恵三朗&草水敏「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」☆☆☆
壮望会第一総合病院の病理診断科長・岸京一郎は、クセのある変人で他人の思惑など気にせずに自分の主張を押し通す病理医だが、彼が下した診断は病院内の臨床医に絶大なる信頼を与えている。
病理医とは生体検査や病理解剖などの結果から、病気の原因・過程を診断する専門医。
その役割の重要性から仕事量が年々増え続けているにも係わらず絶対数が不足していて、医師全体の1パーセントにも満たないと言われている。
この作品は、そんな変人病理医の立場から見た医療現場の歪みや、それでも現場で患者のため医療の向上のために奮闘する医師の姿などを描いた医療マンガです。
医師だって聖人君子じゃない普通の人間で、患者に寄り添う医師もいれば、距離を置く医師もいます。
仕事に慣れてしまって、思い込みで治療にあたる時もあるし、他人からのアドヴァイスに素直に対応できないことだってあります。
人脈や派閥や恩義やらで自分の意志が通せない場合も多いし、更に極端に忙しい現場で疲労困憊し、責任の重さに押し潰されそうになる時もあります。
そういった中での、医師だけでなく、患者や医薬品メーカーや医療関係者などを描いた、幾つかのエピソードを継いだ連作のようになっています。
内科の研修医だったが、岸のぶれない態度と医師としての能力に惹かれて病理医を目指すことになる女医の宮崎、病理科の優秀な臨床検査技師の森井、岸と同窓の女医・細木などのエピソードも交えて、興味深いドラマが展開されていきます。
まだまだ未熟な宮崎に対する岸の、突き放しているようだけど、裏では彼女の医療に対する真摯な姿勢を高く評価している態度が、この作品の雰囲気を表しているように思います。
真剣なテーマだけど深刻になり過ぎないように描かれているところが、管理人は好きですね。