラヴゼイ
湖に浮かんだ女の全裸死体―手がかりのない難事件にバースきっての頑固刑事、ダイヤモンドは俄然張り切った。やがて大学教授ジャックマンが妻の失踪を届け出たため、死体の身元は判明。だが犯人像はつかめず、焦るダイヤモンドは強引な捜査が原因で辞職に追い込まれてしまう…英国ミステリ界の巨匠が、昔ながらの捜査方法を頑なにまもる、誇り高き無骨な刑事の活躍を情趣豊かに描く新シリーズ。アンソニー賞最優秀長篇賞受賞作。

6位 ウォッチャーズ :ディーン・R・クーンツ
森で拾ったその犬には、なにか知性のようなものが、意志に似たものが感じられた。孤独な中年男のトラヴィスは犬に〈アインシュタイン〉と名を与え、半信半疑の対話を試みる。徐々にわかってくる信じがたい事実。それにしても、犬は何を警戒しているのだろう。繁みの陰に、暗闇の奥に、なにか恐るべき“もの”がひそんでいるのか。

7位 獣たちの墓 :ローレンス・ブロック
麻薬密売人キーナンの魅力的な若妻フランシーンが、ブルックリンの街角で誘拐された。キーナンは姿なき犯人の要求に応じて大金を支払う。だが、フランシーンは無惨なバラバラ死体となって送り返されてきた。復讐を誓うキーナンの依頼を受けたスカダーは、常軌を逸した残虐な犯人を追うが…。鬼才ブロックの筆が冴える現代最高のハードボイルド・シリーズ。

8位 音の手がかり :デイヴィッド・ローン
映画撮影中の事故で失明したハリウッドの元音響技師ハーレック。彼の姪のジェイニイが、何者かに誘拐された。彼女はどこにいるのか?犯人からの電話の背後には、電車のブレーキ音や風鈴の音や音楽がかすかに聞こえる。犯人の居場所をたどる唯一の手がかりは、この背後の音のみ。鋭敏な聴覚だけを頼りに、ハーレックが誘拐犯に迫る。シカゴを舞台に展開する異色犯罪ミステリー。

9位 闇に踊れ! :スタンリイ・エリン

10位 遺留品 :パトリシア・コーンウェル
新しいミステリの女王が贈る傑作推理第3弾殺人者は若い恋人たちにしのびより、命を奪い、そしてわずかばかりの手掛かりを残して消えた。「検屍官」、「証拠死体」につづき絶好調の超ベストセラ-候補作。


1992年

1位 検屍官 :パトリシア・コーンウェル
襲われた女性たちは皆、残虐な姿で辱められ、締め殺されていた。バージニアの州都リッチモンドに荒れ狂った連続殺人に、全市が震え上がっていた。犯人検挙どころか、警察は振回されっ放しなのだ。最新の技術を駆使して捜査に加わっている美人検屍官ケイにも魔の手が―。MWA処女作大賞受賞の傑作長編。

2位 嘘、そして沈黙 :デイヴィッド・マーティン
ワシントン郊外の邸宅で、実業家ジョナサン・ガエイタンが血まみれの死体で発見され、自殺と断定された。しかし、捜査にあたったキャメル刑事は、実業家の妻メアリーに秘密の匂いをかぎとった。彼女は前夜、邸宅に侵入した男の存在を隠しているのだ。その殺人狂の男フィリップは近くのモーテルに身をひそめ、次々と陰惨な殺人を引き起こし、事件は意外な展開を見せてゆく―。「『サイコ』『羊たちの沈黙』の伝統を受け継ぎ、新時代を築く傑作!」と絶賛されるD・マーティンのサイコ・スリラー問題作。

3位 骨と沈黙 :レジナルド・ヒル
ダルジール警視は窓から目撃した光景に愕然とした。男が銃を手に女に迫っていたのだ。駆けつけると、女はすでに撃たれて死んでおり、男は銃が暴発したのだと主張した。はたして、事故か殺人か。一方パスコー主任警部は、ダルジールに次々と届く自殺予告の手紙の差出人が誰かを探っていた。内容から今度の事件に関わる人物と思われたが…人間の生と死に潜む謎を鮮烈に描く、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞作。

4位 法律事務所 :ジョン・グリシャム
ハーヴァード・ロースクールを優秀な成績で卒業し、ウォール街の名門法律事務所からの数え切れない就職勧誘書を手にした青年、ミッチ・マクディーア。だが、彼が選んだのはメンフィスにある中堅事務所だった。その理由はただひとつ「お金」。一〇年必死で働けば億万長者。あとはバラ色の人生が待っているはずだった。だがこの事務所では過去に五人の弁護士が非業の死を遂げていた。その謎を追ううちに事務所を背後で操る巨悪の存在を知ったミッチは、やがて悪の組織との対決を迫られる…。

5位 偽りの街 :フィリップ・カー
1936年、ベルリン。オリンピックを間近に控えながらも、ナチ党の独裁に屈し、ユダヤ人への迫害が始まったこの街で、失踪人探しを仕事にするグンターに、鉄鋼王ジクスから調査の依頼が舞い込んだ。ジクスの一人娘とその夫が殺され、高価な首飾りが盗まれたという。グンターはナチ党政府高官だった娘婿の身近を洗い始めるが…。破局の予感に震える街を舞台に描く傑作ハードボイルド。

6位 倒錯の舞踏 :ローレンス・ブロック
スカダーの知人がレンタルしたビデオには、意外にも現実の猟奇殺人の一部始終が収録されていた!だが、その残虐な映像からは、犯人の正体はもとより、被害者の身元も判明しなかった。それからしばらくしてスカダーは、偶然その犯人らしき男を目撃するが…。現代のニューヨークを鮮烈に描くハードボイルド大作。MWA最優秀長篇賞受賞作。

7位 熱い街で死んだ少女 :トマス・H・クック
1963年5月、アラバマ州バーミングハム。ただでさえ暑い町が、マーティン・ルーサー・キング師に率いられる公民権運動デモで煮えたぎっていた。デモの潮が引いたあとの公園に、黒人少女の死体が残されていた。捜査は白人、黒人双方の偏見と猜疑にはばまれて難航する。「だれも知らない女」「過去を失くした女」の著者による傑作。

