藤沢周平「たそがれ清兵衛」☆☆☆
「たそがれ清兵衛」「うらなり与右衛門」「ごますり甚内」「ど忘れ万六」「だんまり弥助」「かが泣き半平」「日和見与次郎」「祝い人助八」など、あだ名をタイトルにした短編が8編収められている時代小説集です。
地方の某藩が舞台で、どの作品も主人公は何かしら人にからかわれたりする要素があって、例えば下城の太鼓が鳴ると直ぐに帰宅する姿から「たそがれ清兵衛」と言われているなど、あまり有難くないあだ名を付けられています。
尊敬を一身に集めているわけではないけれども、皆それぞれに剣の達人で、そのために藩内抗争に巻き込まれてしまったり、仕方がない成り行きで剣を振るったりして、それぞれのドラマが展開されています。
もちろん単なる時代活劇というだけではなく、表題作「たそがれ清兵衛」の妻に対する献身的な優しさに代表されるような、それぞれの武士の生き様が描かれていて、何ともいえない情緒があります。
同じように剣豪が登場する作品でも、隠し剣シリーズのようなどこか殺伐とした雰囲気というものは感じません。
どこかふわっとした剽軽さを感じる作品が多くて、安心出来ます。
藤沢周平の武家ものは、やはり良いですねぇ。