三浦しをん「むかしのはなし」☆☆
かぐや姫とか浦島太郎とか、お馴染みの日本昔話をモチーフにして創作された寓話のような作品を集めた7編の連作短篇集です。
ただし明確に日本の昔話をパロディ化したとかそういう事ではないので、それほど昔話との強い関連性は感じません。
「ラブレス」は父親も祖父も27歳で死んでいる27歳のホストの物語。
「ロケットの思い出」はロケットという名前の犬を飼っていた男が高校の同級生と空き巣をすることになる話。
「ディスタンス」は子供の頃から叔父に恋している女子高生の話。
「入江は緑」は3ヶ月後に隕石が落ちて人類は滅びるが、抽選で1000万の人だけは地球を脱出できる。さて・・・という物語。
「たどりつくまで」は地球滅亡が近付いた街でタクシードライバーをしている男の話。
「花」は好きでもなかった夫が科学者だったので、地球脱出ロケットに乗れた女性の焦燥感を描いた作品。
「懐かしき川べりの街の物語をせよ」も地球脱出を巡る物語で、「ラブレス」の主人公の息子が登場します。
日本昔話をモチーフにしていてもそれぞれが独立した作品のようで、連作短編らしき繋がりはとても緩やかです。
印象深い話も有りますが、全体的に何となく暗くてモヤモヤした感じで、管理人の好みとしてはまずまずという短篇集です。