8位 黄昏にマックの店で :ロス・トーマス
CIAの協力者が未発表の回想録を遺して死んだ。その葬儀の直後から、息子の元刑事グラニーの周囲の状況は急変した。父の愛人、旧友が殺され、CIAと匿名の人物が回想録の買収を申し入れてきたのだ。内幕暴露を恐れる者が暗躍しているらしい。命をも狙われ始めた彼は、回想録を餌に反撃の罠を張るが…虚々実々の駆け引きをスリリングに描く巨匠屈指の傑作。

9位 ダーク・ハーフ :スティーヴン・キング
売れない純文学作家サド・ボーモントには、世間に知られていないもう一つの顔があった。血なまぐさい犯罪小説を書く、ジョージ・スタークなるベストセラー作家の顔が。本来の自分の仕事に専念したくなったサドはある日、すべてを公表し、ペンネームを葬り去ることにする。それがどんな悪夢の幕開けになるかも知らずに…。

10位 マイン :ロバート・R・マキャモン
“ミスター・モジョは起きあがった。あの女はいまも涙を流している…”ローリング・ストーン誌でこんな広告を目にしたとき、“神”からのメッセージだとメアリーは信じた。あの60年代の闘争の日々、リーダーのロード・ジャックは光り輝く“神”だった。その彼が自分を呼んでいる。あのとき彼に捧げることができなかった“供物”を求めて…。


1991年

1位 騙し屋 :フレデリック・フォーサイス
騙し屋とよばれるサム・マクレディは、イギリス秘密情報機関SISのベテラン・エージェント。切れ者で世界各地で敵を欺き、多くの成果をあげてきた。しかし、冷戦は終結し、共産主義は崩壊した。世界情勢は急転したのだ。それは、スパイたちに過酷な運命を強いることになった。マクレディは引退を勧告された。SISの人員整理構想のスケープゴートにされたのだ。マクレディは現役に留まるため、聴聞会の開催を要請した…。世界のフォーサイスが贈る、スパイたちへの鎮魂歌。“最後のスパイ小説”四部作第一弾。

2位 標的 :ディック・フランシス
念願の作家としてスタートを切ったサヴァイヴァルの専門家ケンドルは、有名調教師トレメインの伝記執筆を引き受け、彼の厩舎に赴いた。だが到着早々、行方不明だった女性厩務員の他殺体が発見され、ケンドルは警察に協力を要請される。やがて、容疑者と目された隣人が何者かから謎の呼び出しを受け、ケンドル自身にも犯人の魔手が…サヴァイヴァルのプロがその知識と技量を尽くして立ち向かうことになる非情の罠とは。

3位 IT :スティーヴン・キング
少年の日に体験した恐怖の正体は。二十七年後、故郷の町でIT(それ)と対決する七人。

4位 8 エイト :キャサリン・ネヴィル
革命の嵐吹きすさぶ18世紀末のフランス。存亡の危機にたつ修道院では、宇宙を動かすほどの力を秘めているという伝説のチェス・セット「モングラン・サーヴィス」を守るため、修道女たちが駒を手に旅にでた。世界じゅうに散逸した駒を求め、時を超えた壮絶な争奪戦が繰り広げられる!壮大かつスリリングな冒険ファンタジー。

5位 悪魔が目をとじるまで :デイヴィッド・L・リンジー
父親譲りの刑事魂を持つパーマは、殺人課には珍しい女性刑事。悲惨な死体を見慣れている彼女も、今度ばかりは息を呑んだ。念入りな化粧、縛られた手足、全身に拡がる噛み痕、そして何とまぶたが切り取られている。同様の事件が続き、この種の犯罪の専門家、FBI分析官のグラントと協力して、パーマはヒューストンの上流階級に秘かにはびこる病巣に、足を踏み入れることになった。

5位 オックスフォード運河の殺人 :コリン・デクスター
モース主任警部は不摂生がたたって入院生活を余儀なくされることになった。気晴らしに、彼はヴィクトリア朝時代の殺人事件を扱った研究書『オックスフォード運河の殺人』を手に取った。19世紀に一人旅の女性を殺した罪で二人の船員が死刑となったと書かれていたが、読み進むうちモースの頭にいくつもの疑問が浮かび…歴史ミステリの名作『時の娘』を髣髴させる設定で贈る、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞作。

7位 悪夢のバカンス :シャーリー・コンラン
アラフラ海に浮かぶリゾート・アイランド、パウイ。アメリカの鉱山会社ネクサスの最高幹部は、毎年恒例のバカンスに、夫人同伴でこの地を訪れた。が、政情不安なこの島にクーデターが発生、重役たちは射殺され、それを目撃した妻たち5人は、未開のジャングルに逃げ込んだ―。上流階級の女たちは、未開のジャングルで生き残ることができるか?迫真の大型サバイバル・ストーリー。

7位 売国奴の持参金 :フレデリック・フォーサイス
引退を勧告されたマクレディの聴聞会が再開された。ソ連軍将校団がイギリス軍の演習に招待された時のことだ。演習は、それぞれの思惑を秘めながらも穏やかに進んでいた。ところが一人のソ連将校が逃亡し、アメリカへの亡命を申し入れた。彼の正体はKGB大佐。アメリカは亡命を受け入れた。亡命者は多くの情報をもたらした。CIAはその情報の裏付けをとり、彼を信用し始めていた。だが、マクレディは何か腑に落ちなかった。亡命者の真意は何なのか、スパイ対スパイの息詰まる駆け引きが始まる―。“最後のスパイ小説”マクレディ・シリーズ四部作第二弾。

9位 幻の終わり :キース・ピータースン
マンハッタンにその年最初の雪が舞った夜、ウェルズは一人の著名な海外通信員に出会った。何やら奇妙な連帯感を覚えたあげく、ホテルまでつきあい、つぶれるまで呑んだが、翌朝、相手は謎の闖入者の手で殺されてしまう。酩酊して耳にしたエレノアという名を手がかりに、通信員の過去に分け入る敏腕記者ウェルズ―。彼が見た、愛と裏切りの記憶とは?傑作ハードボイルド第二弾!

