テリー・ブルックス「魔法の王国売ります!」☆☆☆
弁護士のベン・ホリディは最愛の妻を亡くしてから、生きがいを失い失意の日々を送っていた。
ある日そんな彼の元に、有名百貨店から通販カタログが届いた。
何気なくそのカタログを眺めていたベンの目に止まったのは「魔法の王国売ります」という不思議な広告。
今の落ち込んだ状況から抜け出したいベンは、魔法の王国への憧れと好奇心に惹かれて百貨店の特別室に出向き、妙に陰気な男から魔法の王国ランドオーバーを購入してしまう。
商品である魔法の王国の詳しい説明もないまま、王国に入る鍵だと渡された奇妙なメダルを持って、半信半疑で指定された場所に出かけたベンは、何と本当に魔法の王国に入ってしまった。
王位の証であるメダルを持つベンは、確かにランドオーバーの王になれた。
しかしランドオーバーは斜陽の王国だった。
家来と呼べるのは、いつも魔法に失敗する宮廷魔術師クエスター・スーズとクエスターの失敗で犬の姿に変身させられた宮廷書記アバーナシイ、そしてトラブルを引き起こしてばかりいる厄介者のノーム、フィリップとソットのみ。
長らく王が不在で国が不安定だった為、国庫は空っぽで王城は荒廃し、更に妖魔がランドオーバーを狙って攻めこもうとしている。
王国の危機に馳せ参じるパラディンという伝説の騎士がいるらしいが、どこにいるのかも分からない。
そんな中で、悲惨な状況に呆れながらもベンは国王として王国を建てなおさんと奮闘を始めるのだが・・・。
現実世界から魔法の世界に行くという物語は沢山読みましたが、魔法の国を買うという発想のファンタジィに出会ったのはこの作品が初めてです。
しかも王国はボロボロ、曰く有りげな魔女やドラゴンも登場して、そうした混乱の中で買主の弁護士が何とかしようと孤軍奮闘する有様が可笑しいけど、それでいて不思議とバカバカしさを感じさせないファンタジィです。
この作品の後にも、「黒いユニコーン」「魔術師の大失敗」「大魔王の逆襲」「見習い魔女にご用心」とランドオーバー・シリーズ5作が邦訳されていて、面白くて素敵なユーモア・ファンタジィ・シリーズです。
絶版なのが本当に残念です。