スーザン・ウィッグス「一度の夏では足りなくて」☆☆☆

一度の夏では足りなくて

29歳のシングルマザーのケイトは、夏休みにポートアンジェルス・クレセント湖畔にある静かな別荘に、9歳になる息子アーロンと二人でやってきた。

ケイトが子供だった頃から毎年家族とひと夏を過ごしてきた別荘だったが、父は亡くなり、再婚した母親はフロリダに移り、兄一家も東海岸の方に引っ越したため、今年は母子二人だけの夏になる。

父親を渇望するアーロンは、素直で明るいが気むずかしいところのある子。

地方紙の記者をしながらアーロンを育ててきたケイトは、子どもが一番という働き方をしていた事からリストラに会ってしまい、父の遺産の不動産収入があるため今の生活に心配はないものの、これからの生き方をゆっくりと考える気持ちでいた。

そんなケイトが別荘で出会ったのはカリーという名のホームレスの家出少女で、里親の元から逃げ出したカリーの悲惨な境遇を知ったケイトは、カリーに夏のあいだ一緒に暮らすことを提案する。

ケイトたちが滞在する別荘の近くで隠者のように暮らしている男性JDは、ふとしたことからケイト親子と知り合い、ケイトの事を知るにつけ強く惹かれていく。

しかしJDは大統領を偶然暗殺から救った事で英雄扱いされ、マスコミに追いかけ回されプライバシーを晒されて人間不信に陥り、人里離れた親友の別荘を借りて静養しているところだった。

自分の正体を明かせないままケイトと付き合うJDと、男運のなさから恋愛にネガティブになるケイト。さて二人の恋の行方は・・・。


静かな湖畔の別荘地を舞台にして、恋愛に臆病な二人の心情を描いた2006年のRITA賞受賞のロマンス小説です。

ワケありの二人の恋愛というだけでなく、カリーを始めとする愛に飢える人たちや家族のあり方などが丁寧に描かれていて、S.E.フィリップスの「ファースト・レディ」などと共通する人間や家族の再生ドラマになっています。

それ程劇的な展開があるわけでもありませんが、こういう落ち着いた雰囲気のラブ・ロマンスが管理人は好きです。

面白かったですね。


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