10位 ロセンデール家の嵐 :バーナード・コーンウェル
ひさしぶりに帰郷した伯爵ジョン・ロセンデールは、ヴァンゴッホ初期の《ひまわり》を探そうとしていた。四年前、この名画は母が売却する直前に盗まれてしまった。その犯人であると疑われたジョンは、海を放浪する旅へと逃げだしたのだ。だが母亡きあと、障害をもつ下の妹の面倒をみるために、行方不明の絵を見つけださねばならない。そう決心したジョンは何者かに命を狙われる羽目に。日本冒険小説協会大賞受賞の傑作。


1990年

1位 薔薇の名前 :ウンベルト・エーコ
迷宮構造をもつ文書館を備えた、中世北イタリアの僧院で「ヨハネの黙示録」に従った連続殺人事件が。バスカヴィルのウィリアム修道士が事件の陰には一冊の書物の存在があることを探り出したが…。精緻な推理小説の中に碩学エーコがしかけた知のたくらみ。

2位 ブラック・ダリア :ジェイムズ・エルロイ
1947年1月15日、ロス市内の空地で若い女性の惨殺死体が発見された。スターの座に憧れて都会に引き寄せられた女性を待つ、ひとつの回答だった。漆黒の髪にいつも黒ずくめのドレス、だれもが知っていて、だれも知らない女。いつしか事件は〈ブラック・ダリア事件〉と呼ばれるようになった―。“ロス暗黒史”4部作の、その1。

3位 神が忘れた町 :ロス・トーマス
何者かの罠に落ち、無実の罪で服役していた元最高裁判事のアデアは、釈放の日に獄中で命を狙われた。自分の首に二万ドルの賞金が懸かっていることを知った彼は、隠れ家を提供するビジネスを行なっているカリフォルニアの小さな町に元弁護士の男と共に逃れる。そして、姿なき敵に復讐する策を練り始めるが、彼の周囲で次々と殺人が…急逝した巨匠の代表作。

3位 ミザリー :スティーヴン・キング
雪道の自動車事故で半身不随になった流行作家のポール・シェルダン。元看護師の愛読者、アニーに助けられて一安心と思いきや、彼女に監禁され、自分ひとりのために作品を書けと脅迫される―。キング自身の体験に根ざす“ファン心理の恐ろしさ”を極限まで追求した傑作。のちにロブ・ライナー監督で映画化。

5位 虎の眼 :ウィルバー・スミス
モザンビーク沖の小さな島国セント・メアリー。かつてはヤバい渡世をしていたハリーも、いまはおとなしく優雅な愛艇を操ってチャーター船業にいそしんでいる。ある日、怪しげな雰囲気の二人組が現われ、危険な岩礁の島へ案内させて海中から何かを引き揚げる。この謎の品物は何なのか?息つくひまもない危機と冒険の連続。

5位 ロシア・ハウス :ジョン・ル・カレ
ペレストロイカが進むモスクワで開催された英国主催のオーディオ・フェア。出版セールスマンのランダウは、会場でソ連の女性編集者カーチャから、国内では出版できない作家の原稿だという三冊のノートを託された。持ち帰ってノートをひらいてみたランダウは驚愕した。そこには、ソ連のミサイル・システムの欠陥が暴路されていたのだ。帰国したランダウは出版社社主であるバーリーことスコット・ブレアを捜したが、酒とジャズ三昧の日々を送るバーリーの行方は杳として知れない。ついに、ノートは英国情報部に持ちこまれ、事の重大さに部内は色めきたった。謎の作家とは誰か?情報は本物なのか?ペレストロカイ時代のスパイ小説。

7位 カロライナの殺人者 :デイヴィッド・スタウト
たった14歳の少年が電気椅子に送られた。衝撃のミステリ。アメリカ探偵作家クラブ最優秀処女長篇賞受賞。

7位 策謀と欲望 :P・D・ジェイムズ
ダルグリッシュ警視長は、原子力発電所の聳える海沿いの村を休暇で訪れた。その村では最近、女性ばかりを狙う連続絞殺魔が暗い影を落としていた。ダルグリッシュが発電所所長宅の夕食会に招かれた夜、発電所の職員が帰宅途中に絞殺されるという事件が起きた。住民の恐怖が高まるなか、ダルグリッシュは海岸で女性幹部ヒラリーの他殺体を発見する。手口から新たな犠牲者と思われたが、事件の前に絞殺魔は自殺していた…。

9位 だれも知らない女 :トマス・H・クック
死体となっても、彼女はなおかつ美しかった。南部の都市アトランタ、空地の夏草のかげで発見された若い女性はだれなのか?なぜ殺されたのか?市警殺人課のフランク・クレモンズの心に、その女のことがこびりついて離れない。不思議なのは、これほど人目をひく美女なのに、だれも知らないことだ。興趣つきない犯罪都市小説。

10位 直線 :ディック・フランシス
騎手デリックは、急死した兄から準宝石の輸入会社をはじめ全資産を受け継いだ。が、兄が買いつけた大量のダイヤが消えていた。慣れない宝石業界で苦闘しながらダイヤの行方を追う中で、彼は疎遠だった兄の意外な面を発見していく。優れた鑑定人だったこと、騎手である弟を自慢していたこと、そして愛人…だが、今度は彼自身の命が狙われた。熱くこみあげる兄への惜別の思いを胸に、悪辣な敵に挑む青年の孤独な闘い。


1989年

1位 ネゴシエイター :フレデリック・フォーサイス
石油資源は確実にあと数年で涸渇する―モスクワとヒューストンで、二人の男がその不吉な予見に怯えていた。彼らの不安に追い討ちをかけるのが米ソの大幅な兵器削減条約であった。もし批准されれば軍と産業界の一部にとって痛烈な打撃となる。二人の男、ソ連国防軍参謀長と、テキサスの石油王は、それぞれ独自の方法で密かに行動を開始した。その頃、合衆国大統領子息が何者かに拉致されるという事件が発生した。モスクワとヒューストンでめばえた陰謀が、スペインの田舎町に引退したはずの交渉人を人質解放の任務へと引きもどすことになる。

