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週刊文春ミステリーベスト10 国内部門 1983年~2000年の作品の一覧です。

週刊文春ミステリーベスト10の国内部門作品(1983年~2000年)

「週刊文春ミステリーベスト10」は週刊文春で毎年末に発表されるミステリー小説の年間ランキングです。1977年末に開始され、日本推理作家協会員や書評家、記者、書店員などのアンケート投票によりランキングが決まります。
当初(1977年~1982年)は海外と国内の区別はありませんでしたが、現在は海外部門と国内部門に分かれています。
以下は1983年~2000年の国内部門ランキング一覧です。

国内部門2001年~ へ
国内・海外1977年~1982年へ
海外部門2001年~ へ
海外部門1983年~2000年へ

年度 / 順位 / 作品名 / 著者 / 内容
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2000年

1位 脳男 :首藤瓜於
連続爆弾犯のアジトで見つかった、心を持たない男・鈴木一郎。逮捕後、新たな爆弾の在処(ありか)を警察に告げた、この男は共犯者なのか。男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとするが……。 そして、男が入院する病院に爆弾が仕掛けられた。全選考委員が絶賛した超絶の江戸川乱歩賞受賞作。

2位 倒錯の帰結 :折原一
日本海の孤島で起こる連続密室殺人事件(『首吊り島』)と都会の片隅で起こる監禁事件(『監禁者』)。二つの事件に巻き込まれた作家志望の男が遭遇する奇想天外の結末とは?「倒錯」シリーズ完結編は前代未聞、前からでも後ろからでも楽しめる本。

3位 動機 :横山秀夫
署内で一括保管される三十冊の警察手帳が紛失した。犯人は内部か、外部か。男たちの矜持がぶつかりあう表題作(第53回日本推理作家協会賞受賞作)ほか、女子高生殺しの前科を持つ男が、匿名の殺人依頼電話に苦悩する「逆転の夏」。公判中の居眠りで失脚する裁判官を描いた「密室の人」など珠玉の四篇を収録。

4位 新宿鮫 風化水脈 :大沢在昌
殺人傷害事件で服役していた藤野組組員・真壁が出所した。だが、真壁が殺そうとした男は、藤野組と組む中国人組織のボスになっていた。一方、高級車窃盗団を追う鮫島は、孤独な老人・大江と知り合う。大江に秘密の匂いを嗅いだ鮫島は、潜入した古家で意外な発見をした―。過去に縛られた様々な思いが、街を流れる時の中で交錯する。心に沁みるシリーズ第8弾。

5位 虹の谷の五月 :船戸与一
フィリピンのセブ島に祖父と暮らす13歳のトシオ。丸い虹がかかる谷をめぐり、彼はゲリラの抗争に巻き込まれていく。成長を遂げていく少年に託した冒険巨編、第123回直木賞受賞作。

6位 奇術探偵會我佳城全集 :泡坂妻夫

7位 ジャンプ :佐藤正午
その夜、「僕」は、奇妙な名前の強烈なカクテルを飲んだ。ガールフレンドの南雲みはるは、酩酊した「僕」を自分のアパートに残したまま、明日の朝食のリンゴを買いに出かけた。「五分で戻ってくるわ」と笑顔を見せて。しかし、彼女はそのまま姿を消してしまった。「僕」は、わずかな手がかりを元に行方を探し始めた。失踪をテーマに現代女性の「意志」を描き、絶賛を呼んだ傑作。

8位 オルファクトグラム :井上夢人
姉を殺害した犯人に、事件現場で襲撃された片桐稔は、その後遺症から通常の“匂い”を失い、イヌ並みの嗅覚をもつことに…。まったく違う世界に戸惑いながらも、失踪したバンド仲間を、嗅覚を頼りに捜し求めてゆく。新たな能力を駆使することで、姉の仇を討てるのか?新感覚の大長編異次元ミステリー。

9位 ぼんくら :宮部みゆき
「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」―江戸・深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。著者渾身の長編時代ミステリー。

10位 症例A :多島斗志之
謎の女を描く「マリア観音」、清水の次郎長の三人目の妻・お蝶が死に至るまでを書いた「お蝶殺し」など、多島さんならではのエモーショナルで心地良い読後感の短編を厳選しました


1999年

1位 白夜行 :東野圭吾
19年前の大阪の質屋殺し。迷宮入りしたこの事件に関係した少年と少女が歩んだ道は…。絶望の白い光の中、魂の荒野を行く男と女を、叙事詩的スケールで描く傑作ミステリー長篇。

2位 永遠の仔 :天童荒太
再会は地獄への扉だった。十七年前、霧の霊峰で少年たちが起こした聖なる事件が、今鮮やかに蘇る―。山本周五郎賞受賞作から三年余。沈黙を破って放つ最高傑作ミステリー。

3位 亡国のイージス :福井晴敏
在日米軍基地で発生した未曾有(みぞう)の惨事。最新のシステム護衛艦《いそかぜ》は、真相をめぐる国家間の策謀にまきこまれ暴走を始める。交わるはずのない男たちの人生が交錯し、ついに守るべき国の形を見失った《楯(イージス)》が、日本にもたらす恐怖とは。日本推理作家協会賞を含む三賞を受賞した長編海洋冒険小説の傑作。

4位 柔らかな頬 :桐野夏生
カスミは、故郷・北海道を捨てた。が、皮肉にも、北海道で幼い娘が謎の失踪を遂げる。罪悪感に苦しむカスミ。実は、夫の友人・石山に招かれた別荘で、カスミと石山は家族の目を盗み、逢引きを重ねていたのだ。カスミは一人、娘を探し続ける。4年後、元刑事の内海が再捜査を申し出るまでは。話題の直木賞受賞作ついに文庫化。

5位 バトル・ロワイアル :高見広春
西暦一九九七年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。城岩中学三年B組の七原秋也ら四十二人は、修学旅行バスごと無人の島へと拉致され、政府主催の殺人実験を強制される。生還できるのはたった一人。そのためにはただクラスメイト全員を殺害するのみ―。現代日本を震撼させたジェットコースターデスゲーム・ノヴェル、ついに文庫化。

6位 てのひらの闇 :藤原伊織
飲料会社宣伝部課長・堀江はある日、会長・石崎から人命救助の場面を偶然写したというビデオテープを渡され、これを広告に使えないかと打診されるが、それがCG合成である事を見抜き、指摘する。その夜、会長は自殺した!!堀江は20年前に石崎から受けたある恩に報いるため、その死の謎を解明すべく動き出すが…。

7位 盤上の敵 :北村薫
我が家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻・友貴子が人質にされた。警察とワイドショーのカメラに包囲され、「公然の密室」と化したマイホーム!末永純一は妻を無事に救出するため、警察を出し抜き犯人と交渉を始める。はたして純一は犯人に王手をかけることができるのか?誰もが驚く北村マジック。

7位 ボーダーライン :真保裕一
ロサンゼルスの日系企業で働く探偵のサム永岡は、一人の若者を探すように命じられた。国境に近い町で見つけた彼は、天使のような笑顔を見せながらいきなり発砲してきた―。人としての境界を越えた者と、そんな息子の罪を贖おうとする父親。ふたりにかかわった永岡もまた、内なるボーダーラインを見つめる…。重層的なテーマが響く傑作長篇。

9位 最悪 :奥田英朗
不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった三人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説、待望の文庫化。

10位 ハサミ男 :殊能将之
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。


1998年

1位 理由 :宮部みゆき
事件はなぜ起こったか。殺されたのは「誰」で、いったい「誰」が殺人者であったのか―。東京荒川区の超高層マンションで凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。そして、ベランダから転落した若い男。ところが、四人の死者は、そこに住んでいるはずの家族ではなかった…。ドキュメンタリー的手法で現代社会ならではの悲劇を浮き彫りにする、直木賞受賞作。

2位 レディ・ジョーカー :髙村薫
人質は350万キロリットルのビールだ―業界のガリバー・日之出麦酒を狙った未曾有の企業テロは、なぜ起こったか。男たちを呑み込む闇社会の凄絶な営みと暴力を描いて、いま、人間存在の深淵を覗く、前人未到の物語が始まる。

3位 秘密 :東野圭吾
妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇、ついに文庫化。

4位 屍鬼 :小野不由美
人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躪したかのように散乱していた―。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも…。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

