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スーザン・エリザベス・フィリップス 「幻想を求めて」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「幻想を求めて」☆☆☆

幻想を求めて

一人娘を溺愛し甘やかして育てる華やかな母親と、愛人を囲い実の娘とその母親には全く無関心の父親に育てられたシュガーベスは、気が強くて華やかな美人で何をやってもそつなくこなす少女だったが、教師でさえ遠慮する学園の女王として君臨し、しかも学校で一番底意地の悪い娘と呼ばれていた。

高校卒業と同時に故郷も恋人も友人も捨て、都会に出て華やかな生活をおくっていたシュガーベス。

母が亡くなった後に愛人と再婚した父親とは縁を切って、遺産も受け取らずに気ままに暮らしていた彼女が15年ぶりに故郷に帰ってきた。

3度の結婚に失敗して今は独り身の彼女が故郷に戻ってきた理由は、亡くなった叔母が彼女に残した遺産である有名画家の幻の作品を手に入れる為だったが、その絵がなかなか見つけられず、町はシュガーベスに反感を持つ人ばかり。

しかも彼女の隣人は、彼女の高校時代の恩師で今は著名な作家となったコリンだった。

我儘な高校生の頃、イギリス出身の教師コリンに言動を諌められた事に腹を立てたシュガーベスは、彼に暴行されたと虚偽の申し立てを行い、娘に甘い母親が大騒ぎしたことからコリンは国外追放の目に会っている。

その時の恨みと屈辱をコリンは今も忘れていずに、事有るごとに彼女に仕返しを考えている。

一文無しで生活にも事欠くシュガーベスは、そんな訳ありの仲のコリンの家政婦として働かざるを得なくなるのだが・・・。


父親に認められない寂しさから我儘いっぱいに行動し、周囲の人間に迷惑のかけ放題だったシュガーベスが、15年の月日と思いやりにあふれた歳の離れた亡き夫のおかげで大人に成長して、若かりし頃の自分の行動のツケを払う気持ちで昔の知り合いと接しているうちに、周囲の誤解が溶け始めて、コリンとの仲が進展していくというロマンス小説です。

主人公のシュガーベスが、機転がきいてユーモアを解するとても魅力的な女性で、作品の中で交わされている会話も面白い。

シュガーベスが高校時代にもっともひどい目にあわせた腹違いの妹ウィニーとの関係もなかなか良く描かれています。

良く出来たロマンス小説ですけど、たんなるロマンス小説にとどまらずに人間関係や家族や友情の再生の話が書かれているところが、管理人は好きです。