道尾秀介「カラスの親指」☆☆
武沢竹夫(タケ)は妻と娘と3人で仲良く暮らす普通のサラリーマンだったが、妻の病死後に職場の同僚の借金の保証人になったことから借金取りに追われて職を失い、闇金の取り立て役となったところ、タケが取り立てた母子家庭の母親が自殺、良心の呵責から闇金グループの実態を警察に訴えたところ、闇金グループの報復に会ってアパートに火をつけられ、たまたま部屋にいた一人娘を失った。
この世の中は不公平なものだ。
そう悟ったタケは、これ以来チンケな詐欺師として、闇金グループの目を逃れながら生活していた。
そんなタケが知り合ったのが、鍵屋をしている入川鉄巳(テツ)という中年男で、テツも借金がらみで最愛の妻を亡くしていた。
住むところをなくしたテツはタケのアパートに転がり込み、同居することになった二人は協力して詐欺で食べている。
そんなある日、上野の質屋を相手に小金を稼いだ二人が見かけたのが、仕事に失敗して逃げようとしているスリの少女まひろで、何となくまひろが逃げるのに力を貸した事から、住むところのないまひろが二人の住む借家に同居することになってしまう。
まひろの同居を喜ばないテツを、タケは何とか説得するが、実はまひろはタケが5年前に借金の取り立てで自殺に追い込んだ女性の娘だった。
男二人の生活から、まひろやその姉たちまでが一緒に住むことになった奇妙な雑居生活。しかしタケを追っている闇金グループの影が、チラホラ見え始めて・・・
第62回の日本推理作家協会賞を受賞したドタバタした雰囲気の人情ミステリィです。
読み進むうちに印象が変わっていく作品で、ラストのどんでん返しもうまく行っているし、先に希望が見える終わり方で読後感も悪くありません。
暗くてペシミックな話よりは余程良いのですけど、管理人には何となく中途半端なドタバタ感が気になりました。