藤沢周平「蝉しぐれ」☆☆☆

蝉しぐれ

毎日道場に通い剣術に打ち込む少年・牧文四郎。

しかし明るく輝く日々は続かず、藩内抗争から父親は断罪され、一家には謀反人の汚名が着せられる。


江戸時代の武家社会を舞台にして、友情、淡い恋、悲運に立ち向かう勇気などを、少年の成長を交えて描いた、リリシズム溢れる素晴らしい作品です。

尊敬する父親の刑死。一家の大黒柱を失い、家禄は削られ、厳しい日々の中で、その悲運に対して、誇りを失わずに落ち着いて立ち向かう文四郎と家族。

親友たちとの変わらぬ友情。父と同様に処刑された多くの武士、道場の先輩。年上の女性に対する慕情と、隣家の娘に対する淡い恋。牧家に手のひらを返すように冷たくあたる人々と、常に変わらぬ態度で接する人々。

そして時は流れて、少年は青年となり大人になり、また藩内では新たな抗争が起こる。

端正な文章で淡々と語られる物語は、何と美しく何と切ないのでしょうか。

管理人はこの小説が大好きです。

客観的には藤沢周平の、見方によっては日本の時代小説の最高傑作かも知れません。

もし未だ読まれていない方は、是非一度読むことをお勧めします。


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