ロイス・マクマスター・ビジョルド「影の王国」☆☆
今にも息を引き取ろうとしている聖王の第三王子が静養先で殺された。
国事尚書(宰相みたいなものか?)に犯人の護送と王子の遺体を都に運ぶよう現地に派遣されたイングレイは、王子を殺害した女性イジャダを見て驚愕し、わけの分からない殺意にとらわれる。
殺意の衝動をどうにか抑えてイジャダと向き合ったイングレイは、イジャダの中に豹の精霊を見る。
どうやら殺された王子は禁じられた秘術を行い、イジャダの命を使って動物の霊を自分の中に取り込もうとしたらしい。
しかしイジャダの抵抗に会って王子は命を失い、豹の精霊はイジャダの身体の中に入り込んでしまった。
動物の霊につかれた人間は穢らわしいものとして神の世界に行けず、時には教会で死刑にされる。
イングレイ自身も父の行った術により狼に憑依された人間だったが、意志の力と訓練とで何とか狼の精霊を抑えこんでいた。
時にイジャダに殺意を抱き、時には美しいイジャダに惹かれるものを感じながら、イングレイはイジャダを連れ都に向かう。
動物の精霊を憑依させることにより大きな力を得ていた古代ウィールドの戦士の物語を軸にして繰り広げられる、イングレイとイジャダ、聖王と古代ウィールドの王、そして5柱の神々との関わりを描いた異世界ファンタジィです。
イジャダに惹かれながらも、なかなかそれを認めようとしないイングレイがいじましいですね。
5柱の神々が住まう国を舞台にした「五神教シリーズ」の第3作目の作品ですが、前2作とは舞台が少し変わります。
登場人物も重複しないので、同じ世界が舞台になっているものの全く別の作品といった感じです。
面白い作品ですが、ただ正直言えば前2作がすごく面白かったので、それに比べれば少し落ちるかな、といったところでしょうか。
五神教(チャリオン)シリーズ