三浦しをん「舟を編む」☆☆

舟を編む

玄武書房・辞書編集部の編集者・荒木公平は、中型の国語辞典「大渡海」の刊行計画を進めている最中に定年を迎える事になり、自分と同様に全てを辞書編纂に捧げられるような人材を探していた。

そうした中で営業部に所属する馬締光也を知り、変わり者として営業部の中で浮いていた馬締を自分の後継者として辞書編集部に引き抜く。

人付き合いが苦手で、熱中すると周囲が目に入らなくなる馬締は、思いがけぬ辞書編纂の作業に戸惑いながらも、独特の執着心を発揮して「大渡海」編纂に取り組み、辞書編纂者としての才能を開花させていく。


第9回(2012年)の本屋大賞を受賞し、松田龍平と宮﨑あおいの主演で映画化もされた文芸小説です。

辞書編纂というあまり馴染みのない世界を、実に巧みに描いていて、やはり言葉に対する感性が鋭くないと、こういう小説は書けないだろうなぁと読みながら感心してしまいました。

実は管理人は映画の方を先に観てしまいましたが、映画では主人公の馬締光也とその妻になる林香具矢のエピソードにも重点が置かれていましたが、原作小説では意外にサラッと流されています。

馬締だけに焦点を当てるよりも、馬締とともに「大渡海」編纂に関わる人物たちの背景を丁寧に描いていて、舟を編む作業に関わった人たちの心境が分かりやすい感じでした。

国語辞典を産み出すまでの長い道のりを描いて、そうした地道な作業をこなして来た先人にも敬意を払う素敵な作品で、地味ですが面白い小説でした。


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