池井戸潤「仇敵」☆☆☆
メガバンクのエリート行員だった恋窪商太郎は、行内の不正を追ううちに相手の陥穽に嵌まり、メガバンクを辞めざるを得なくなった。
退職した恋窪は過去の実績を忘れて、地場の小さな銀行の庶務行員になるが、彼の過去を知らない若い営業課員の相談に乗るうちに銀行マンとしてのプライドが蘇ってくる。
エリート銀行員だった男が巨悪に立ち向かっていく姿を描いた経済ミステリィで、8篇の連作短編集です。
池井戸潤お得意のテーマですから、似たようなプロットの作品が他にも有りますけれど、この作品は厳しい競争社会から気楽な庶務行員になった元エリート銀行員の平穏な日々や、古巣でまだ続いている権力闘争に巻き込まれながらも奮闘する姿が心地よく、読後感もスッキリして楽しめる作品です。
人間到る処青山有り、権力や出世や金銭には恵まれていなくても、自分の能力を自然体に活かせる生き方を見つけた男の強みのようなものがあって、管理人は好きな作品です。