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スーザン・エリザベス・フィリップス 「あの丘の向こうに」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「あの丘の向こうに」☆☆☆

あの丘の向こうに

スーザン・エリザベス・フィリップスの既刊作品のスピンオフの集大成といった感じがする作品です。

彼女の全作品を読んだわけではないので他にもあるかも知れませんが、「きらめきの妖精」「きらめく星のように」「麗しのファンシー・レディ」「レディ・エマの微笑み」「ファースト・レディ」などの登場人物が様々な形で登場してきます。


ハリウッドの大物俳優でプロデューサーとしても活躍中のジェイク・コランダと、その妻で凄腕エージェントの元スーパーモデル・フルールの娘メグ・コランダは、親友ルーシーの結婚式に出席するためテキサスの田舎町ウィネットにやって来た。

しかし結婚前夜のパーティーの席上でルーシーは何故か浮かない様子で、全てが完璧な花婿テッド・ビューダインとルーシーを見ているうちに、メグはこの結婚は間違っていると直感する。

ルーシーに間違った行動は取るべきでないと忠告するが、今更結婚を止められないと語るルーシー。しかし結婚式が始まったその時、ルーシーは突然結婚を取りやめて姿をくらましてしまう。

町の人たち、花婿テッドとその両親、ルーシーの両親や家族は、メグがルーシーに嫉妬して不安定な気分のルーシーをそそのかしたと非難するが・・・。


恵まれた環境に生まれ育った主人公が苦境に陥りながらも、持ち前の負けん気と明るい性格で周囲の理解を得て成長していき、最後は理想の男性に巡りあうというパターンの、作者お得意のロマンス小説です。

美男・美女の娘なのに自分は器量が悪いと思い込んでいるメグは、自分のライフワークを探しているものの見つけられずにいて、定職もなくいつまでも両親の庇護を受けている事に後ろめたさを感じている。

そんな娘ルーシーを諌めるため両親が仕送りを止めるという荒療治をしたそのタイミングで、ルーシーの失踪事件が起こって、メグは周囲が敵だらけというウィネットの町に無一文で取り残されてしまう。

自分には何の取り柄もないと自覚しているメグは、それでもこの窮地を何としてでも切り抜けて見せると、町の人たちのいじめを受けながらもホテルの雑用係として働き出します。

初めはメグを冷ややかに見ていた完璧な男テッドは、裏表がない性格でテッドに対して厳しい事を平気で話し、町中から嫌われていながらも毅然としてなすべきことをしているメグが気になりはじめ、メグにルーシーには感じなかった欲望を感じてしまいます。

こういった、人間、家族、地域が再生する物語はなかなか良いものです。

ちょっと始めは力技というかムリがある設定だと思いましたけど、それでも読ませてしまうところが、この作者のスゴイところですね。