池井戸潤「ロスジェネの逆襲」☆☆☆

ロスジェネの逆襲

「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」に続く、バブル期に一流都市銀行に入行した正義感あふれる銀行員・半沢直樹を主人公にしたビジネス小説です。


東京中央銀行の系列子会社である東京セントラル証券に、IT企業電脳雑伎集団の平沢社長からM&Aを仕掛けたいという話が持ちかけられた。

買収先は順調に業績を伸ばしているベンチャー企業の東京スパイラルで、東京中央銀行から出向している営業部長の半沢は、漠然とした不安を抱きながらも電脳雑伎集団とアドバイザー契約を結ぶことを決める。

東京セントラル証券の今期業績は冴えず、半沢と同じ出向組の社長は、このM&Aに大いに乗り気になっていた。

ところが提案書を出す間もなく、アドバイザーの座を親会社の東京中央銀行の証券営業部に奪われてしまう。

更には東京中央銀行と電脳雑伎集団は、時間外取引による株取得という手段で東京スパイラルの株を入手し、東京スパイラルの公開買付を発表した。

仁義なき親会社のやり口に憤りを感じた半沢は、この買収劇に不穏な気配を感じ、部下でセントラル証券プロパー社員の森山雅弘とともに、森山の中学・高校時代の親友だったと言う東京スパイラルの社長に面会するのだが・・・。


池井戸潤お得意の銀行内部の派閥争い、出世のためならコンプライアンス上問題あることにも手を染めるビジネスマンを交えて、痛快な企業小説になっています。

話の展開が都合良すぎるし、主人公たちの適格な行動に対して、敵役が取る行動が少々間が抜けているしで、気になる点は多々ありますけど、読んでいる最中は勢いもあって気になりませんでした。

主人公・半沢の企業人・銀行員としての筋を通した生き方が毅然としているので、些細なことにこだわるよりも勧善懲悪の物語を素直に楽しみたいと思います。

とても面白い作品でした。


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