面白い本を探す

五十嵐貴久「ウエディング・ベル」の感想です。

五十嵐貴久「ウエディング・ベル」☆☆☆

ウエディング・ベル

一種の勢いで14歳年下の児島くんと付き合う事になった38歳の「私」川村晶子。「私」の年齢もあって児島くんは早いところ結婚しようと思っているけど、「私」の周囲で二人の関係に賛成してくれる人は殆どいない。

何故か児島くんのお父さんは「私」に好意的で強く反対している様子はないのだが、「私」の両親、特に頑固者の父親は大反対。

弟を巻き込んだ説得にも耳を貸さず、児島くん本人に会うことすら拒否していて、取り付く島もない。

でも常識人の「私」は両親の反対を押し切って結婚するにはためらいがあるし、若いのに出来た男の児島くんも両親を説得してからと思っている。

さらに課長になった私は、大ヒット商品の販売方針をめぐって起きている社内の対立に巻き込まれて、プライベートなことだけに関わっている訳にもいかず・・・。


年の離れたカップルの結婚をめぐる騒動を描いた「年下の男の子」の続編です。

前作よりも更にリアリティが出てきたような感じですね。

「今は良いけど、お前が50歳になった時、彼はまだ36歳だ」という晶子の父親の意見は常識的で、晶子自身も何度も自問してきた言葉ですけど、でもそれでも私たちは大丈夫という感覚は、当人でないと分からないものなのでしょう。

晶子が児島くんの友人たちと会う場面、逆に児島くんが晶子の友人たちと会う場面が何だかおかしいですね。

ここまで周囲から反対されると、逆に突き進んで行くということが良くありますけど、この二人はあくまでも冷静な大人の対応です。

一緒にいると何となく落ち着いてイイ気分でいられるこのカップルの恋愛は、どんな障害があろうとも乗り越えて一直線に前に進むという熱情はあまりなくて、それだけに実際にありそうな印象を受けます。

こういう恋愛小説があっても良いよね。