5位 グランド・ミステリー :奥泉光
昭和十六年十二月八日、日本軍が真珠湾攻撃で歴史的成果を勝ち取った直後、空母「蒼龍」に着艦した九九艦爆搭乗員、榊原大尉が不可解な服毒死を遂げた。ほぼ同時に伊号潜水艦では特殊潜航艇乗組員が出撃前に艦長に託した遺書が何者かに盗まれた。伊号潜水艦の先任将校、加多瀬大尉は、東京に帰還した後、未亡人となった志津子の依頼を受け、榊原の死の真相を追い始めた。まもなく加多瀬は、軍部と関係している鎌倉の「国際問題研究所」に辿りつく。だが、錯綜する謎の糸は、更なる迷宮へと加多瀬を導いてゆく。

6位 燃える地の果てに :逢坂剛
最後の核爆弾一基が見つからない!スペイン上空で核を搭載中の米軍機が炎上、墜落した。事実をひた隠して懸命の捜索を行う米軍。放射能汚染におびえる村人。ギタリスト古城邦秋を待ちうける虎口の数々…。跳梁するスパイの狙いは?過去と現在、二つの物語が衝撃的に融合する。

7位 司法戦争 :中嶋博行
沖縄で最高裁の判事が殺された。判事はなぜ死なねばならなかったのか。東京地検、法務省、内閣情報室、警視庁、あらゆる国家権力を巻き込みながら潜行していく巨大な陰謀がついに暴かれる。現役敏腕弁護士作家ならではのリアリティ。司法制度を根本から問い日本を震撼させるリーガル・サスペンスの最高峰。

8位 塗仏の宴 宴の支度・宴の始末 :京極夏彦
「知りたいですか」。郷土史家を名乗る男は囁く。「知り―たいです」。答えた男女は己を失い、昏き界へと連れ去られた。非常時下、大量殺戮の果てに伊豆山中の集落が消えたとの奇怪な噂。敗戦後、簇出した東洋風の胡乱な集団六つ。十五年を経て宴の支度は整い、京極堂を誘い出す計は成る。シリーズ第六弾。

8位 果つる底なき :池井戸潤
「これは貸しだからな。」謎の言葉を残して、債権回収担当の銀行員・坂本が死んだ。死因はアレルギー性ショック。彼の妻・曜子は、かつて伊木の恋人だった……。坂本のため、曜子のため、そして何かを失いかけている自分のため、伊木はただ1人、銀行の暗闇に立ち向かう!第44回江戸川乱歩賞受賞作。

10位 失踪者 :折原一
ノンフィクション作家・高嶺隆一郎は真犯人に直接インタビューする手法をとっていた。埼玉県の久喜市で起きている連続失踪事件を調査するなかで、15年前の同様の事件との関連性が浮かび上がる。月曜日に女が消えること、現場に「ユダ」「ユダの息子」のメモが残されること。犯人はまた「少年A」なのか。


1997年

1位 死の泉 :皆川博子
第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに…。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。吉川英治文学賞受賞の奇跡の大作。

2位 OUT :桐野夏生
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点。’98年日本推理作家協会賞受賞。

3位 破線のマリス :野沢尚
首都テレビ報道局のニュース番組で映像編集を担う遠藤瑶子は、虚実の狭間を縫うモンタージュを駆使し、刺激的な画面を創りだす。彼女を待ち受けていたのは、自ら仕掛けた視覚の罠だった!?事故か、他殺か、1本のビデオから始まる、超一級の「フー&ホワイダニット」。第43回江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリ。

4位 黒い家 :貴志祐介
人はここまで悪になりきれるのか? 人間存在の深部を襲う戦慄の恐怖。巨大なモラルの崩壊に直面する日本。黒い家は来たるべき破局の予兆なのか。人間心理の恐ろしさを極限まで描いたノンストップ巨編。

5位 逃亡 :帚木蓬生
1945年8月15日、日本敗戦。国内外の日本人全ての運命が大きく変わろうとしていた―。香港で諜報活動に従事していた憲兵隊の守田軍曹は、戦後次第に反日感情を増す香港に身の危険を感じ、離隊を決意する。本名も身分も隠し、憲兵狩りに怯えつつ、命からがらの帰国。しかし彼を待っていたのは「戦犯」の烙印だった…。「国家と個人」を問う日本人必読の2000枚。柴田錬三郎賞受賞。

6位 鎮魂歌 不夜城II :馳星周
新宿の街を震撼させたチャイナマフィア同士の銃撃事件から二年、警察の手すら届かない歌舞伎町の中国系裏社会を牛耳るのは、北京の崔虎、上海の朱宏、そして、銃撃事件で大金を手に入れた台湾の楊偉民だった。勢力図も安定したかと思われた矢先、崔虎の手下の大物幹部が狙撃され、歌舞伎町は再び不穏な空気に包まれた!崔虎は日本人の元刑事に犯人を探し出すよう命じるが、事態は思わぬ方向へと展開していく…。事件の混乱に乗じ、劉健一は生き残りを賭け、再び罠を仕掛けた!―驚異のデビュー作『不夜城』の二年後を描いた、傑作ロマンノワール。

7位 氷舞 新宿鮫VI :大沢在昌
西新宿のホテルで元CIAのアメリカ人が殺された。事件の鍵を握る平出組の前岡に迫る鮫島。しかし、なぜか公安警察が立ちはだかった。その背後には元公安秘密刑事・立花の影が。捜査の過程で鮫島は、美しく孤独な女・杉田江見里と出逢い、惹かれていく…。江見里と事件の関わりが浮上するなか、鮫島は“核心”に挑む。興奮と感動の傑作シリーズ第6弾。

8位 未明の悪夢 :谺健二
1995年1月17日未明、神戸を未曾有の大震災が襲った。一瞬にして崩壊した街で、私立探偵の有希真一は多くの死を目の当たりにする。ようやく彼が救出した友人の占い師探偵・雪御所圭子も精神に異常を……。そんな最中、バラバラ死体の消失、磔(はりつけ)殺人と、連続猟奇殺人事件が発生する! 著者自らの体験も色濃い渾身の筆致で、ミステリー界が驚愕した鮎川賞受賞作!

9位 嗤う伊右衛門 :京極夏彦
ミステリー作家京極夏彦が、斬新な解釈を施して現代に蘇らせた「四谷怪談」。4世鶴屋南北の最高傑作とされる『東海道四谷怪談』とは趣の異なる、凛とした岩の姿が強く心に残る作品である。直助やお袖、宅悦や喜兵衛、お梅といった南北版の登場人物に、自身の著作『巷説百物語』の主人公又市をからませながら、伊右衛門とお岩が繰り広げる凄惨な怪談話を、悲恋の物語へと昇華させている。第25回泉鏡花文学賞受賞作品。

10位 冤罪者 :折原一
ノンフィクション作家・五十嵐友也のもとに届けられた一通の手紙。それは連続婦女暴行魔として拘置中の河原輝男が冤罪を主張し、助力を求めるものだった。しかし自らの婚約者を犯人に殺された五十嵐にとって、それはとても素直に受け取れるものではない。河原の他に真犯人がいるのだろうか。謎のまた謎の千枚。


1996年

1位 不夜城 :馳星周
アジア屈指の歓楽街・新宿歌舞伎町の中国黒社会を器用に生き抜く劉健一。だが、かつての相棒・呉富春が町に戻り、事態は変わった。生き残るために嘘と裏切りを重ねる人間たちの危険な物語。

2位 左手に告げるなかれ :渡辺容子
ニュ-・ヒロイン誕生!江戸川乱歩賞受賞作不倫相手の妻が殺された。万引防止に活躍する女性保安士は自らの手で自分の容疑を晴らそうと立ち上がる。苦い過去を抱きながら生きる女性像を描く長編推理小説。

3位 蒲生邸事件 :宮部みゆき
突如ホテル火災に見舞われた受験生・孝史。謎の男に助けられた先はなんと昭和十一年。当代随一の名手会心の日本SF大賞受賞作!

4位 奪取 :真保裕一
偽札をつくりあげた者が勝利者となる!傑作長編。1260万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札作りを2人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をW受賞した、涙と笑いの傑作長編サスペンス!