2位 羊たちの沈黙 :トマス・ハリス
獲物の皮を剥ぐことから“バッファロウ・ビル”と呼ばれる連続女性誘拐殺人犯が跳梁する。要員不足に悩まされるFBIが白羽の矢を立てたのは訓練生クラリス・スターリング。彼女は捜査に助言を得るべく、患者を次々に殺害して精神異常犯罪者用病院に拘禁されている医学博士ハンニバル・レクターと対面するが―。1980年代末からサスペンス/スリラーの潮流を支配する“悪の金字塔”。新訳。

3位 殺人劇場 :ジョナサン・ケラーマン
エルサレムの丘でアラブ人らしい少女の全裸死体が見つかった。切り刻まれ、入念に洗い浄められて。一週間後、同じように、もうひとりの少女が殺された。辣腕警部シャラヴィと4人の部下は、全く手掛りを残さないこの犯人を、執拗果敢に追いかける。だが第三の犠牲者が―。想像を絶する異様な変質者の心理と、個性豊かな5人の刑事の艱難辛苦を、重厚な筆致で描いたサスペンス大作。

3位 古い骨 :アーロン・エルキンズ
レジスタンスの英雄だった老富豪が、北フランスの館に親族を呼び寄せた矢先に不慮の死を遂げた。数日後、館の地下室から、第二次大戦中のものと思われる人骨の一部が発見される。フランスを訪問中だった人類学教授ギデオン・オリヴァーは、警察に依頼され人骨を調べ始めるが、今度は親族の一人が毒殺された!骨を手がかりに謎を解く、スケルトン探偵オリヴァーの名推理。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

5位 暗殺者を愛した女 :ブライアン・フリーマントル
KGBの辣腕の暗殺者コズロフが、在日アメリカ大使館勤務のCIA部員に亡命を求めてきた。それは、コズロフ自身はアメリカへ、その妻イレーナは英国へ、という奇妙な申し出だった。英国情報部に復帰はしたものの辛気くさいデスクワークにうんざりしていたチャーリーは、さっそく東京へ飛び、アメリカとの共同作戦を開始したが…。日本を舞台に展開する虚々実々の亡命作戦。

6位 誓約 :ネルソン・デミル
「きみの名前が出ている」隣人に示された一冊の本、ヴェトナム戦時の米軍の残虐行為をあばくものだった。このときから元陸軍中尉ベン・タイスンの戦後生活は音立てて崩れた。マスコミ、近隣の白い眼。しかし、真実は固く胸に秘さねばならぬ。なぜなら、掩蔽壕の闇のなかでなされた“誓約”が彼に“名誉の沈黙”を強いるからだ。

6位 フリーキー・ディーキー :エルモア・レナード
爆弾処理班づとめがいやになったが、さりとて性犯罪課へ行くのも気がすすまず、休職扱いに甘んじているデトロイト市警の刑事。日がな一日プールに浮かんでいるばかり、レイプで訴えられるや、当の女性に求婚してしまう大金持ち。元ブラック・パンサーの運転手やら、反戦の60年代の尻尾を引きずる爆破狂―レナードの世界におなじみの、どこかタガのはずれた男と女が、ダイナマイトの爆発音にのって踊る“欲望のダンス”。「グリッツ」「パンディッツ」につづく、エルモア・レナード88年のベストセラー。

8位 愛国者のゲーム :トム・クランシー
「レッド・オクトーバーを追え」の颯爽たるCIA分析官ジャック・ライアンは、かつて海軍兵学校教官だった。ロンドンでの休暇中IRAの分派ULAのテロ事件に遭遇し、重傷を負いながらも英国皇太子夫妻を救う。が、これは発端にすぎなかった。帰国した彼を待ち受けていたのは…。軍事スリラーの第一人者が国際テロを描く迫真の巨篇。

8位 殺意の団欒 :ジェームズ・アンダースン
シルヴィアが夫を殺そうと決心したのは、ある水曜日のことだった。ところで彼女は知らなかったが、夫のエドガーは火曜日、すでに妻を殺す決意を固めていたのだった。イギリスの田舎町からさらに林に分け入ったところに建つ樅の木荘。その売却問題から夫と妻の永遠のテーマが燃えあがった。プロットの妙と洒落た味の傑作。

10位 闇の奥へ :クレイグ・トーマス
SIS長官ケネス・オーブリーは二年ほど前からKGB副議長カプースティンとヨーロッパ各地で秘密裡に接触を重ねていた。カプースティンから亡命の希望がよせられ、二人はその条件や手はずを話し合っていたのだ。接触は組織を離れた個人的なもので、カプースティンはつねに独り、オーブリーのほうも工作員のハイドを随行させただけだった。ところが、話も煮詰まった冬のウィーンでの接触で、KGBの副議長は不意に亡命の意志を翻した。その直後、オーブリーはソ連のスパイとしてバビントン率いるM15に逮捕されてしまう。〈涙のしずく〉というコードネームを持つソ連のスパイである、というのが彼に着せられた容疑だった。あやういところで、逮捕をまぬがれた部下のハイドは、敵味方の両組織から命をねらわれながら、オーブリー逮捕の手懸りを求め、救出にのりだした。


1988年

1位 推定無罪 :スコット・トゥロー
アメリカ中部の大都市、地方検事を選ぶ選挙戦のさなかに、美人検事補が自宅で全裸の絞殺死体となって発見された。変質者によるレイプか、怨みが動機か、捜査に乗りだしたサビッチ主席検事補は、実は被害者と愛人関係にあった間柄、容疑が次第に自分に向けられてくるのを知って驚く―。現職検事補による世界的ベストセラー。

2位 夢果つる街 :トレヴェニアン
吹き溜まりの街、ザ・メイン。いろんな人間たちが破れた夢を抱えて生きている。ラポワント警部補は毎日パトロールを欠かさない。ここは彼の街であり、彼が街の“法律”なのだ。そしてラポワントにも潰えた夢があった…。それは奇妙な死体だった。胸を一突きされて、祈るような格好で路地にうずくまっていた。イタリア系らしい若い男だった。街を知りつくしたラポワントは、難なく最初の手がかりをつかんだ。だがやがて浮かびあがるのはまったく意外な犯人、そしてそこにも街の悲しい過去があるのだった―。

3位 亡命者はモスクワをめざす :ブライアン・フリーマントル
腕は抜群だが星まわりの悪いチャーリーは、ついに、国家への反逆者として懲役14年の刑を宣告されるはめとなった。囚人仲間にいびられながら鬱々として刑務所暮らしに耐えるチャーリー。そこへ英国情報部の工作員サンプソンが投獄されてきた。彼はある日、チャーリーに驚くべき計画をうち明けた…。またもやチャーリーの孤独な闘いが始まる。果たして生きのびることは出来るか?

