堀尾省太「刻刻」☆☆☆
代々伝わる奇妙な石を使って、「止界」という時間が止まった世界に入ることが出来る一族・佑河家。
しかし佑河家の長老であるじいさんは、その能力の事は誰にも話さず、そのまま埋もれさせていくつもりだった。
ところがある日、幼稚園児の真とその叔父・翼が何者かに誘拐され、佑河家に身代金を要求する電話がかかってくる。
とても期限内に間に合わないと知ったじいさんは、止界術を用いて時間を止め、息子と孫娘を連れて止界から誘拐犯の元に乗り込むのだが、それは止界を我がものにしようと企む宗教団体真純実愛会がかけた罠だった。
時間が止まった世界「止界」を舞台にして、現実世界と止界の間に行き来が出来る能力を持つと佑河家の人たちと、止界を手に入れようと企む新興宗教団体「真純実愛会」との戦いを描いたSFコミックです。
時間が止まった世界というと、管理人は手塚治虫大先生の「ふしぎな少年」がまず浮かびます。
「時間よ止まれ」と叫ぶと、本当に時間を止めることが出来る能力を持つ少年が、その能力を用いて事件を解決するSFマンガでした。
しかしこの作品では、時間が止まった世界(止界)に入り込む人たちには、そういった華々しいことは起こりません。
すべてが止まっている(但し止界に入った人間は普通に生きていられる)世界、止界を乱すものを襲う謎の管理人などが現れて、不思議な世界が展開していきます。
こんな能力はなんの役にも立たないと思うじいさんと、悪用できるんじゃないかと考える人たちがいて、色々と考えさせられるところもあります。
ユニークな世界観と二転三転する展開が面白い作品です。
ただ結末の付け方が、やや独特だったような気はします。