阿刀田高「冷蔵庫より愛をこめて」☆☆☆
独特の味わいのブラック・ユーモアがいっぱい詰まった阿刀田高の18篇のショート・ショート集です。
表題作「冷蔵庫より愛をこめて」はサイコ・サスペンスの風味があって、どこかロアルド・ダールが好きそうな感じの作品です。
市内のマンションで弟と二人暮らしの40歳くらいの女性は香典ドロボウ?という「趣味を持つ女」はタイトルが秀悦ですね。
「わたし食べる人」は当時こんなセリフのCMが話題になりましたかね・・・食通の男の物語ですが、実に切れの良いブラックな話です。
その他にも、皮肉の効いた「仮装パーテイ」「夜の真珠貝」「幽霊面会術」「ギャンブル狂夫人」、オチが怖い「最後の配達人」「ホーム・スイート・ホーム」「歌を忘れない鸚鵡」などなど、どの作品も万遍なくブラックで、どことなく滑稽味も感じられて、本当に上手ですよねぇ・・・。
そうした薄気味悪い話が多い中で、「幸福通信」が少し人情味が有って意外性もあって、異彩を放っている感じがします。
しかしこの手の短編は書き続けるのが至難の業で、阿刀田作品も初期の作品のほうが上質で切れ味があります。
そういう点でも、この短篇集は阿刀田高の最盛期の作品集という感じで、やっぱり粒ぞろいですごい。