5位 鉄鼠の檻 :京極夏彦
忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者―骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。謎の巨刹=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、さしもの京極堂が苦闘する、シリーズ第四弾。

6位 絡新婦の理 :京極夏彦
当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな―二つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らされた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第五弾。

7位 星降り山荘の殺人 :倉知淳
雪に閉ざされた山荘。ある夜、そこに集められたUFO研究家、スターウォッチャー、売れっ子女流作家など、一癖も二癖もある人物たち。交通が遮断され、電気も電話も通じていない陸の孤島で次々と起きる殺人事件…。果たして犯人は誰なのか!?あくまでもフェアに、読者に真っ向勝負を挑む本格長編推理。

8位 すべてがFになる :森博嗣
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

8位 名探偵の掟 :東野圭吾
完全密室、時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。フーダニットからハウダニットまで、12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた、恐るべき「ミステリ界の謎」とは?本格推理の様々な“お約束”を破った、業界騒然・話題満載の痛快傑作ミステリ。

10位 凍える牙 :乃南アサ
深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した!遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか?野獣との対決の時が次第に近づいていた―。女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の超ベストセラー。


1995年

1位 テロリストのパラソル :藤原伊織
アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し20年以上もひっそりと暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た事実とは……。史上初の乱歩賞&直木賞W受賞作。

2位 ホワイトアウト :真保裕一
日本最大の貯水量を誇るダムが、武装グループに占拠された。職員、ふもとの住民を人質に、要求は50億円。残された時間は24時間!荒れ狂う吹雪をついて、ひとりの男が敢然と立ち上がる。同僚と、かつて自分の過失で亡くした友の婚約者を救うために―。圧倒的な描写力、緊迫感あふれるストーリー展開で話題をさらった、アクション・サスペンスの最高峰。吉川英治文学新人賞受賞。

3位 さらば長き眠り :原尞
400日ぶりに東京に帰ってきた私立探偵沢崎を待っていたのは、浮浪者の男だった。男の導きで、沢崎は元高校野球選手の魚住からの調査を請け負う。11年前、魚住に八百長試合の誘いがあったのが発端で、彼の義姉が自殺した真相を突き止めてほしいというのだ。調査を開始した沢崎は、やがて八百長事件の背後にある驚愕の事実に突き当たる…沢崎シリーズ第一期完結の渾身の大作。文庫版書下ろし掌編「世紀末犯罪事情」収録。

4位 魍魎の匣 :京極夏彦
匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物―箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。

5位 パラサイト・イヴ :瀬名秀明
生化学者の妻が、不可解な交通事故死を遂げた。夫は妻の死を受けいれられず、肝細胞を“Eve1”と名づけ培養する。徐々に恐るべき性質をあらわす…。人間という種の根幹を揺るがす物語。

5位 龍の契り :服部真澄
東洋の富の一大拠点・香港。その返還を前に、永い眠りから覚醒するかのように突如浮上した、返還に関する謎の密約。いつ、誰が締結し、誰を利するものなのか―。全焼したロンドンのスタジオから忽然と消えた機密文書をめぐる英・中・米・日の熾烈な争奪戦が、世紀末の北京でついにクライマックスを迎えるとき、いにしえの密約文書は果たして誰の手に落ち、何を開示するのか。

7位 蝦夷地別件 :船戸与一
十八世紀末、蝦夷と呼ばれるアイヌ民族は和人の横暴に喘いでいた。商人による苛烈な搾取、謂れのない蔑みや暴力、女たちへの陵辱…。和人との戦いを決意した国後の脇長人ツキノエは、ロシア人船長に密かに鉄砲三〇〇挺を依頼する。しかし、そこにはポーランド貴族マホウスキの策略があった。祖国を狙うロシアの南下政策を阻止するべく、極東に関心を向けさせるための紛争の創出。一方で、蝦夷地を直轄地にしようと目論む幕府と、権益を死守しようとする松前藩の思惑も入り乱れていた。アイヌ民族最後の蜂起「国後・目梨の乱」を壮大なスケールで描きだす超大作。

8位 炎蛹 新宿鮫V :大沢在昌
新宿署刑事・鮫島を、犯罪者は、恐れを込めて「新宿鮫」と呼ぶ。植物防疫官・甲屋は、外国人娼婦によって南米から日本に侵入した、“恐怖の害虫”の蛹を追っていた。羽化まで数日。蛹を追って、鮫島と甲屋は、危険と罠に満ちた闇に挑む!命をかけて熱く闘う男たちがここにいる。興奮と感動、圧倒する迫力!傑作長編刑事小説第5弾。

9位 誘拐者 :折原一
「私の赤ちゃんを返して!」誘拐された子供を求めて妻は出奔した…やがて子供は戻されたが、妻は行方をくらましたまま。その20年後、写真週刊誌に載った1枚の写真がきっかけで、怨念と狂気に染まった女と男たちが、ある一点をめざして急激に動きだす。そこに用意された誰も予期しえない衝撃の結末とは。

10位 らせん :鈴木光司
察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山竜司の解剖を担当した。冠動脈から正体不明の肉腫が発見され、遺体からはみ出た新聞紙に書かれた数字は、ある言葉を暗示していた……!? 「リング」サーガ第2弾。


1994年

1位 検察捜査 :中嶋博行
第40回江戸川乱歩賞受賞作の法律(リーガル)サスペンス!大物弁護士が殺された。死体には凄惨な拷問の痕が……。横浜の街を奔走、捜査する若い女性検察官!

2位 照柿 :髙村薫
野田達夫、35歳。17年働き続けてきた平凡な人生に、何が起ったのか。達夫と逢引する女、佐野美保子はほんとうに亭主を刺したのか。美保子と出会った瞬間、一目惚れの地獄に落ちた刑事合田雄一郎はあてもなく街へさまよい出る。照柿の色に染まった男二人と女一人の魂の炉。

3位 沈黙の教室 :折原一
青葉ヶ丘中学3年A組―悪魔のようなこのクラスを、担任教師が名づけて「沈黙の教室」。何者かが不気味な恐怖新聞を発行し、つぎつぎと粛清の対象を指名していく。そして行なわれる残酷ないじめ。やがて20年がたち、クラスの同窓会の告知が新聞に載った時、報復を誓う者による大量殺人計画がひそやかに進行しはじめた!めくるめく多重構造の謎と、じわじわと忍びよる恐怖。日本推理作家協会賞長篇賞に輝くサスペンス。

4位 ミステリーズ :山口雅也
密室殺人にとりつかれた男の心の闇、一場面に盛り込まれた連続どんでん返し、不思議な公開捜査番組、姿を見せない最後の客。人気の本格推理作家が明確な意図を持ってみずからの手で精密に組み上げた短編集。謎とトリックと推理の巧みな組み合わせが、人間の深奥にひそむ「ミステリー」を鮮やかに描き出す。

5位 生者と死者 酩探偵ヨギガンジーの透視術 :泡坂妻夫

6位 ストックホルムの密使 :佐々木譲
イタリアは降伏、ベルリンも陥落した第二次大戦末期、孤立無援の日本では、米軍による本土空襲が激化し、戦局は絶望への道を辿る一方だった。日本政府はソ連仲介の終戦工作を模索するが、スウェーデンに駐在する海軍武官・大和田市郎は、瀕死の日本にとどめを刺す連合国側の極秘情報を入手した。日本が滅亡する前に、その情報を軍上層部に伝えるべく、いま二人の密使が放たれた…。

7位 姑獲鳥の夏 :京極夏彦
この世には不思議なことなど何もないのだよ―古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。東京・雑司ケ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。

8位 化身 :愛川晶
操の元に届けられた差出人不明の、保育園と一枚の絵の写真。次いで見知らぬ少女のポートレイトも届き…。次々届く写真に恐怖を覚え調べていくと、そこでは昔未解決の園児誘拐事件があったらしい。そして被害者の容貌は、幼い頃の操に酷似していた。自分は誘拐された園児なのか?巧妙な誘拐トリックと戸籍制度を巧みに利用し隠された驚愕の真実!第五回鮎川哲也賞受賞作。

9位 プラスティック :井上夢人
54個の文書ファイルが収められたフロッピィがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる!謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。

9位 ヴィオロンのため息の-高原のD :五十嵐均
敗戦間近い軽井沢で、ソ連人スパイが殺害された。ノルマンディ上陸作戦の陰で、世界史を決した殺人事件! 事件の鍵を握る日独の男女は五十年後に再会の約束を…。半世紀の悲恋を描いた国際ミステリー・ロマン。


1993年

1位 マークスの山 :髙村薫
昭和51年南アルプスで播かれた犯罪の種は16年後、東京で連続殺人として開花した―精神に〈暗い山〉を抱える殺人者マークスが跳ぶ。元組員、高級官僚、そしてまた…。謎の凶器で惨殺される被害者。バラバラの被害者を結ぶ糸は?マークスが握る秘密とは?捜査妨害の圧力に抗しながら、冷血の殺人者を追いつめる警視庁捜査第一課七係合田刑事らの活躍を圧倒的にリアルに描き切る本格的警察小説の誕生。

2位 顔に降りかかる雨 :桐野夏生
親友のノンフィクションライター宇佐川耀子が、1億円を持って消えた。大金を預けた成瀬時男は、暴力団上層部につながる暗い過去を持っている。あらぬ疑いを受けた私(村野ミロ)は、成瀬と協力して解明に乗り出す。二転三転する事件の真相は?女流ハードボイルド作家誕生の’93年度江戸川乱歩賞受賞作!

