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ロイス・マクマスター・ビジョルド 「チャリオンの影」の感想です。

ロイス・マクマスター・ビジョルド「チャリオンの影」☆☆☆

チャリオンの影

五柱の神々を崇める異世界チャリオンを舞台にしたファンタジィ・五神教シリーズの1作目の作品です。

過酷な籠城戦の末に味方の裏切りに会い、敵国ロクナルに捕らえられてガレー船の奴隷にまで成り果てたチャリオンの武将カザリルは、何とかガレー船から逃げ出して、心身ともに疲れ果てた状態で故国に舞い戻った。

彼が少年の頃に仕えたバオシア藩の藩妃の元を訪ねると、藩妃の計らいで藩妃の孫娘で国主の妹イセーレの教育係兼家令に任ぜられる。

お転婆な娘イセーレに国主の妹としての心構えや立ち居振る舞いなどを説きながら、家令として平穏な日々を過ごしていたカザリルだが、ある日イセーレ姫が国太子である弟と共に陰謀渦巻く宮廷に出仕することが決まり、カザリルも意に染まぬながらも都に赴くこととなる。

だが都では、カザリルを裏切り奴隷の地位にまで陥れた宿敵が、強大な力を握る一族の高官として権力を振るっていた。


チャリオン王家を覆う呪詛の黒い影、宮廷に渦巻く陰謀、神々の謎めいたはかりごとなどを巧みに交えながら物語が進むスケールの大きな異世界ファンタジィです。

管理人はこういうファンタジィが大好きで、熱中して読んでしまいました。

父神、母神、御子神、姫神、庶子神の五柱の神々が人間社会を見守っているという設定の世界で、神々は時折人間の側に降臨して大きな影響を与えていきます。

カザリルもそうした神の影響を受けた人間の一人となり、大きな責任を持って王国のために宿敵と対峙するようになります。

まだ35歳だというのに、くたびれた中年男の悲哀を時折漂わす主人公カザリルに、管理人はついつい感情移入してしまいます。

くたびれていても高潔で良識のある優れた人物なので、応援してしまうし、いろいろと見せ場も多いし、イセーレの付き人の若い娘が彼に好意を持つのも分からないでもない。

続編の「影の棲む城」が2004年のヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞とSF関連の各賞を総なめにしていますが、管理人は「チャリオンの影」の方が面白かったですね。

全体的に良く作られた異世界ファンタジィ・シリーズで、ファンタジィ・ファンならずともお勧め出来る作品です。

五神教(チャリオン)シリーズ

  1. 「チャリオンの影」(本書)
  2. 影の棲む城
  3. 影の王国
  4. 魔術師ペンリック
  5. 「魔術師ペンリックの使命」