山本周五郎「ちいさこべ」☆☆☆
管理人は表題作「ちいさこべ」が好きで何度も読み返しています。
お江戸の町で大火事が起こり、川越で仕事中の若き大工の棟梁・茂次の家も焼かれ、両親も店もなくしてしまう。
しかし途中で仕事を放り出すわけにはいかないと、茂次は現地の仕事を仕上げてから江戸に戻った。
そんな江戸の店では、下働きとして雇われていた茂次の幼馴染のおりつが、火事で焼け出された孤児たちを集めて面倒を見ていた。
店の再興を図る茂次は、10人以上の子どもの面倒をみるのは無理だと話すが、わたしが面倒をみるというおりつの申し出に同意して、子どもたちを引き受けることにした。
無口で無骨で頑固者の茂次は、両親の葬式も棚上げにして、仲間からの助力も断り、自分の力で店を再興したいと頑張るが、同業者や職人たちはそんな茂次のやり方に反発する。
しかしそれでも茂次は自分の道を突き進むのだった。
良いですよね。無骨ながら心根の優しい若き棟梁・茂次、そんな茂次に密かに思いを寄せる頑張り屋の幼馴染の娘おりつ、茂次を心配する親戚や町内の人々、孤児をかばう茂次とおりつ、両親の葬式も挙げずに頑張る茂次の心情・・・などなど。
江戸っ子の心意気と町内の助け合いに、東日本大震災の時の被災者の方たちの行動の原点を見るような気持ちです。
終戦間もない時期に書かれた小説という事で、何となく納得できるような、思わず元気が出てくる明るい市井物の時代小説です。