4位 死の味 :P・D・ジェイムズ
教会の聖具室で血溜まりの中に横たわる二つの死体は、喉を切り裂かれた浮浪者ハリーと元国務大臣のポール・ベロウン卿だった。二人の取り合わせも奇妙だが、死の直前の卿の行動も不可解だった。突然の辞表提出、教会に宿を求めたこと…卿は一体何を考えていたのか?彼の生前の行動を探るため、ダルグリッシュ警視長は名門ベロウン家に足を踏み入れる。重厚な筆致で人間心理を巧みに描く、英国推理作家協会賞受賞作。

5位 夜の闇の中へ :コーネル・ウールリッチ著、ローレンス・ブロック補綴
拳銃自殺を図って失敗したマデリンは、偶然に殺してしまった若い娘の身代りとなって生きることを決意し、娘の過去をさぐっていく…。サスペンス派の巨匠ウールリッチが1968年に他界したとき、四本の未完原稿が発見された。そのうちの一つが本書で、このいかにもウールリッチらしい憎悪と情熱、愛と復讐の物語を、現代ミステリの人気作家ローレンス・ブロックが失われていた冒頭と結末部分を補って完成させ、ついに1987年に出版の運びとなり、話題をよんだ。傑作の呼び声高い幻の遺作長篇の登場である。

6位 アムトラック66列車強奪 :クリストファー・ハイド
アムトラックの車両清掃員として、シラけた日々を操車場で送るハリー・マクスウェルは、沈滞を吹きとばす一世一代の大博奕を思いついた。新造貨幣3500万ドルを運ぶ財務省の輸送車両の襲撃だ。仲間を得、綿密な計画の成就せんとするまさにそのとき、列車がテロリスト〈世界人民軍〉にハイジャックされていることを知ったのだった。

6位 透明人間の告白 :H・F・セイント
三十四歳の平凡な証券アナリスト、ニックは、科学研究所の事故に巻き込まれ、透明人間になってしまう。透明な体で食物を食べるとどうなる?会社勤めはどうする?生活費は?次々に直面する難問に加え、秘密情報機関に追跡される事態に…“本の雑誌が選ぶ30年間のベスト30”第1位に輝いた不朽の名作。

6位 引き攣る肉 :ルース・レンデル
ヴィクターには或る恐怖症があった。14年の刑期を終えて出所した今、彼はその恐怖の因となるものをいずれ目にすることを予測していた。彼のもう一つの関心は、フリートウッドという元刑事のことだった。ヴィクターは女を襲って追われる途中、フリートウッドを銃で撃ち、逮捕されたのだ。彼は半身不髄となったが、クレアという恋人と幸福に暮しているという。不思議な運命の糸に操られたかのように、ヴィクターは彼らと出会った。クレアを含む3人の間に生じた奇妙で、危険な関係、それがやがて恐るべき破局を生むことになるのだが…。CWA賞受賞の傑作。

9位 黄金 :ディック・フランシス
アマチュア騎手のイアンは、絶縁状態がつづいていた父のマルカムから、突然連絡を受けた。五番目の妻が何者かに殺され、父自身も命を狙われているというのだ。犯人は巨額な遺産を狙う親族のなかにいるのではないかと、危惧しているらしい。わだかまりを残しながらも、イアンは父の護衛を引き受け、ひそかに犯人探しに乗りだすが…。遺産相続をめぐる醜悪な争いと親子の葛藤を、巧みなストーリー展開で描くシリーズ会心作。

10位 狐たちの夜 :ジャック・ヒギンズ
ノルマンディ上陸作戦前夜、Dデイの最高機密を握る連合軍将校が演習中に行方不明となった。やがて、彼がナチ占領下のジヤージイ島に漂着したことが判明した。機密漏洩を恐れる連合軍首脳部は、英国陸軍大佐マーティノゥと島出身の女性セアラを救出に差し向ける。だが、身分を偽装して島へ潜入した二人を待っていたのは、驚くべき謀略を心に秘めた“砂漠の狐”ロンメル元帥との出会いだった。著者会心の戦争冒険小説。

10位 二度殺された女 :ドロシー・ユーナック
ニューヨークの中流住宅街の路上で看護婦が殺された。犯罪コラムニストのスタインと女刑事ミランダはことを目撃した住民の一人ひとりを調査していくが、そこには意外な事実が隠されていた。キャリア復活に賭けるスタインと妥協を知らぬミランダが追う、都会生活者の心の死角が生んだ犯罪―。警察小説の第一人者による傑作。


1987年

1位 レッド・ストーム作戦発動 :トム・クランシー
シベリア西部の油田・石油精製施設がイスラム教徒の襲撃で潰滅的打撃を受けた。ソ連が経済・軍事面での力を維持するにはペルシャ湾沿岸の油田を押えるしかない。それにはNATO軍が邪魔だ。かくして党政治局はNATO軍への奇襲と謀略活動を計画する。―現代戦の実相を描いて前作『レッド・オクトーバーを追え』を凌ぐ超大作。

2位 眠れる犬 :ディック・ロクティ
セレンディピティ・ダールクィスト。通称セーラ。14歳の彼女は、女優の祖母とロスで2人暮らしだった。退屈な毎日が続いていたが、ある日彼女の愛犬グルーチョが失踪、セーラは警察へ届けでた。だが、警官が相手にしてくれるはずもなく、冗談半分に紹介されたのが42歳の私立探偵レオ・ブラッドワースだった。そしてこの時から14歳の“わけのわからない小娘”と42歳の“つまんないことばっかりいってる中年”探偵の奇妙な道中が始まった。反発しあいながら、互いを助けあってグルーチョを捜す旅を続ける2人。だが、この愛犬失踪の陰にはマフィアがらみの恐るべき謀略の罠が張り巡らされていたのだ。現代ロサンゼルスを舞台に、軽妙なユーモアをまじえて新鋭が放つ傑作ハードボイルド。86年ネロ・ウルフ賞受賞作。

