池井戸潤「BT'63」☆☆☆
大間木琢磨は精神病を患った事から仕事なくし、妻とも別れることになった。
そんな彼が病から回復した時に見つけたのは、亡くなった父親が若かりし頃に勤めていた運送業者の制服だった。
琢磨が寡黙だった亡父・史郎を思いながら、何となく制服に袖を通した瞬間、彼の意識は40年前の父親の中に飛んで行く。
琢磨が生まれる前の時代、独身の史郎は経営不振に陥った勤め先の運送会社を立て直すため、妻を亡くしてからやる気を失っている社長を説得して、新しい宅配便業務に乗り出そうとしていた。
しかし会社は組織犯罪に巻き込まれ、とんでもない事態に陥ることに・・・。
現代で事件の謎を追いかける琢磨と、40年前の史郎と一体化した琢磨の目を通した過去の出来事を交互に描きながら、物語は過去に起きた事件の謎と、語られる事のなかった父親の青春時代を鮮やかに浮かび上がらせます。
過去の出来事を体験する現代の青年とその父親を描いている、少し不思議な雰囲気のするミステリィで、東京オリンピックが開催される前年1963年を主な舞台にしているためノスタルジックな作品になっています。
ちょっと書き込みが足りないかなぁという気もしましたが、青年の再生を描いた物語で大変面白かったです。