池井戸潤「七つの会議」☆☆☆

七つの会議

日本有数の電機メーカー・ソニックの子会社の中堅メーカー・東京建電でパワハラ事件が発生し、加害者としてエリート課長坂戸が更迭された。

この作品はパワハラから始まった事件の謎解きが、東京建電のそれぞれ異なる社員の視点による8篇の連作短編で描かれていきます。

それぞれの作品の主人公が異なり、主題が微妙に違った物語が展開され、最近の池井戸作品によくある善玉/悪玉がはっきりした勧善懲悪の話とは少し違った印象の作品が多くて、とても面白い企業小説でした。

もちろん善悪がハッキリ定められていないとは言っても、池井戸作品ならではのポリシーは健在で、「客を大事にしない商売は滅びる」という企業活動の根底に関わる命題はしっかりと描かれています。

また作品全体を通しての主人公は、自分の生き方を貫いたために不遇のサラリーマン人生だった中年男性で、こういう人物の存在が作品のポイントになっています。

効率だけが優先されてきた企業の現実がなかなか厳しく描かれていますが、読み終えた感想が必ずしも悲観的ではないのが池井戸作品らしくて良いですね。

ただ真犯人というか、事件の黒幕的な存在や、そのやり方にリアリティが感じられなかったのが少々残念でした。


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