3位 ヴァチカンからの暗殺者 :A・J・クィネル
韓国訪問を予定しているローマ法王を密かにKGBが狙っている―。法王を守るためその側近たちが出した結論は、アンドロポフ書記長暗殺だった。〈法王の使者〉として選ばれた男は、亡命したポーランド秘密保安機関のエリート少佐。妻を装った若く美しい修道女を道連れに、クレムリンへの長く危険な旅が始まる!大胆な構想で展開する、息もつかせぬポリティカル・サスペンス。

3位 刑事の誇り :マイクル・Z・リューイン
万年夜勤刑事から失踪人課の長へと変ったパウダー警部補だが、状況の悪さはそう変らない。公私ともに山積する難問に、不屈の熟年刑事パウダーは真正面からぶち当る!『夜勤刑事』で鮮烈な長篇デビューを飾った信念の男リーロイ・パウダーが新天地で見せる活躍!実力派リューインが、警察小説に新風を吹き込む、注目のシリーズ第2弾。

5位 苦い林檎酒 :ピーター・ラヴゼイ

5位 パーフェクト・スパイ :ジョン・ル・カレ
二重スパイの疑いをかけられていた英情報部員ピムが、謎の失踪をとげた―ル・カレの最高作と評される話題のベストセラー、待望の邦訳。

7位 ストライク・スリーで殺される :リチャード・ローゼン
30を過ぎた外野手ハーヴェイは突如レット・ソックスをおはらい箱になり、新設チーム、ジューエルズの支配下選手となった。その上、このうすのろチームの成績にさらにダメージを与えるかのような事件が持ち上がった。よりにもよって試合前のロッカー・ルームで、3000ドルの大金とともにリリーフ・エースの他殺体が見つかったのだ。事件に首を突っ込んでいくハーヴェイは、何者かに脅迫を受ける―今度はおまえの番だ!発表と同時に全米各紙誌が驚き絶賛した大型新人の本格スポーツ・ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ最優秀処女長篇賞受賞作。

8位 最後に笑った男 :ブライアン・フリーマントル
西ドイツの民間会社が中央アフリカのチャドに、第三国へ貸与するためのスパイ衛星基地を建設した。情報を得たCIA長官ピーターソンは現地で工作を開始するがことごとく失敗。同じころ、あいつぐ工作員の死にKGB議長ペトロフも焦躁を深めていた。このまま事態を放置すれば、世界情勢に重大な変化が及びかねない。CIAとKGBはついに、協同で妨害工作に当たることを決意する。

9位 長く孤独な狙撃 :パトリック・ルエル
ジェイスミスの驚きは大きかった。目の前に現れたブライアントという老弁護士は、一週間前、彼がM21狙撃銃で狙った男だったのだ!名うての殺し屋ジェイスミスが仕事を仕損じたのは、今回のブライアント暗殺がはじめてだった。視力が衰えたのか?彼は雇主ジェイコブに対して一方的に引退を宣言し、過去を捨ててひっそりと暮そうとあるコッテージを買った。購入したのは、コッテージの持主の姪、美しい未亡人アーニャの存在のためでもあった。そして、紹介された彼女の父がブライアントだったのだ。ジェイスミスは心に衝撃を受けながらも、詩人ワーズワースが愛したこの湖水地方でのアーニャとの暮しを夢見るが…風光明媚な湖水地方に繰り広げられる死闘、燃え上がる恋、彩りを添える美しい風景描写―イギリス・ミステリ界の鬼才が別名義で贈る傑作昌険サスペンス!

10位 噛みついた女 :デイヴィッド・L・リンジー
巡回中のパトカーの前に、突然女が飛び出した。倒れた彼女を助け起そうとした警官は、思わず悲鳴をあげた。女が頬に噛みついたのだ!二人がかりでやっと押えつけた時、女は痙攣し息絶えた。彼女は名を知られた高級娼婦だったが、続いて三人もの娼婦が不審死を逐げ、ヒューストン警察の捜査はまったく行き詰ってしまった―。不気味で特異な犯人像を描くサイコ・スリラー。


1986年

1位 グリッツ :エルモア・レナード
プエルト・リコで休暇中なのに、だれもモーラ警部を休ませてくれない。ケチな復讎魔に尾けまわされ、女友達が不審な墜落死をしたとの報もほってはおけない。早速事故のあった安ピカの街アトランティック・シティに飛ぶと…。読みだしたらやめられない不思議な魅力をもつ文体で“レナード・タッチ”の名を高からしめた代表作。

2位 女刑事の死 :ロス・トーマス
八月の熱気の中、女刑事が自動車に乗り込んだ瞬間、爆炎があがった―刑事だった妹が、非業の死を遂げた。上院の調査監視分科委員会で働く兄のベンジャミンは、真相を探るために帰郷する。だが分科委員会から受けた密命を遂行せねばならず、思うように真相究明はならない。やがて謎に満ちた妹の私生活が徐々にあきらかになるが…。サスペンスの巨匠の醍醐味を詰め込んだ、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

3位 消えた女 :マイクル・Z・リューイン
依頼人の女は真夜中に連絡してきた。短い電話だった。調査はこれで打切りにしたい。これ以上続けても金の無駄づかいでしかない―女はそれだけ言って電話を切った。アルバート・サムスンの胸に割りきれない思いを残したまま、女は消えてしまった…エリザベス・ステットラーと名乗る女の依頼は、2カ月前インディアナポリス近郊の町ナッシュビルから姿を消した友人プリシラ・ピンの行方を探してくれというものだった。町の住人たちは、彼女と同時にいなくなった町の実業家ビリー・ボイドと駆落ちしたものと考えていた。夫のフランクから捜索願いが提出され、家から小金を持ち出したことで逮捕状まで出ていた。ビリーはとかく女性問題を取りざたされている人物で、彼が広大な土地を相続する結果となった、都合のよい母親の急死についてもよからぬ噂が立っていた。調査が進むにつれ、サムスンの胸にいくつかの小さな疑問が芽ばえた。しかし依頼人がいなくては、それ以上追求するすべもなかった。だが三カ月後、ナッシュビル近くの森の中でビリーの死体が発見されるにいたるや、サムスンはやむにやまれず事件に再度首を突っこむことになったが…?精緻なプロット、いぶし銀の光を放つユーモア―『沈黙のセールスマン』『A型の女』などで現代私立探偵小説の最高水準と評される珠玉のシリーズ第5弾。