3位 無間人形 新宿鮫IV :大沢在昌
新宿の若者たちの間で、舐めるだけで効く新型覚せい剤が流行り出した。薬を激しく憎む新宿署刑事・鮫島は、執拗に密売ルートを追う。財閥・香川家の昇・進兄弟の野望、薬の独占を狙う藤野組・角の策略、麻薬取締官の露骨な妨害、そして、恋人・晶は昇の手に…。現代を代表する超人気シリーズ第4弾、直木賞受賞の感動巨編、待望の文庫版で登場。

4位 異人たちの館 :折原一
富士の樹海で失踪した息子・小松原淳の伝記を書いて欲しい。売れない作家島崎に舞いこんだゴーストの仕事―。女依頼人の広大な館で、資料の山と格闘するうちに島崎の周囲で不穏な出来事が起こり始める。この一家には、まだまだ秘密がありそうだ。五つの文体で書き分けられた折原叙述ミステリーの最高峰。

5位 ガダラの豚 :中島らも
アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。日本推理作家協会賞受賞作。

6位 アトポス :島田荘司
虚栄の都・ハリウッドに血で爛れた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優レオナ松崎が主演の映画『サロメ』の撮影が行われる水の砂漠・死海でも惨劇は繰り返され、甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向う。ここにミステリの新たな地平が開かれた。

7位 屍蘭 新宿鮫III :大沢在昌
犯罪者たちから「新宿鮫」と恐れられる、新宿署刑事・鮫島。新宿の高級娼婦の元締め・浜倉が殺された。事件に迫る鮫島の前に浮かび上がる産婦人科医「釜石クリニック」。背後に潜む呪われた犯罪とは?だが、鮫島に突然、汚職・殺人の容疑が!さらに敵の完璧な罠が「新宿鮫」を追いつめる!息詰まる興奮、圧倒的な感動!超人気傑作シリーズ第3弾。

8位 キッド・ピストルズの妄想 :山口雅也
塔から飛び降りたはずの物理学者の死体が屋上で発見され、塔の下には別人が死んでいた…!?(「神なき塔」)、ノアの方舟を再現し来たるべき大洪水に備えようとした男が変死する事件の意外な真相(「ノアの最後の航海」)、死体となって見つかった後消失した当主のものと思しき首なし死体が広大な庭園の中で発見される…(「永劫の庭」)。謎解き興味の横溢する傑作中編3編を収録。

9位 B・D・T 掟の街 :大沢在昌
不法滞在外国人問題が深刻化する近未来東京。爆発的に急増した身寄りのない混血児たちは「ホープレス・チャイルド」と呼ばれ、その多くが犯罪者となっていた。彼らが巣食う東新宿はスラムと化し、いつしか、街は「B・D・T」と呼ばれた。無法地帯となった最も危険な街で、私立探偵ヨヨギ・ケンが依頼された仕事は、失踪したホープレス出身の女性歌手の捜索―。女の足跡を追うケンを次々と襲うトラブル、そしてケンの目の前に、その巨大な組織が正体を現す!圧倒的なスピード感で描く、傑作冒険アクション。

10位 震源 :真保裕一
地震で津波が発生し、警報が遅れる事故が起こった。地震火山研究官の江坂は、ミスをした森本を鹿児島に訪ねるが、彼はすでに退職し姿を消していた。同じ頃、森本と同窓の大学教授も、地震の観測データを持ったまま、行方不明に。そこには国家的陰謀が渦巻いていた!新進気鋭の作家が放つ、長編サスペンス。


1992年

1位 火車 :宮部みゆき
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

2位 哲学者の密室 :笠井潔
開口部を完璧に閉ざされたダッソー家で、厳重に施錠され、監視下にあった部屋で滞在客の死体が発見される。現場に遺されていたナチス親衛隊の短剣と死体の謎を追ううちに三十年前の三重密室殺人事件が浮かび上がる。現象学的本質直感によって密室ばかりか、その背後の「死の哲学」の謎をも解き明かしていく矢吹駆。二十世紀最高のミステリ。

3位 白く長い廊下 :川田弥一郎
医療事故か?巧妙に仕組まれた殺人事件か?現役外科医が挑戦した乱歩賞史上初の医学ミステリー!第38回江戸川乱歩賞受賞作。医療現場の問題点も鋭く抉る意欲作!!

4位 双頭の悪魔 :有栖川有栖
他人を寄せつけず奥深い山で芸術家たちが創作に没頭する木更村に迷い込んだまま、マリアが戻ってこない。救援に向かった英都大学推理研の一行は、大雨のなか木更村への潜入を図る。江神二郎は接触に成功するが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。川の両側に分断された木更村の江神・マリアと夏森村のアリスたち、双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まる…。

5位 六の宮の姫君 :北村薫
最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」―王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。

6位 リヴィエラを撃て :髙村薫
1992年冬の東京。元IRAテロリスト、ジャック・モーガンが謎の死を遂げる。それが、全ての序曲だった―。彼を衝き動かし、東京まで導いた白髪の東洋人スパイ『リヴィエラ』とは何者なのか?その秘密を巡り、CIAが、MI5が、MI6が暗闘を繰り広げる!空前のスケール、緻密な構成で国際諜報戦を活写し、絶賛を浴びた傑作。日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞受賞。

6位 ダレカガナカニイル… :井上夢人
警備員の西岡は、新興宗教団体を過激な反対運動から護る仕事に就いた。だが着任当夜、監視カメラの目の前で道場が出火、教祖が死を遂げる。それ以来、彼の頭で他人の声がしはじめた。“ここはどこ?あなたはだれ?”と訴える声の正体は何なのか?ミステリー、SF、恋愛小説、すべてを融合した奇跡的傑作。

8位 砕かれた鍵 :逢坂剛
警察官が関連する事件が続発した。麻薬密売を内偵中の特捜隊の警部補とその同僚の巡査部長が射殺され、麻薬吸引者の元警察官に婦人警官が刺殺された。何か巨大な陰謀が警察内部で進んでいる模様である。警察庁特別監察官・倉本尚武が乗り出し、執念の捜査を開始する。そして“ペガサス”という名の謎の人物にゆき当たるが…。

9位 眩暈 :島田荘司
切断した男女の死体が合成され両性具有者となって蘇る。窓の外には荒涼たる世界の終焉の光景が広がっているばかりだ。「占星術殺人事件」を愛読する青年が書きのこした戦慄の日記がさし示すものは何か。醜悪な現実世界に奇想の作者が驚天動地のトリックの矢を放つ。ミステリの新たな飛翔を決定づけた傑作。

10位 ななつのこ :加納朋子
短大生の入江駒子は『ななつのこ』という本に出逢い、ファンレターを書こうと思い立つ。身辺を騒がせた〈スイカジュース事件〉をまじえて長い手紙を綴ったところ、事件の“解決編”ともいうべき返事が舞い込んだ! こうして始まった駒子と作家のやりとりが鮮やかにミステリを描き出す、フレッシュな連作長編。


1991年

1位 毒猿 新宿鮫II :大沢在昌
歌舞伎町の女・奈美。孤独な彼女が心惹かれる外国人・楊は、謎の影を持つ男だった。一方、「新宿鮫」と恐れられる新宿署刑事・鮫島は、完璧な「職業兇手」(殺し屋)が台湾から潜入していることを知る。「毒猿」と呼ばれる男が動きはじめた刹那、新宿を戦慄が襲う!鮫島は、恐るべき人間凶器の暴走を止められるのか?奈美の運命は…。

2位 連鎖 :真保裕一
江戸川乱歩賞史上初の本格ハードボイルド。友人のルポライターの自殺に見舞われた食品検査官が、自殺の真相を探るうちに食肉汚染問題にからむ疑惑にまきこまれていく――ハードボイルド・ミステリー傑作。

3位 水晶のピラミッド :島田荘司
エジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドで起こる怪事。冥府の使者アヌビスが500年の時空を超えて突然蘇り、空中30メートルの密室で男が溺死を遂げる。アメリカのビッチ・ポイントに出現した現代のピラミッドの謎に挑む名探偵・御手洗潔。壮大なテーマに挑んだ本格推理の名作。

