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スーザン・エリザベス・フィリップス 「トスカーナの晩夏」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「トスカーナの晩夏」☆☆☆

トスカーナの晩夏

常に前向きな気持ちで生きていくことを推奨する自己啓発書を書いてベストセラーを連発する実践的な心理学者イザベルに、ある日突然想像もしていなかった不運が襲いかかった。

イザベルの事務所で働いていた女性スタッフが、彼女に関して悪意ある記事を書いた事を知って落ち込み、そこにイザベルのマネージャーが彼女の全財産を持ち逃げしたとの知らせ。

その上国税庁からは巨額の税金滞納の通知が届き、最後に婚約者マイケルから別れの言葉を告げられる。

この一連の出来事にはさすがのイザベルも耐えきれず、ふとしたきっかけからイタリア・トスカーナ地方の古い農家を改装した貸し別荘で静養する事にする。

貸し別荘の所有者は女性を切り刻む精神異常者の役で名を馳せたハリウッドの大物俳優ロレンゾ・ゲイジで、新しい映画の役作りのためお忍びで自分の屋敷に来ていたゲイジは、別荘を貸すことに難色を示すが・・・。


主な舞台はトスカーナで、現地の人たちは誰もがイザベルが別荘を借りる事に良い顔をせず、微妙な嫌がらせをしたりします。

しかし貸し別荘が気に入ったイザベルは、家主のロレンゾに直談判してトスカーナでの休暇を楽しむ事にしますが、そのうちロレンゾとイザベルはお互いのことが気になりだします。

人生を素朴に生きる人たちが毎日楽しく暮らしている景色が、読んでいて気持ちを明るくさせてくれます。

一見気難しそうな男ロレンゾと、基本は前向きで明るい女性イザベルですが、性格的に正反対だというイザベルとロレンゾの恋の行方が気の利いた会話とともに楽しめますし、トスカーナ地方の観光案内のような描写や、そこで暮らす人々の生活が興味深くて、徐々に自信を取り戻していくイザベルと人の良い登場人物たちの姿に、人間が何だか好きになるような作品です。

最後の方は唐突な決着という気もしますけど、全体的にはS.E.フィリップスらしい味わいがあって、明るい陽光のトスカーナの雰囲気が感じられて、バカンスを楽しんだような気持ちになれる素敵なロマンス小説です。