3位 レッド・オクトーバーを追え :トム・クランシー
処女航海で乗っ取られ、亡命の途についたソ連新型原潜をめぐり大西洋上に展開される米英ソの争奪戦!現代戦のハイ・テクのすべてを盛りこんだ海洋軍事冒険小説。

3位 レッド・フォックス消ゆ :アンソニー・ハイド
20年前の恋人からの電報が発端で、フリー・ジャーナリストのロバート・ソーンは、元恋人の父親・カナダの毛皮商人の失踪事件の謎に巻きこまれてゆく。手がかりを追ってヨーロッパ各地からレニングラードに至る捜査行は、同時に歴史の暗部をさかのぼる旅となる。新たなる謎と意外な真相で息もつかせぬ傑作スパイ・ミステリー。

6位 すげ替えられた首 :ウィリアム・ベイヤー
酷暑にあえぐ8月のニューヨーク。マンハッタンの東と西で、女性教師とコールガールが同時に、それぞれの自室で死体となって発見された。だが、驚くべきことに、二人の生首はおたがいにすげ替えられていた―。あまりに常軌を逸した犯罪に、捜査は難行する。ユダヤ系移民の初老の警部補ジャネックはこの巨大な都市、人間の欲望が歪み、きしみあうこのニューヨークの裏側に踏み込んでいく。エアロビクスのインストラクター、写真家、スプラッター映画の監督、コールガール組織―。ジャネックと若手女流写真家キャロラインとの心の交流を、サブストーリーとして、描き出される都会の現在。現代の異常さを、犯罪者の心の奥底にまで迫って描ききったこの作品のなかには、どこよりも危険で、どこよりも熱い大都会ニューヨークの魔性がつかみとられている。

7位 大きな枝が折れる時 :ジョナサン・ケラーマン
陽光あふれる、〈地上の楽園〉南カリフォルニア、ロスアンジェルス。しかし、繁栄を謳歌するその社会の裏側は頽廃に満ち満ちている―。小児専門の精神医という激務からリタイアした33歳の「ぼく」、アレックス・デラウェアのもとに、親友の刑事マイロから、殺人事件の捜査協力が持ち込まれた。サンセット・ブルヴァードの高級アパートメントで精神科医と女が惨殺されたのだ。目撃していたはずの少女は怯えて証言しようとしない。アレックスと刑事マイロが探る、殺された男の意外な過去は、周囲の人々の呪われた部分をも暴き出していく―。ハードボイドの正統、ロス・マクドナルドの伝統を受け継ぐ大型人新ジョナサン・ケラーマンが89年度アメリカ探偵小説クラブ最優秀処女長編賞を受賞した衝撃的デビュー作。

7位 ロシア皇帝の密約 :ジェフリー・アーチャー
1867年、アメリカはロシアからベーリング海沿いの土地を買いとった。皇帝ニコライ2世は、革命の際、その条約書をある額の裏に隠して西側に送り、身の安全を図ろうとした。条約には、実は、買戻しの条項があったのだ。1966年、元英陸軍スコット大尉は、無実の罪を着たまま死んだ父から、「皇帝のイコン」と呼ばれる名画を遺された。遺産を受けとりに出かけた彼を待っていたのは―。

9位 樹海戦線 :J・C・ポロック
プロ対プロの死闘! 重大な秘密を握る元グリーンベレー隊員に暗殺者の魔手が迫る。傑作アクション巨篇。

9位 源にふれろ :ケム・ナン
砂漠で生まれ育ったチビのアイクは、陽光あふれるカリフォルニアにひとりやってきた。家出した姉エレンを連れ去った謎の不良たちを捜すために。暴走族のボスに助けをかりたアイクは、モンスターウェーブさえものともしないカリスマ・サーファーのグループに姉との接点を探り当てるが…セックスと麻薬にまみれた海辺の街で少年は大人になるための暗く切ない一夏を体験する。サーフィン青春小説のオールタイム・ベスト。


1985年

1位 ハメット :ジョー・ゴアズ
1928年、サンフランシスコ。ピンカートン探偵社を辞め、作家として糊口をしのいでいるダシール・ハメットのもとに昔の同僚がやってきた。腐敗した市政浄化のための調査に力を貸してほしいというのだが、その直後、彼は無残な死体となって発見される。はたして街を牛耳るギャングの仕業か?旧友殺しの犯人探しに乗り出したハメットの前に、やがて妖しい女の影が…伝説の作家を探偵役に据えたファン垂涎のハードボイルド。

2位 ダンシング・ベア :ジェイムズ・クラムリー
十一月になると、ここ西部にも万物が凍てつく冬の足音が聞こえてくる。吹きすさぶ風が運んできたかのように、私のもとに一通の手紙が舞いこんだ。死んだ父親の愛人からで、密会を続ける謎の男女の目的を探ってほしいという。好奇心も手伝って、私はその男女を追い始めたが、やがて思いもよらぬ殺人事件の渦中に。『酔いどれの誇り』に続き、大西部の雄大な自然に抱かれて生きる探偵ミロの姿を詩情豊かに描き出した感動作。

3位 血の絆 :A・J・クィネル

4位 恐怖の誕生パーティ :ウィリアム・カッツ

5位 大統領失明す :ウィリアム・サファイア

5位 殺人詩篇 :ウィル・ハリス

5位 荒野の絞首人 :ルース・レンデル
風になびく苔桃やヒースの茂み。靄のヴェールをかぶった小高い山々。この荒涼たる原野がスティーヴンの恋人だった。その荒野で金髪を刈りとられた女の死体が…。彼の原野を侵す者は誰か?