4位 時計館の殺人 :綾辻行人
館を埋める百八個の時計コレクション。鎌倉の森の暗がりに建つその時計館で十年前一人の少女が死んだ。館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。死者の想いが時計館を訪れた九人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは。第45回日本推理作家協会賞受賞。

5位 ナイト・ダンサー :鳴海章
M航ジャンボ機の貨物室から、アルミ合金をとかす特殊細菌があふれだし飛行困難に。その菌をめぐる国際陰謀の渦のなか、米海軍戦闘機はM航空機撃墜にむかい、航空自衛隊機が緊急発進。謎のジェット機ナイト・ダンサーをまじえ、息づまる空中戦が展開される。第三十七回江戸川乱歩賞受賞の航空サスペンス。

6位 ウロボロスの偽書 :竹本健治
竹本健治が連載を始めた本格推理に、いつのまにか埼玉で起こった女性連続殺人事件の、犯人を名乗る男の手記がまぎれこんでいた!現実と虚構の境界線はあいまいになり、事件は思わぬ展開に。私たちが暮らすこの世界もどこからどこまでが現実なのか、次第にあやふやになってくる、奇々怪々な超ミステリ。

6位 斜影はるかな国 :逢坂剛
1936年、フランコ将軍らが蜂起して勃発したスペイン内戦。その最中に、ギジェルモ・サトウと名乗る日本人義勇兵がいた。通信社特報部の記者・龍門二郎は、男の足跡を取材するためスペインに飛ぶが、その裏には大いなる秘密が隠されていた―。スペインの過去と現代を舞台に描かれた、壮大な冒険ミステリー。

8位 龍は眠る :宮部みゆき
嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ…宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。

9位 覆面作家 :折原一
顔に白頭巾をかぶってひたすらワープロを打ち続ける男。行方不明だった推理作家・西田操は七年ぶりに帰還して、長編『覆面作家』の執筆にとりかかった。それが、増悪と殺意の渦巻く事件の発端だった。劇中の小説と現実が激しく交錯し、読者を夢魔の世界に誘いこむ、傑作ホラー。真相は覆面作家だけが知っている。

10位 死のフェニーチェ劇場 :ドナ・M・レオン
『椿姫』ゆかりの劇場で毒死した天才指揮者。その死の謎を追って、やがてたどりついた事実。果してこれを「犯罪」と呼ぶことができるのだろうか。第9回サントリーミステリー大賞大賞受賞作。


1990年

1位 霧越邸殺人事件 :綾辻行人
或る晩秋、信州の山深き地で猛吹雪に遭遇した8人の前に突如出現した洋館「霧越邸」。助かった…安堵の声も束の間、外界との連絡が途絶えた邸で、彼らの身にデコラティブな死が次々と訪れる。密室と化したアール・ヌーヴォー調の豪奢な洋館。謎めたい住人たち。ひとり、またひとり―不可思議極まりない状況で起こる連続殺人の犯人は。驚愕の結末が絶賛を浴びた超話題作。

2位 剣の道殺人事件 :鳥羽亮
眼の壁に囲まれた密室―。衆人環視の中での殺人事件は、両国N大講堂で開催された全日本学生剣道大会の決勝戦で発生した。殺されたのは武南大の副将石川洋。京都体育大の岸本三段と対戦中のハプニングであった。岸本犯人説が有力となるが、捜査は難航する…。第36回江戸川乱歩賞受賞の剣の道ミステリー。

3位 新宿鮫 :大沢在昌
ただ独りで音もなく犯罪者に食いつく―。「新宿鮫」と怖れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に、警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。待ち受ける巧妙な罠!絶体絶命の鮫島…。登場人物の圧倒的な個性と最後まで息をつかせぬ緊迫感!超人気シリーズの輝ける第1作。

4位 隠された帝 天智天皇暗殺事件 :井沢元彦
大化改新の立役者天智天皇は、弟天武天皇によって暗殺された!壬申の乱後、正当に皇位を継いだ天武―それが歴史の定説である。だが、史書『扶桑略記』には“天皇行方不明”と記している。『日本書紀』に遅れること四百年、史料として無視されてきた。しかし、もし正史が暗殺者による自己正当化のための書としたら…。歴史の中枢を揺るがす衝撃の歴史推理。

5位 暗闇坂の人喰いの木 :島田荘司
名探偵・御手洗潔、今回の相手は樹齢二千年を数える大楠か。さらし首の名所・暗闇坂にそびえる楠の巨木は、人を喰い、人を狂気に駆りたてる。

6位 灰色の仮面 :折原一
ある晩、女性の悲鳴を聞いた僕は、駆けつけた部屋で美女の死体を発見。折悪しく住人に見つかり犯人と間違われてしまう。満月の夜に歪んだ欲望をたぎらせて、白いマンションに住む独身女性を次々と襲う恐怖の暴行魔と僕の熾烈な闘いが始まる。最後の一行まで真犯人がわからない超弩級のホラー・ミステリー。

7位 殺人喜劇の13人 :芦辺拓
縛り首、毒殺、密室、連続殺人の恐怖!古びたアパート「泥濘荘(ぬかるみそう)」へ転がり込んだミニ・コミ誌仲間の13人。格好の根城を得た喜びもつかの間、縛り首や毒死、密室とあらゆるやり方で、1人また1人と殺されてゆく──。残った仲間の誰が犯人なのか。友人たちを救おうとする名探偵・森江春策の推理は?第1回鮎川哲也賞を受賞した本格長編推理。

7位 ロートレック荘事件 :筒井康隆
夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが…。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か、アリバイを持たぬ者は、動機は。推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。前人未到のメタ・ミステリー。

9位 どこまでも殺されて :連城三紀彦
僕は殺されることにも慣れてしまったが、同時にまた憎まれることにも慣れていた。子供の頃から、まわりの誰もが僕を憎み、そのうちの何人かが僕を殺そうと決心するまでにその憎悪を募らせたのだ。僕が自分でも気づかずにいるちょっとした目つきや小さな仕草だけでも人が僕を殺したいほど憎むことを、何度も殺されて僕は知りつくしてしまっていた。

10位 レベル7 :宮部みゆき
レベル7まで行ったら戻れない―。謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いていく。ツイストに次ぐツイスト、緊迫の四日間。気鋭のミステリー作家が放つ力作長編。


1989年

1位 不安な産声 :土屋隆夫
大手薬品メーカー社長宅の庭で、お手伝いが強姦・絞殺された。容疑者として医大教授・久保伸也の名が挙がり、犯行を自供する。名誉も地位もある男がなぜ?しかも、久保にはアリバイがあり殺害動機もなければ証拠もない。担当検事・千草がみた、理解を超える事件の裏に隠された衝撃の真相とは…?斬新な手法を駆使した日本推理小説史上に残る記念碑的作品。

2位 私が殺した少女 :原尞
まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、一本の電話ではじまった。私立探偵沢崎の事務所に電話をしてきた依頼人は、面会場所に目白の自宅を指定していた。沢崎はブルーバードを走らせ、依頼人の邸宅へ向かう。だが、そこで彼は、自分が思いもかけぬ誘拐事件に巻き込まれていることを知る…緻密なストーリー展開と強烈なサスペンスで独自のハードボイルド世界を確立し、日本の読書界を瞠目させた直木賞・ファルコン賞受賞作。

3位 浅草エノケン一座の嵐 :長坂秀佳
エノケンがエノケンを殺した?昭和12年、浅草の人気劇団で起きた不可解な連続殺人。犯人として疑われたのは、人気絶頂のエノケンこと榎本健一。三重の密室とアリバイの壁が彼を追いつめる。エノケン、親友のロッパ、弟分のシミキンが複合トリックの謎に挑む傑作ミステリー。第35回江戸川乱歩賞受賞。

4位 奇想、天を動かす :島田荘司
浅草で浮浪者風の老人が、消費税12円を請求されたことに腹を立て、店の主婦をナイフで刺殺した。だが老人は氏名すら名乗らず完全黙秘を続けている。この裏には何かがある。警視庁捜査一課の吉敷竹史は、懸命な捜査の結果、ついに過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図を突き止めた。―壮大なトリックを駆使し、本格推理と社会派推理とを見事に融合させた傑作。

