鳴海章「ナイト・ダンサー」☆☆
日本で開発されたアルミ合金を溶かす特殊な細菌が、密かにアメリカに持ち出されようとしていた。
しかしこの細菌を積んだジャンボ機の貨物室から菌が漏れだして、機体自体が溶け始めるという不測の事態が発生する。
ジャンボ機は日本に戻ろうとするが、この細菌の存在を隠したいアメリカは戦闘機を発進させ、ジャンボ機を撃墜しようと図った。
それを察知した航空自衛隊は戦闘機を緊急発進してジャンボ機を擁護し、ジャンボ機はとりあえず危機を回避したかに思えたが、こうした状況下で正体不明のジェット機「ナイト・ダンサー」が突如現れて空中戦を展開し、事態はますます緊迫化して行く。
第37回(1991年)の江戸川乱歩賞受賞作です。
江戸川乱歩賞受賞作は外れがまずないけれども、この作品も良く出来ていると思います。
但し、何だかゲームのように現実感が希薄な展開をする作品で、迫力はあるし面白いけれども、ミステリィというよりもスパイ冒険モノのような印象で、この作品がよく乱歩賞を受賞したなぁと思いました。
国際的な謀略を描くサスペンス小説は数多いですけど、管理人がそれなりのリアリティを感じる作品は案外と少なく、設定に無理が有るかなと思ってしまうと、管理人は白けてしまいます。
この作品にもそんな印象を受けました。
そもそも前提に無理が有りすぎるし、長期間の計画を練っている割には偶然が多すぎる。
登場人物も類型的な感じがして、人間的に深みがない人が多いように思います。
物語自体はそれなりに面白いのですが、こういう航空サスペンスにするのなら、もう少し納得できる話にして欲しかったし、もうひとひねりあって欲しかったなぁ、というのが正直な感想です。