5位 「禍いの荷を負う男」亭の殺人 :マーサ・グライムズ
イギリス小村のパブが舞台の奇怪な連続殺人事件。ロンドン警視庁派遣のジュリー警部が地元の有閑貴族やお節介やきの老婦人とからみつつ解決する、興趣満点の佳品。

9位 狂気のモザイク :ロバート・ラドラム

10位 刑事コワルスキーの夏 :テリー・ホワイト


1984年

1位 復讐法廷 :ヘンリー・デンカー
その時、法は悪に味方した。娘を強姦・殺害した男が法の抜け穴を突き、放免されたのだ。父親は憎むべきその男を白昼の路上で射殺し復讐を遂げるが、自首した彼に有罪判決が下ることは確実―しかし、信念に燃える少壮の弁護士ゴードンはこの父親を救うべく勝ち目のない裁判に挑む!規範と同情の狭間で葛藤する陪審員たちは、いかなる決断を下すのか。法と正義の相克を鋭く描き切ったリーガル・サスペンスの先駆的傑作。

1位 第四の核 :フレデリック・フォーサイス
〓イギリスに革命の可能性あり〓その分析がソ連書記長の決断を促した。4人の男が秘かに私邸に招かれ、極秘作戦の検討に取りかかった。イギリスを直接のターゲットとし、世界の勢力図を一気に塗りかえることを狙った超ウルトラ作戦である。プランは完成した。成功すれば西側世界に壊滅的な打撃を与えるこの作戦は「オーロラ」と名づけられ、ただちに最初のKGB工作員がイギリス潜入の途についた。

3位 警察署長 :スチュアート・ウッズ
1920年冬、ジョージア州の田舎町デラノの郊外で若者の全裸死体が発見された。就任間もない初代警察署長ウィル・ヘンリー・リーは、秘密結社K・K・Kの犯行と見て捜査を開始する。だが、検視の結果判明したのは、死体が警察関係者の手によって尋問された形跡があるという事実だった。一体、犯人は何者なのか?調査の末、やがて意外な人物が浮かびあがるが、そのときウィル・ヘンリーを思わぬ事件が襲った!南部の小都市を舞台に、40数年に及ぶ殺人事件を多彩な登場人物を配して描く大河警察小説。アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞受賞作。

4位 暗殺者 :ロバート・ラドラム

5位 酔いどれの誇り :ジェイムズ・クラムリー
没落した名家の生まれのミロは、遺産が入る日を待ちわびる酒びたりの私立探偵。ある日、彼のもとを一人の女が訪れた。行方不明の弟を捜してくれというのだが、やがて、若者は麻薬の射ちすぎで死体となって発見された。姉の話とは裏腹に、弟は自堕落な日々を送っていたらしい。埋もれた過去を追い、ミロは荒廃した街へ踏み込んでいった。大西部の片隅に生きる人々の哀しみを、詩情をこめて謳い上げる極上のハードボイルド。

6位 テロリストに薔薇を :ジャック・ヒギンズ
KGBの命を受けて破壊活動を繰り返すテロリスト、フランク・バリイ。彼の暗殺を決意した英国情報部は、その実行者にバリイのIRA時代の戦友ブロスナンを選ぶ。だが彼はフランスの警官射殺の罪により、絶海の孤島で終身刑に服していた。釈放を条件に暗殺を請け負わせるべく、情報部IRAを引退したリーアム・デヴリンにブロスナンの説得を依頼するが…。『鷲は舞い降りた』のデヴリンが再び活躍するヒギンズの傑作長篇。

7位 ロウフィールド館の惨劇 :ルース・レンデル
ユーニスは怯えていた。自分の秘密が暴露されることを。ついにその秘密があばかれたとき、すべての歯車が惨劇に向けて回転をはじめた! 犯罪者の異常な心理を描く名手、レンデルの会心作。

8位 真夜中の相棒 :テリー・ホワイト

8位 八百万の死にざま :ローレンス・ブロック
アームストロングの店に彼女が入ってきた。キムというコールガールで、足を洗いたいので、代わりにヒモと話をつけてくれないかというのだった。わたしが会ってみると、その男は意外にも優雅な物腰の教養もある黒人で、あっさりとキムの願いを受け入れてくれた。だが、その直後、キムがめった切りにされて殺されているのが見つかった。容疑のかかるヒモの男から、わたしは真犯人探しを依頼されるが…。マンハッタンのアル中探偵マット・スカダー登場。大都会の感傷と虚無を鮮やかな筆致で浮かび上がらせ、私立探偵小説大賞を受賞した話題の大作。

10位 反撃 :ブライアン・ガーフィールド


1983年

1位 摩天楼の身代金 :リチャード・ジェサップ

2位 偽のデュー警部 :ピーター・ラヴゼイ

3位 赤の広場 :エドゥアルド・トーポリ&フリードリヒ・ニェズナンスキイ

4位 オールド・ディック :L・A・モース

5位 ペテルブルグから来た男 :ケン・フォレット

6位 脅迫 :ビル・プロンジーニ

7位 マダム・タッソーがお待ちかね :ピーター・ラヴゼイ
1888年3月、ロンドンの高級写真館で助手をつとめる男が毒殺された。警察の入念な捜査の結果、彼に恐喝されていた館主の妻が逮補される。彼女は公判を前に自らの罪を告白し、判決は絞首刑と決したが―三カ月後、内務大臣の許へ届いた一枚の写真がすべてをくつがえした。そこには彼女の犯行を不可能たらしめる重要な鍵が写っていたのだ!英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー受賞に輝く本格推理傑作。

8位 クージョ :スティーヴン・キング

8位 リトル・ドラマー・ガール :ジョン・ル・カレ
ヨーロッパ各地で頻発する、ユダヤ人を標的としたアラブの爆弾テロ。その黒幕を追及するイスラエル情報機関は、イギリスの女優チャーリィに接触し、ある秘密作戦への協力を依頼する。その作戦とは―。イスラエル側が拉致したアラブ人テロリストの恋人になりすまし、テロ組織に潜入して情報を入手するというものだった。架空の人格を緻密につくりあげたチャーリィは、女優としての全才能を賭けて危険な演技に挑んでゆく。

8位 子供たちの夜 :トマス・チャステイン


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