5位 死がお待ちかね :ベゴーニャ・ロペス
濃厚に交わされる愛と憎悪。傑作推理にしてラテン文学の名篇。第7回サントリーミステリー大賞受賞作。

5位 遠い国からの殺人者 :笹倉明
じゃぱゆきさんの殺人。深い孤独が二人を近づけた。陰湿な人種差別が殺人事件を引き起こした。サントリーミステリー大賞『漂流裁判』の筆者による、特別書下ろし作品。

7位 クラインの壺 :岡嶋二人
200万円でゲームブックの原作を、謎の企業イプシロン・プロジェクトに売却した上杉彰彦。その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。不世出のミステリー作家・岡嶋二人の最終作かつ超名作。

7位 倒錯のロンド :折原一
精魂こめて執筆し、受賞まちがいなしと自負した推理小説新人賞応募作が盗まれた。―その“原作者”と“盗作者”の、緊迫の駆け引き。巧妙極まりない仕掛けとリフレインする謎が解き明かされたときの衝撃の真相。鬼才島田荘司氏が「驚嘆すべき傑作」と賞替する、本格推理の新鋭による力作長編推理。

9位 エトロフ発緊急電 :佐々木譲
1941年12月8日、日本海軍機動部隊は真珠湾を奇襲。この攻撃の情報をルーズベルトは事前に入手していたか!?海軍機動部隊が極秘裡に集結する択捉島に潜入したアメリカ合衆国の日系人スパイ、ケニー・サイトウ。義勇兵として戦ったスペイン戦争で革命に幻滅し、殺し屋となっていた彼が、激烈な諜報戦が繰り広げられる北海の小島に見たものは何だったのか。山本賞受賞の冒険巨篇。

10位 ワイングラスは殺意に満ちて :黒崎緑
食都・大阪。ミナミのフランス料理店は大騒ぎ。酒庫からグルメ評論家の変死体が発見された。そして次々に起こる殺人事件…。なぜか死体の脇にはいつもワインが。若き女性ソムリエ富田香の推理は冴える。食前のキールから食後のカルヴァドスまで、軽快なテンポて重厚な構成を心ゆくまでご賞味ください。


1988年

1位 黄昏のベルリン :連城三紀彦
画家・青木優二は謎のドイツ人女性・エルザから、第二次大戦中、ナチスの強制収容所でユダヤ人の父親と日本人の母親の間に生まれた子供が自分だと知らされる。平穏な生活から一転、謀略渦巻くヨーロッパへ旅立つ青木。1988年「週刊文春ミステリーベスト10」第1位に輝いた幻の傑作ミステリーがいま甦る。

2位 白色の残像 :坂本光一
夏の甲子園大会、千葉代表と茨城代表の両監督はかつて大阪代表の名門信光学園でバッテリーを組んで優勝した実績をもつが、不幸な事故が二人を遺恨対決に変えてしまう。東都スポーツの中山記者が二人を取材したが、そんなときハンデ師殺人事件が起きる。高校野球への熱い思いを込めた乱歩賞受賞の傑作長編。

3位 漂流裁判 :笹倉明
レイプ裁判をめぐり人生の深い迷路にわけ入る法廷推理。第6回サントリーミステリー大賞大賞受賞作。

4位 ぼくと、ぼくらの夏 :樋口有介
高校二年の夏休み、同級生の女の子が死んだ。刑事の父親と二人で暮らすぼくは、友達の麻子と調べに乗り出したが…。開高健から「風俗描写が、とくにその“かるみ”が、しなやかで、的確であり、抜群の出来である」と絶賛され、サントリーミステリー大賞読者賞を受賞した、青春ミステリーの歴史的名作。

5位 伝説なき地 :船戸与一
伝説も生まれぬベネズエラの涸れた油田地帯には多数の難民が住みつき、マリアという聖女が人々の団結の象徴となる。その中の鍛治と丹波という屈強な日本人が地主の攻勢に備えた。その土地から希土類という超伝導素材が大量に発見され、巨億の利権に目が眩んだ男たちの殺戮劇が始まる。南米三部作第三弾。

5位 ベルリン飛行指令 :佐々木譲
ドイツが入手した日本の最新鋭戦闘機のデータは、まさに驚愕に価した。ほどなく二人の札つきパイロットに極秘指令が下る。ゼロ戦を駆ってベルリンへ飛べ―日米関係が風雲急を告げる昭和十五年、英国情報網をかいくぐって銀翼が乱気流を切り進む…。

7位 そして夜は甦る :原尞
ルポ・ライターの失踪、怪文書、東京都知事狙撃事件…。西新宿に探偵事務所を構える沢崎が立ち向かう難事件の背後には巨大な陰謀が隠され、鮮やかなラストシーンに向って物語はスピーディに展開してゆく。レイモンド・チャンドラーに心酔する、ジャズ・ピアニストの著者が2年の歳月をかけ完成させた渾身の処女長篇。いきのいい会話と緊密なプロットで贈る、期待の本格ハードボイルド登場。

8位 99%の誘拐 :岡嶋二人
末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには8年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして12年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第10回吉川英治文学新人賞受賞作!

8位  五つの棺 :折原一
雪の降る夜、屋敷の離れで新婚初夜の夫が殺され、新妻が姿を消した―しかも犯行のあった部屋の襖は、ガムテープで目張りされていた?!関東平野の片田舎に連続して起こる密室殺人!書き下ろし連作短編集。

10位 切り裂きジャック・百年の孤独 :島田荘司
1988年、西ベルリンで起きた謎の連続殺人。五人の娼婦たちは頚動脈を掻き切られ、腹部を裂かれ、内臓を引き出されて惨殺された。19世紀末のロンドンを恐怖の底に陥れた“切り裂きジャック”が、百年後のベルリンに甦ったのか?世界犯罪史上最大の謎「切り裂きジャック事件」を完全に解き明かした、本格ミステリー不朽の傑作。


1987年

1位 猛き箱舟 :船戸与一
あの「灰色熊」のような男になりたい。香坂正次は胸に野心を秘め、海外進出日本企業の非合法活動を担うその男に近づいて行った。彼に認められた正次の前には、血と暴力の支配するアフリカの大地が開けた。その仕事は、砂漠の小さな鉱山を、敵の攻撃から守ることだった―人の世の地獄、野望と絶望を謳いあげた大ロマン。

2位 土壇場でハリー・ライム :典厩五郎
1967年、東京六本木に近い雑居ビルの屋上から、一人の男が飛び降り自殺した。東都新聞文化部長の月田春之。しかしその部下の真木光雄には、それが自殺とはとても思えない。月田が死の直前、ゾルゲ関係史料を読み漁っていたのを知った真木は、和歌山県のアメリカ村に向かった。予想もしない事実が待ちうけているとも知らずに。第5回サントリーミステリー大賞、読者賞ダブル受賞。

3位 時のアラベスク :服部まゆみ
東京、冬。一本の真紅の薔薇から、惨劇の幕が開く。ロンドン、ブリュージュ、パリを経て、再び東京の冬。精緻な文体と巧妙なトリックを駆使して、人生の虚飾と愛憎を描く本格長編推理。本年度横溝正史賞受賞作。

4位 絆 :小杉健治
“夫殺し”の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって…状況は被告不利に傾むいてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第41回推理作家協会新人賞受賞作。

5位 風のターン・ロード :石井敏弘
み…美恵ちゃん…娘たちの喉を突き破って金切声がほとばしった。ふくよかな女の胸には1本のナイフが突きささっていた。Z2を駆って芹沢顕二は単身、犯人を捜しに走る。そこへ現われた“青い仔猫”という美貌のライダー。そして盲目のピアニスト怜子。疾走する青春群像を生き生きと描く江戸川乱歩賞受賞作。

6位 しあわせの書 :泡坂妻夫
二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団体“惟霊講会”。超能力を見込まれて信者の失踪事件を追うヨギガンジーは、布教のための小冊子「しあわせの書」に出会った。41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、実はある者の怪しげな企みが隠されていたのだ―。マジシャンでもある著者が、この文庫本で試みた驚くべき企てを、どうか未読の方には明かさないでください。

6位 北斎殺人事件 :高橋克彦
ボストン美術館で殺された老日本人画家とは何者か?一方日本では、謎の生涯を送った浮世絵師葛飾北斎の正体に迫ろうと研究家たちが資料を追う。北斎は隠密だった?日本とアメリカを結ぶキイはどの辺にあるのか、またキイを握る人物とは?浮世絵推理の第一人者の「写楽殺人事件」に続く傑作。日本推理作家協会賞作。

