ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル&スティーヴン・バーンズ共著「アヴァロンの闇」☆☆☆
遠い未来、人類は世界中から少数の超優秀な人材を選別して、冷凍睡眠を使った宇宙旅行にて遥か彼方の惑星アヴァロンに殖民した。
殖民はただ一度しか行われず、選ばれた200人足らずの人々は地球からの手助けもなく、自らの手だけで未知の世界を切り開いていかなければならない。
植民者は知力・体力ともに優れた人たちだったが、長期間にわたる冷凍睡眠は一部の人間の脳に損傷を与え、かつては持っていたはずの知能や能力を蝕んでしまった。
それでも植民者たちはキャメロットと名づけた島にコロニーを作り、理想郷とも言える美しい星アヴァロンでの新生活を始める。
アヴァロン原生の生物は、取り放題の魚のような生物しか見当たらない安全な場所で始まった植民活動。
しかし、突然コロニーで飼育している地球産の動物たちが、何者かに次々と惨殺され始めた。
どこからともなく現れる凶悪な未知の生物の影。そしてある夜、その恐怖が姿を現す。
こんな感じで非常にストレートに展開されるSF冒険小説です。
人類初めての未知の惑星への殖民、姿を見せない正体不明の生物、冷凍睡眠で脳が損傷した天才たち、200人の植民者の人間関係など、これだけの素材があればSFとして充分に書き込んでいけると思うし、この作者たちならその力量は間違いなくあると思います。
しかしこの作品は、これだけの興味深い背景を持ちながらエンターティメントに徹して、映画「エイリアン」に出てくるような無敵の生物を作り上げて、その恐ろしい怪物と孤立無援の人類との対決に的を絞って書き込まれています。
ともかく極論すれば、怪物と戦う人々の話、ただこれだけの話ですけど、本当にワクワクドキドキしながら楽しめます。
割り切って書かれたエンターティメントですが、それでいて奥の深さも感じられるすごいSF小説です。
尚、続編の「アヴァロンの戦塵」も、とても面白い作品です。