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ジェニファー・セント・ジャイルズ「禁じられた城の秘密」の感想です。

ジェニファー・セント・ジャイルズ「禁じられた城の秘密」☆☆☆

禁じられた城の秘密

自分の意に沿わず不吉な予知夢を見てしまう女性カシオペア(キャシー)・アンドリュースは、ある夜従姉メアリーが危険な目に遭っている夢を見る。

予知夢によりメアリーの身に異変が起きた事を知ったキャシーは、メアリーが家庭教師を勤めている海辺にある城キルダレンへと駆けつけるが、分かったことはメアリーが失踪したという事実だけだった。

キルダレン城主ショーンの父である伯爵に遠慮しているのか、失踪事件の調査を行う憲兵隊長は真剣に調べている様子がしない。

憲兵隊の対応に業を煮やしたキャシーは、自らメアリーの行方を探るべく、城の下級メイドに身をやつしてキルダレン城に潜入する。

キルダレン城には、日中はいっさい姿を現さない謎めいた伯爵家次男の城主ショーン、盲目の少女と美しい彼女の母親、知恵遅れの青年とその兄、厳格な家政婦などが住み、重苦しい雰囲気が漂う。

ある夜メアリー失踪の謎を解明するために秘かに城の中を調べていたキャシーは、城主ショーンに偶然出逢ってしまう。

寡黙で暗い雰囲気を漂わせながら人を惹きつける魅力を持つショーンに、キャシーは強く惹かれていくのだが。


不思議な能力を持つ三姉妹を主人公にした「キルダレン」シリーズの第1作目の作品で、全体的にゴシック調の重厚な雰囲気を感じさせるヒストリカル・サスペンスです。

城に影を落とす怪我をした城主と一族にまつわる謎やメアリー失踪の真実を探るミステリィが上手く描かれていて、呪われた城の雰囲気が格調の高さを感じさせます。

一般的なヒストリカル・ロマンスには華やかな舞踏会が有って、身分が高くて少し高慢な雰囲気の男性と、茶目っ気が有って教養豊かだけど身分は少し劣る女性がお互いに誤解しながらも惹かれあって、オシャレな会話をかわしながらいつか結ばれるというパターンが多いような気がしますが、この小説の雰囲気はもっと落ち着いた感じです。

全体的に浮ついた感じのしない作品で、読み応えがありました。一応ハッピーエンドで終わりますが、提示された謎自体は次作に続いています。

「キルダレン」シリーズ。
「禁じられた城の秘密」(本書)
竜ひそむ入り江の秘密
海を渡る呼び声の秘密