8位 十角館の殺人 :綾辻行人
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

9位 悪人は三度死ぬ :大谷羊太郎
殺された男が死亡推定時刻に電話をかけていた。その男は四年前の謎の焼死事件にも関与していたことが判明。かつてこの事件に関わっていた推理作家の浅井は、男の死を契機に再び事件の真相を追う。浮かび上がって来た奇怪な事実。そしてまた新たな殺人が…。乱歩賞作家が数々のトリックを駆使して贈る本格推理の極み。

10位 網走発遙かなり :島田荘司
東京郊外の高級住宅が並ぶ丘の上を毎日観察する老人の狙いは何か。また都心のデパートや地下街に出没するピエロの正体は?そして江戸川乱歩の古い写真を持つ老女の素顔とは。現代の東京に表出した奇妙な出来事の展開はやがて40年前の雪の北海道で起きた惨事のナゾ解きに向けてひた走る。鬼才ならではの壮大で周到な野心作。


1986年

1位 花園の迷宮 :山崎洋子
横浜の遊郭に2人の少女が売られて来た。飢えと不景気の昭和初期、歓楽の町に投げこまれた2人を、死と、恐るべき秘密が待っていた。娼家を次々と襲う殺人事件、人間の欲望の凄まじさ、少女のけなげさが、巧みな展開と伏線、意表をつく結末で余すところなく描かれる、江戸川乱歩賞受賞の傑作推理長編。

2位 百舌の叫ぶ夜 :逢坂剛
能登半島の突端にある孤狼畔で発見された記憶喪失の男は、妹と名乗る女によって兄の新谷和彦であると確認された。東京新宿では過激派集団による爆弾事件が発生、倉木尚武警部の妻が巻きぞえとなり死亡。そして豊明興業のテロリストと思われる新谷を尾行していた明星美希部長刑事。錯綜した人間関係の中で巻き起こる男たちの宿命の対決。その背後に隠された恐るべき陰謀。迫真のサスペンス長編小説。

3位 キャッツアイころがった :黒川博行
滋賀県北部の余呉湖で、身元不明の死体が発見された。唯一の手がかりは、胃の中にあった宝石キャッツアイ。続いて京都の美大生、大阪の日雇労働者が相次いで殺害され、ともにキャッツアイを口に含んでいた。事件の鍵は殺された美大生が死の直前に旅行していたインドにあると、啓子と弘美は一路彼の地へ旅立つ…。第4回サントリーミステリー大賞を受賞した、黒川博行の出世作。

4位 カディスの赤い星 :逢坂剛
直木賞を受賞した代表作を、装い新たに刊行フリーのPRマン・漆田は、ギタリストを探して奔走するうちに大きな事件に巻き込まれる。日本とスペインを舞台に展開される、サスペンスにみちた国際謀略小説。

5位 火刑都市 :島田荘司
東京四谷の雑居ビルの放火事件で若い警備員が焼死する。不審な死に警察の捜査が始まった。若者の日常生活に僅かに存在した女の影…。女の行方を追ううちに次の放火事件が発生した。こんどは赤坂。そして現場に“東京”という謎の文字が残される。索漠たる都市の内奥と現代人の心を見据えて鬼才が描く、印象深い推理長編。

6位 謀殺のメッセージ :松村喜雄
動乱のインドシナに消えた密使・辻政信の謎と真実!?昭和36年、国会議員・辻政信がラオスで消息を断った。8年後、失踪時効を前に、辻の行動の謎を追った毎朝新聞の山田は奇妙な疑惑にとらわれた。辻処刑説が囁かれ始めたのが失踪1年後、時を同じくしてジュネーブ協定調印、さらに日本大使館での3万ドル盗難事件!?そして今また大使館で起きた死体遺棄事件…!?辻が所持していたといわれるケネディ書簡とは何か?アメリカのインドシナからの名誉ある撤退の裏に秘められた国際的謀略を、当時外務省に勤務していた著者が推理作家協会賞受賞を機に放つ国際情報サスペンス推理。

7位 源氏物語人殺し絵巻 :長尾誠夫
卓抜なストーリーと意表をつくその結末。光源氏の生母・桐壷の怪死に端を発した源氏物語人殺し絵巻。サントリーミステリー大賞読者賞受賞作。

8位 二重裁判 :小杉健治
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

9位 コンピュータの熱い罠 :岡嶋二人
相性診断によって男女を引き合わせるコンピュータ結婚相談所。オペレータの夏村絵里子は、恋人の名前を登録者リストに見つけて愕然とする。「何かがおかしい」彼のデータを見直し、不審を抱いた絵里子を、正体不明の悪意が捕らえる。相次いで身辺で起きる殺人事件は、増殖する恐怖の始まりでしかなかった。

9位 死者の威嚇 :小杉健治
昭和57年―。東京・荒川の河川敷で、関東大震災直後に故なく虐殺された朝鮮人を慰霊するための遺骨発掘作業が行なわれた。葉山亜希子は恋人の室生浩一郎と一緒に、固唾をのんでこの作業を見守っていた。だが、遺骨は見つからず、3年後、朝鮮人遺骨とは関係のない男性の白骨死体が、発掘場所の近くで発見された。やがて、この白骨は20年位前に殺害されたものであることが判明、被害者の身元捜査がはじまった―。過去と現在が交錯する二重、三重の深い謎と、若い女性の恋愛心理を描く、新鋭の長篇ミステリー。

9位 わが郷愁のマリアンヌ :夏樹静子
ロンドンに赴任した貿易会社常務・倉内優二は、取引きを始めた陶磁器メーカーの女性オーナー社長マリアンヌと運命的な出会いをした。優二は、青年時代から憧れていた『嵐が丘』のヒロイン、キャサリンを彼女に投影し、会う度に思いは募っていった。その頃、彼女の会社のマージャーの死体が木立に囲まれたホテルで発見された…。北イングランドの荒野に展開する華麗な愛のミステリー。


1985年

1位 放課後 :東野圭吾
校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。先生を2人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将――犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第2の殺人が……。乱歩賞受賞の青春推理。

2位 見返り美人を消せ :石井竜生・井原まなみ
暗号に、トリックに切手趣味をちりばめ、卓抜な着想と斬新な趣向で絶賛を博した、第5回横溝正史賞受賞作。

2位 モーツァルトは子守唄を歌わない :森雅裕
第31回江戸川乱歩賞受賞作。楽譜に隠されたモーツァルトの死の真相とは!?ベートーヴェンと愛弟子チェルニーが、ウィーン宮廷、フリーメーソンの影がちらつくなか、謎に挑む。

4位 北の夕鶴2/3の殺人 :島田荘司

5位 名なし鳥飛んだ :土井行夫
新制高校の新任教師、小谷真紀(オタヤン)が日直の日、校長(ホトケ)が青酸カリで毒殺される。数日後、書道教師(ラッコ)が水死体で発見され、続いて社会科教師(マムシ)が絞殺された。戦後間もない学園を舞台に起こる連続殺人事件をユーモア・タッチで描く第3回サントリーミステリー大賞受賞作。

6位 チョコレートゲーム :岡嶋二人
学校という名の荒野をゆく、怖るべき中学生群像。名門秋川学園大付属中学3年A組の生徒が次々に惨殺された。連続殺人の原因として、百万単位の金がからんだチョコレートゲームが浮かび上がる。息子を失った一人の父親の孤独な闘いをたどる、愛と死のショッキング・サスペンス。日本推理作家協会賞受賞作。

7位 神話の果て :船戸与一
アメリカの巨大鉱業会社から、ペルーの山岳ゲリラの首領抹殺の仕事を依頼された破壊工作員・志度正平は、首都リマに到着、二人のインディオと共にゲリラの進発地チャカラコ渓谷に向かう。四千メートルを超すアンデスの山々を越え、ゲリラの基地に潜入した志度を待つ過酷な運命とは。南米三部作第二弾。

7位 背いて故郷 :志水辰夫
正体不明の船のやとわれ船長だったわたしは、2度目の出航で親友の成瀬と交替した。ところが成瀬は殺される。船に疑惑を抱いた彼は、ひそかに何かを探っていたらしい。わたしが友を殺した敵を追い求めると次々奇怪かつ危険な徴候に襲われ…。美しい大自然と人間の悪を精緻に描く秀作。日本推理作家協会賞受賞作品。

9位 雨はいつまで降り続く :森詠
元M新聞サイゴン特派員の矢沢建彦のもとへ、シエーというベトナム人から1通の手紙が届いた。ベトナム戦争当時、戦闘中に死んだはずの友人でジャーナリストの叶吾郎が生きているというのだ。叶の行方を探すため、矢沢は急遽、バンコックへ向かった。ベトナムに生き、愛し、闘った男たちへのレクイエム。

