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スーザン・エリザベス・フィリップス 「ファースト・レディ」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「ファースト・レディ」☆☆☆

ファースト・レディ

副大統領まで務めた政治家の娘として、幼い頃から立ち居振る舞いを厳しく躾けられてきたニーリーは、父親の望むがままにカリスマ性のある若手政治家と結婚し、彼が大統領に就任したためにファースト・レディとなった。

ところが夫が暗殺されてしまい、若くして未亡人に・・・。

長い間その言動を世間に注目され、行動を束縛されてきた日々ともこれでお別れできる・・・と思いきや、後任の大統領は独身で、ファースト・レディとなるに相応しい親戚の女性もいない。

そんなわけで仕方なく、ニーリーは今でもファースト・レディとしての役目を続けていた。

しかしファースト・レディには自由な時間がない。

そんな生活にストレスがたまったニーリーは、つかのまの自由を求めてホワイト・ハウスから密かに脱け出す。

妊婦に変装したニーリーは中古車を手に入れて気ままな旅に出るが、クルマに鍵をかけずに食事に出ている間にクルマを盗まれてしまう。

短い逃避行もここまでかと気落ちしたニーリーが出会ったのが、ジャーナリストのマット、マットの別れた妻の娘で生意気盛りの少女ルーシー、そしてルーシーの妹の赤ん坊バットという不思議な3人連れ。

マットは自分がまだ若かりし頃にほんの短い間だけ結婚していた女性が事故で亡くなったという連絡を受け、血の繋がっていない二人の娘を彼女たちの祖母の元に連れて行く途中だった。

ひょんな事からニーリーはこの3人と一緒に、おんぼろのモーター・ホームで旅を始めるようになるのだが・・・。


2001年のRITA賞(米国ロマンス作家協会賞)を受賞したロマンス小説です。

管理人はこの作品を読んで、ロマンス小説に対する見方が少し変わりました。

お互いに正体を隠したまま旅をしているうちに惹かれあっていくニーリーとマットの二人に、マットに憧れの父親の面影を抱く口の悪い少女ルーシーと、マットに懐いてしまう赤ん坊のバット。

彼らの掛け合いや洒落た会話、心境の変化などが自然に描かれていて、読んでいて楽しいロード・ノベルです。

小さい頃から7人の妹の面倒を見てきて、もう子供なんか見るのも御免だと言いながらも、生来の優しさからついつい他人の娘たちの面倒を見てしまうマット。

誰もが自分の前では遠慮する窮屈な生活から、気取らずに好き勝手なことが言える事に新鮮な喜びを覚えるニーリー。

世慣れて悪ぶれたフリをしているけど、心の中では強く愛情を求めている純真な少女ルーシーと、登場人物が類型的ですけどスゴク魅力的です。

管理人はロマンス小説らしい予定調和のハッピーなラストシーンが好きです。

登場人物の会話がユーモラスで楽しくて、良くあるマッチョな男と絶世の美女が一目で恋に落ちるような類のロマンス小説と違って、赤の他人が家族のような雰囲気になっていく流れも自然だし感動的。

とても面白い作品でした。