10位 夏、19歳の肖像 :島田荘司
バイク事故で入院中の青年が、病室の窓から目撃した「谷間の家」の恐るべき光景!ひそかに想いをよせる憧れの女性は、父親を刺殺し工事現場に埋めたのか?退院後、青年はある行動を開始する―。青春の苦い彷徨、その果てに待ち受ける衝撃の結末!青春ミステリー不朽の名作が、著者全面改稿のもと新装版として甦る。


1984年

1位 運命交響曲殺人事件 :由良三郎
その高名な指揮者の右手が力強く振りおろされて、“運命”の冒頭が会場に鳴り響いた。ダ、ダ、ダ、ダン!瞬間、指揮台が爆発し、指揮者の身体がふっ飛んだ…。事件を追う白河警視と甥の鉄平の前で、謎は思わぬ展開を始める。作者が元東大教授で話題を呼んだ第2回サントリーミステリー大賞受賞の本格推理。

2位 天女の末裔 :鳥井加南子
岐阜県王御滝郡神守地区、禁男の山中で坐女が生んだ女の子は、民俗学研究の学生が連れていったという。そのとき、村の男が殺され、坐女は殺人犯として服役する。村人たちは「イチミコサマの呪い」と呟くのみであった。そして23年後、再び山中で謎の殺人事件が起きた!江戸川乱歩賞の話題作。

3位 漱石と倫敦ミイラ殺人事件 :島田荘司
英国に留学中の夏目漱石は、夜毎、亡霊の声に悩まされ、思い余って、シャーロック・ホームズの許を訪ねた。そして、ホームズが抱える難事件の解決に一役買うことになる。それは、恐ろしい呪いをかけられた男が、一夜にしてミイラになってしまったという奇怪な事件であった!年少の読者にも読みやすい「総ルビ版」で贈る、第12回日本ミステリー文学大賞受賞記録企画。

4位 山猫の夏 :船戸与一
ブラジル東北部の町エクルウは、アンドラーデ家とビーステルフェルト家に支配されている。両家はことごとに対立反目し、殺し合いが絶えない。そんな怨念の町に、<山猫(オセロット)>こと弓削一徳(ゆげいっとく)がふらりと現れた。山猫の動く所、たちまち血しぶきがあがる。謎の山猫の恐るべき正体はいつ明かされる?南米3部作第1弾。

5位 獅子座 :藤雪夫・藤桂子
幼いふたりの娘を残して母はクリスマスの夜、突然失踪した。それから三十年…。埼玉県警隈ケ谷署に殺人現場目撃の匿名の手紙が届いた。それを裏づけるように金融業支店長の他殺体が見つかった。そして支店長の貸し金庫からは一枚の暗号紙片が。父娘合作で話題をよんだ感動の本格長編推理。

6位 懐かしき友へ :井上淳
1年後にアメリカ大統領選挙をひかえ、ゴードン大統領とハミルトン上院議員は激しい選挙戦を繰り広げていた。そんなおりロボトミー手術の専門家がハミルトンと接触をはかった。なぜか彼を消そうとするゴードン。その一方、元大統領のシンクレアはランナーと呼ばれる元CIA工作員と接触していた…。第2回サントリーミステリー大賞読者賞受賞の本格ポリティカル・サスペンス

7位 死びとの座 :鮎川哲也
一人めの被害者は、芸能人のミッキー中野こと秋葉原好一だった!彼は東京・中野区の公園に置かれたベンチに座っているところを、拳銃で撃ち抜かれて息絶えていた。―捜査陣は、つぎつぎに出現する密疑者に困惑する。スチュワーデス、フリーのルポライター、ライバルの同業者たち…動機をもつ人物が多すぎるのだ。鬼貫警部は北へ西へと奔走し、彼らのアリバイ工作を崩そうとするが、やっと嘘を見破っても、即犯人検挙とならないから厄介だ。

8位 私という名の変奏曲 :連城三紀彦
その冷やかな微笑としなやかな身のこなしで世界的ファッションモデルとして活躍中の美織レイ子が自宅マンションで死体となって発見された。彼女を殺す動機を持つ七人の男女―そしてそれぞれが「美織レイ子を殺したのは自分だ」と信じていたのだ!果たして真犯人は誰なのか?華やかな外見の裏にさまざまな欲望が渦巻くファッション界を舞台に展開される殺意の万華鏡。

8位 最後に愛を見たのは :夏樹静子
離婚した青山は、8歳の息子昇との不安定な生活で女手に窮していたが、手伝いに来た愛人加代子は、不審な死を遂げた。父親に去られた昇の同級生ミドリも、淋しい二つの家庭を結びつけようと、幼い知恵を働かせていたが…。結婚と離婚をめぐる様々な問題を考えて、愛と勇気に溢れた結末に導く、傑作長編。

10位 花嫁は二度眠る :泡坂妻夫
山形県米沢の旧家蘇芳家の当主カナが二度殺された。喜寿の祝いの夜、犯人はカナを絞殺し、翌朝、さらに鴨居から吊ったのだ。半年後、事件の目撃者・富樫幹夫が結婚式を挙げるのと同時に、挙式予定の従妹・貴詩が、その前夜、死体となって発見された。鬼才が放つ奇抜なトリックと斬新な構成で描く本格推理の秀作。


1983年

1位 写楽殺人事件 :高橋克彦
謎の絵師写楽の実体探査のなかで起こる殺人東洲斎写楽が誰だったのか?過去十数人の名が挙げられたがいずれも確証乏しい.美術史学者津田は核心に迫ろうとするが連続殺人に巻込まれた!第29回乱歩賞受賞

2位 虹へ、アヴァンチュール :鷹羽十九哉
青年カメラマンと熟年教師の探偵コンビが挑む数々の謎。第1回サントリーミステリー大賞に輝いた話題作!

3位 あした天気にしておくれ :岡嶋二人
競馬界を舞台にしたミステリーの最高傑作。北海道で3億2千万円のサラブレッド「セシア」が盗まれた。脅迫状が届き、「我々はセシアを誘拐した」で始まる文面は、身代金として2億円を要求してきていた。衆人環視のなかで、思いもかけぬ見事な方法で大金が奪われる。鮮やかなトリックが冴える長編会心作。

3位 桜子は帰ってきたか :麗羅
敗戦の満州から桜子は果して脱出できたのか?史上初の読者による選考で圧倒的支持を得た長篇推理。

5位 ホック氏の異郷の冒険 :加納一朗
陸奥宗光が極秘に認めた文書が鹿鳴館の一室から消えた。公開されれば深刻な国際問題となる。この極秘文書漏洩事件の解決を依頼されたのは開業医の榎元信と謎の英国人ホック氏。だが、事件の鍵を握る人物が殺され、二人に危難が襲いかかる。はたして文書は無事取り戻せるのか。

6位 モナ・リザの身代金 :三好徹

7位 檻 :北方謙三
スーパーの親爺。ヤクザからは足を洗った。ありふれた生活。だが、心はいつも別の何かを求めていた…。檻の中に留まりきれない男の野性と滅びの美学を鮮烈な叙情で謳う。

8位 訃報は午後二時に届く :夏樹静子
ゴルフ場経営者が殺された。出入りの造園会社社長・大北耕介が容疑者として浮上するが、失踪。やがて留守宅に、死後切断したと思われる大北の小指が届けられたのだ!?二転三転の展開と鮮やかなトリックで魅了し、日本推理史に輝く名作。

8位 アガサ・クリスティ殺人事件 :河野典生
名探偵エルキュール・ポワロは実在し、名作『オリエント急行の殺人』事件は、それが書かれる前年の1933年、南インドで実際に起こった事件だった!45年後の1978年、作家・高田晨一はインド政府の招待旅行で、老人のポワロと出会う。ポワロの手には、〈かつての現場・ハイデラバード急行内でふたたび殺人が起こる〉との脅迫状が…。やがて、予告どおりに列車内で殺人が発生した!全世界のクリスティ・ファンに挑戦する本格推理小説の傑作!

10位 妖女のねむり :泡坂妻夫
わたしたちは結ばれることなく死んでいった恋人たちの生まれかわりよ。十五世紀のフィレンツェで巡りあったジュリアーノとシモネッタは悲恋に終わり、西原牧湖だった二十二年前のわたしは、平吹貢一郎だったあなたを殺してしまったの。今度こそ幸せになりましょう…。初対面のはずが深いところで響き合う真一と麻芸。前世をたどる二人が解き明かしていく秘められた事実とは。


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